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無題
脳内
目が覚めるときは、いつだって突然だ。
意識がひらく。目が起きる。覚醒する。覚醒剤。麻薬。マリファナ。警察24時。
朝起きて一番に物騒なことを考えてしまったな、と布団の中で思う。布団。私はベッドで寝ているんだけど、それでも布団っていうのかな。布団の定義とは?どうでもいい。
ベッドに数本の抜け毛。かわいくない。16歳という私はかわいいはずだけど、私の人生はあんまりかわいくないのかも。
きれいになりたいな、と、やっぱり布団の上で思う。身も心も清くなりたい。清潔感。細くなりたいな。それから、ちょっと鈍くなりたい。頭。顔はかわいくなりたい。髪がきれいになったらいい。
欲望だらけだ。心は汚い。掃除したい。海外のピアスホールとかカラコンを永遠に掃除するゲームみたいに。心にこびりついた汚れを落としたい。
でも、その汚れがなかったら、私は体の20%くらいを失ったような気持ちになりそうだ。なんとなく。
起きよう、起きよう、と思いながら、スマホを見ている。自堕落。堕落。堕落論。坂口安吾。さかぐちという苗字はいいなぁ。
シャワーを浴びる。熱い水の珠。降りそそぐ。真珠のように私のからだを滑り落ちる想像をするけれど、実際はびしゃりとつぶれて不可視になる。想像は現実を追いこす。いつまでもたどりつかない。それが切ない。
鏡を見ながら、シャワー。きれいだな、と思う。白い胸元。日焼けしていない青白い胸元。血管がうすく浮いている。胸はあまりない。
顔。みにくいや、と思う。知っている。でもかわいいな、と思う。わかっている。どちらも正しい。シェイクスピアだってそう言っていたはずだ。
ぜんぜん違う誰かになりたいな、と思う。自分じゃない誰かになって、ここじゃないどこかに住んで、あそこじゃないどこかの学校に入って、これじゃない何かの人生を送りたい。ああ、幸せになりたい。他人で。自分のままで幸せになるのは、ちょっと、もう、いいや。と思う。
生まれ変わるなら、適当な子がいい。全部中くらいで、極端に劣っていることもなくて、そこそこ生きる女の子がいい。
病んでないのだ。私は病んでいないのだ。決して。
あわれむな。私の怒りも悲しみも私のものだ。
誰のことも傷つけたいわけじゃない。
私は可哀想ではないし、私をあわれんでいいのは私だけなのだ。
私は骸じゃない。
涅色の空が誘っている。飛び出したいなぁ、と思う。日常にすべりこんでくる衝動。べつの誰かになるために生まれ変わりたい。変わりたい。変わりたい。変わりたい。どうすれば?
成長過程の私たちが蛹であることは間違いないと思うけど、蛹がかならず蝶になれる保証なんかあるのだろうか。
清い、誠実な人間になりたい。白い肌を持ちたい。きれいな髪がほしい。かわいい顔がほしい。自由に生きたい。どこまでも行きたい。走り出したい。叫びたい。怒りたい。壊したい。眠りたい。笑いたい。幸せだと伝えたい。集まりたい。遊びたい。
どうして自分じゃだめなんだろうと思う。自分はどこまでのことを指すんだろう。
私の爪は私だろうか。指にくっついている爪は私だとして、切り離した爪は私だろうか。
洗い流したい。林檎のシャワーのようなものがないだろうか。清潔でごろごろした林檎でからだを洗いたいんだけど。痛そうだな。
おだやかに眠るように死にたい。死ぬように眠るようにおだやかに生きたい。生きたい。生きたい。死にたくなんかない。もし死ぬならの話。
死にたいは救えないかもだけど生きたくないなら救う余地があるのかな?大体の人って死にたいんじゃなく生きたくないだけなんだと思うんだ。どうでもいいけど。
他人を愛するいとまがない。うそ、愛している。愛しすぎてわからなくなってしまった。
いとしい。触れたい。匂いを嗅ぎたい。触れたい。撫でたい。髪を梳きたい。優しくしたい。優しくしたい。大好き。大好きだ。
脳内はまわる。まわる。止まらない。他人もそうなんだろうか。こんなふうに脳内で言葉があふれて唾が溜まるような気持ちになるだろうか。なるだろうか。こんなバグみたいなの、もうちょっと、いいかなぁ、って感じなんですけど。いかがですか。