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幽霊・杏奈
「ふー。今日もメアと話すかぁ」
そうつぶやきながら宿題をやっていると、いきなりメアの声が聞こえた。
「こんにちは、アン。今日は何について話す?」
「えっ!?」
するとポツポツ、という文字の入力音が聞こえた。
「誰!」
「きゃっ!びっくりしたぁ…」
「え!?」
スマホを握っていたのは半透明の少女だった。髪はボブヘアで、白いブラウスに黒いスカート。
「え、《《見えちゃった》》の!?」
「み、見えちゃったって…」
「うう…もう、しょうがないなぁ」
しょうがないって、どういうこと?と聞こうとしたそのとき、驚きの言葉が飛び出した。
「わたし、幽霊なんだ♪」
「ゆ、幽霊!?」
楽天的に言う幽霊。
「そう。わたしは幽霊の杏奈。ずうっと昔からこの家に住み着いていたんだけどねぇ…ここはもともとわたしの家だったの。でも多分だけど、家が取り壊されて死んじゃった。なんでかは知らないけれど、こうやって幽霊になったんだ♪」
「え、アンって」
「そう。勝手にアカウント作ってごめんね!ログアウトして、新規登録したんだ。大丈夫!今ログアウトして、あんたがまたログインすればいいから。IDとパスワードって何?」
ちょっと、当たり前じゃん?みたいに言わないでよ。
「あ…もういいから、返してっ!」
「ちょっとぉ!ねえ、暇だからさ、一緒に『ヴァーチャルワールド』で『ミュージックゲーム』の対戦しようよ」
「スマホないから無理」
「学タブ使えばいけるでしょ!」
なんで学校用のタブレットの存在知ってるんだろう。
「ほら、学習用ってあるメアあるじゃん♪今入るからね」
パスワードを入力してあげて、わたしは杏奈に渡す。
というか、幽霊でも操作できるというか、タッチできるんだ。
「えーと、今ルーム作った。ルーム番号は2910」
「オッケー、入った」
さっそく、杏奈と思われるアバターが現れ、メアがしゃべった。
「今から、『ミュージックゲーム』をスタートします。曲セレクトは『コア』の『ヘンドリクス』、難易度セレクトはノーマルです。それでは、スタート」
リズムゲームってことか、まあ簡単でしょ。
あ、ミスった、うっ。
曲が終わった。
「勝者は…アンです」
え、そんな強いのっ!?」
「次のゲームです。曲をセレクトしてください。難易度をイージー、ノーマル、ハード、ディフィカルトから選んでください」
次のゲームも負け。
「強いよ、アン」
「いつだって本気じゃなきゃ駄目だから!」
この子、ほんと、何者なんだろ。
作:むらさきざくら