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終焉の鐘 第三話
この世界は、嘘で成り立っている──
誰もが嘘を並べ
誰もが嘘を信じ
誰もが嘘を愛す
この世界は、嘘で成り立っている──
誰もが嘘を並べ
誰もが嘘を信じ
誰もが嘘を愛す
中国裏社会の帝王
【闇雲】
彼の率いる|組織犯罪集団《マフィア》
【|终焉的钟《終焉の鐘》】
彼らもまた、
嘘を信じ
嘘を愛し
そして
闇を愛すものだった
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第三話 ~最後の計画~
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終焉の鐘幹部に収集がかかる。1人の青年は、誰もいない屋敷の集合場所で他のメンバーの集合を待っていた。
「Lastの部下が自分勝手すぎて共同任務が共同任務になってないという愚痴が入ってきた」
そして次に部屋に入ってきた青年にそう声をかけられて振り返る。
【Last Proejct】
・立場:カポ・レジーム(幹部)
・水色にピンクのメッシュの髪水色の瞳
・甘い笑顔を絶やさないイケメン
それが彼の名前だった。
「てこ──それはお前の部下が独特すぎるだけだ」
Lastはそう言うと、入ってきた青年こと、てこにそっけなくそう返す。
【てこ】
・立場:カポ・レジーム(幹部)
・茶色の髪に赤い瞳
・いつも病んでいる
「うるさいおしゃべりなら外でやってくれ───俺は忙しい」
2人がハッと顔を上げると、知らぬ間にそこに座って作業をしている青年が2人を睨みつける。
【氷夜】
・立場:カポ・レジーム(幹部)
・青の髪に白のメッシュの青の吊り目
・誰に対しても辛辣
幹部が全員揃った。それだけでその場の空気は凍りつく。冷たい沈黙が続く中、のんびりとそこに入ってきた青年がいた。3人が軽く目を見開く。そして即座に跪いた。
「あなたが出席とは珍しい───今日は何用ですか孌朱様」
【孌朱】
・立場:コンシリエーレ
・朱色に黒のメッシュの三つ編みに赤い瞳
・感情を読み取れない笑顔を浮かべている
コンシリエーレ──ボスにさえも軽々と物を言える立場の人間。彼は滅多に会議に出席することはなかった。いつもボスと陰で話し合い、それに従ってどこか知らない所で行動する。そんな彼が堂々と部屋に入ってきたのだった。3人は困惑する。
(なにを話せばいいんだ────⁉︎)
先程よりも気まずい空間が流れる中、孌朱はなんも気にしてなさそうに口を開く。
「Last────」
「はい」
そして名前を呼ばれたLat Projectは孌朱に体を向けて目を合わせる。
「七篠の教育がなっていない──以後注意するように。てこ──」
Last Projectにそう告げた後、Last Projectの発言をする隙を与えず、すぐに孌朱はてこを呼ぶ。
「お前の所の黒雪も──だ。馬鹿みたいに2人で張り合ってないでもっとちゃんとした教育をするように」
孌朱はそう言うと発言を許さないとでもいうような笑顔を浮かべて口を閉ざす。作業をしていた氷夜の手は止まっていた。下手したら首が飛ぶこの場面で、流石の彼も緊張している。
「氷夜、お前は全員の教育をもっとしっかりと行え──紫雲、お前はこの愚かな3人の上司だ。気を抜くな」
「御意」
氷夜への注意の後、孌朱が名前を呼んだ人物は、部屋にはいなかった。いなかったように見えた。3人は上から降ってきた声に目を見開く。上の方の棚に腰掛けている青年が1人。幹部の3人は呆然とそれを見つめてから跪いて挨拶をする。
「「「现在也为终焉的钟声响起而感到荣幸」」」
3人の声が綺麗にハモる。ピリッとした空気がその場に流れた。
【紫雲】
・立場:アンダーボス(若頭)
・紫の髪に紫の瞳
・????
謎に包まれている青年だった。いつもどこでなにをしているのかは不明。アンダーボスという立場を持ちながらも何をしているかは誰も知らない。
そんな紫雲に、3人は各々の感情をひた隠す。
「首領がお呼びだ──お前達3人の愚かな行いについて話がある。準備ができた者からついて来い」
冷たく言い放たれたその言葉に、3人は目を見開く。その様子を見て孌朱はふんわりと笑った。
「──正気かい?下手したらこの3人死ぬじゃないか」
「俺は至って本気だ──死ぬならその程度の実力なんだろ?そんな雑魚は|終焉の鐘《うち》にいらない」
冷たい目で見つめてくる紫雲に、3人は笑顔を貼り付けた。
(馬鹿にしやがって────)
3人はそう感じた。彼ら3人は、闇雲を知らない。彼はいつも姿を見せない。終焉の鐘が結成されてから3年──最初から1ミリも変わっていない幹部のメンバー。そんな彼らには、微かな不安と自信がある。そう簡単に、死ぬはずがない。
「それでは失礼────」
孌朱は短くそう言うと、紫雲を飛び越え、天井に隠されていた扉の中に入る。躊躇いもなく。その様子を見てから、紫雲は短く告げた。
「彼を追え──そこで首領が待っている」
紫雲のその言葉に、真っ先に行動したのはLastだった。軽々と孌朱が通った道を追いかける。その目は、とても楽しそうだった。それを見て紫雲は感情のこもってない目で彼を見てから残った2人を見つめる。
「お前らは行かないのか?」
紫雲のその言葉に、2人は無言で孌朱達の後を追う。全員を見送ってから、紫雲は今までの冷たい雰囲気を消し去る。そして苦笑して呟いた。
「悠餓は何を考えてるんだ────」
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「マジかよ────」
Lastはしばらく進んだ後に目に入った光景を呆然と見つめていた。
「いや──孌朱──屋敷を躊躇いもなく崩壊するとか──お前正気かよ」
先程通ろうとした場所を、孌朱によって破壊された。つまりそれ以上は進めない。Lastのその言葉に、孌朱の楽しそうな笑い声が遠くから聞こえる。
「ハハハッ────いやぁらすとくんも頑張るねぇ────ついつい、いじめてみたくなる。ちなみに教えてあげると、俺は闇雲の顔を知らない」
「ハ──────?」
孌朱の最後の言葉に、Lastの呆然とした声が漏れる。
「俺は少し、疑ってるよ?紫雲がもしかしたら闇雲かもなぁとか?俺は彼の戦い方も何も知らない。嘘しかないこのグループで生き延びるには、らすとくんのその優しさは捨てるべきだ。本当、君は昔から何も変わってないね」
「おい────」
Lastの声は孌朱に届かない。Lastは諦めて他の道を探し出す。その時に、孌朱と同じように破壊して他の幹部が通れないようにしながら──
しかし、彼は孌朱の言ったことが引っかかって仕方がなかった。あのコンシリエーレが闇雲の正体を知らない。それだけが胸にひたすら残る。
「考え事とは、随分余裕だね」
そして新しい道を通って出た部屋に着くと、孌朱にそう声をかけられた。そこには、どうやって行ったのか、紫雲と、頭全体が隠れる仮面を被っている青年がいた。髪色も、瞳の色も、何もわからない。そんな青年を見て、Lastは思う。
(これが────闇雲か)
直感が彼を闇雲だと言っていた。Lastは楽しそうにほくそ笑む。少ししてから、氷夜とてこがやってきた。全員が揃った時に、仮面を被った青年が口を開く。
「大変結構───」
その声は、相手を魅了するような甘い声だった。その声にLastは少しゾッとする。探られてる。そう感じたのだ。
「────ウ゛──ア゛────タスケ゛────」
奥の方から消え入りそうな苦しそう声が聞こえる。闇雲は奥など見向きもせずに幹部3人に話しかけた。
「今度、君たち3人と、俺と孌朱と紫雲とで、共同任務に取り掛かりたいと思ってる」
闇雲から発せられたその言葉に3人は目を見開いた。
「そのためにも、君たちの実力を改めて確認する必要があるのは──わかるよね?」
「──────────────っ⁉︎」
闇雲のその言葉と同時に、てこが腕を抱えて倒れ込む。容赦なく紫雲が腕を切断した。その様子を見てから、Lastは楽しそうに笑う。孌朱が言っていた、下手したら死ぬというのは、こういうことだろう。そう考え、彼はのんびり懐から銃を取り出す。
「3対1だ。負けるはずなどない」
氷夜はそう言うと殺意に満ちた目を紫雲に向ける。てこは切られた腕を痛そうにしながらも立ち上がり、紫雲に銃先を向けた。
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「紫雲、そこまでだ」
紫雲も、幹部の3人も大分ボロボロになった所で闇雲の静止が入る。
「合格ラインには入ってます」
紫雲はそう言うと、Lastを見てから言った。
「Lastは、特に素晴らしかった」
彼は複雑な感情だった。納得いく戦いができたわけでもないのに褒められる。それが彼にとってはかなりの屈辱だった。
「紫雲、任務の説明をしておいて。幹部の怪我が完治したら任務に取り掛かる。その時は呼んでくれ。僕はこれからゴミの片付けをする必要がある」
闇雲はそう言い残すと、部屋の奥の方に入って行った。苦しそうなうめき声が遠くから聞こえる。
相変わらず、闇雲は謎に包まれていた。
狂人王者
Last Proejct
最後の計画