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ハレゾラ 2
ハレゾラ:ぺんぎんさん
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ハレゾラ 3:みはなださん
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お父さんの葬儀は,日がとっぷりと暮れてから終わった。
「ねぇ|友希《ゆうき》,どこ行く?ふたりきりだし,好きなもの食べよう」
「じゃあ,家に帰ろうよ。お母さんのお味噌汁が飲みたいなぁ」
お母さんがちょっと困った顔をする。
「でも,今日は」
そう言いかけて,お母さんの口が止まった。何か言葉を探しているようだ。
「そうね,確かに家の方が落ち着くよね」
まるで自分自身を納得させているみたい。どうしたんだろう。
「じゃあ今日は味噌汁にしよう。久しぶりに,南瓜と海老の天ぷらも作るね」
「やったぁー!」
思いっきり手を伸ばした夜空には,きらきらと星が瞬いていた。
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「「ごちそうさまでした」」
夕食を食べ終え,自室に行こうとした私をお母さんが呼び止めた。
「ねぇ友希。『お父さん』が死んで,悲しくないの?」
「お父さん」の部分に力を込めながら,お母さんが私に訊いた。「別に,そんな会ってないし」と答える。
「あなたは小さい頃のこと,覚えてないのね?」
「うん」
お母さんは拍子抜けしたようだ。宙に目を泳がせ、「そう」と顔を伏せつつ呟く。そして,意を決した表情で言った。
「友希,私とお父さんは別居していたの」
居間が,沈黙に浸る。心臓の音が大きく聞こえる。脈打ちが痛い。
「そうなんだ」
なるべく平静を装って私は答えた。
「うん。ずっと,仕事一筋の人で。子供のことをあんまり考えてくれなかったんだ」
子供,って私のことじゃないか。遠回しだけど,私がお父さんに大切にされてなかったことをお母さんは言っている。
「ごめんなさい。…こんな話」
よく見ると,お母さんのお皿にはまだおかずが残っていた。私に話すタイミングをうかがっていたのだとわかる。
「別にいいよ」
よくないのに,私はそう言って居間を出た。
階段を上がり,扉を閉めた。
『星座とはどのようなものなのですか?』
高ぶる気持ちを押さえつけるために,ネットの質問ボックスにメッセージを打ち込む。星空研究会にでも気を向けないと,現実に打ちのめされてしまいそうだ。
『星座とは,古代の人々が空を見ていて思いついたものです。昔は羊飼いたちが夜に交代で羊を見て,その時に見た星々を動物や人間,物に見立てていたのです。それが,今の星座になりました。』真面目な説明が返って来て,ひとり気まずくなった。
「へぇ…羊飼い,か。その頃に生まれたら楽だったのに」
昔は子供を売ったり,親が早くに死んだりすることは当然だったはずだ。だからこそ,「家庭」という生まれつきの枠組みに縛られずに生きていけたはずだ。
「その頃に生まれたかったな」
似た内容を繰り返す。願っても仕方ないことなのに,どうしても想ってしまう。
「星座づくり…ちょっと楽しそう」
星空研究会のプレゼンを書いた紙を引き出しから取り出す。そこに,「星座をつくる」と書き加えた。
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昨夜のんびりと物思いに耽っていたら,寝坊してしまった。
「おはよ〜。昨日TV遅くまで見てたから寝不足だよ」
「そっかあ」
興味がないけど,一応頷く。流行りって疲れるな。
「もう遅刻よ。松木さん,二ノ宮さん,早く座りなさい」
「「はい」」
教科書とノートを鞄から取り出す。授業開始の合図が鳴った。
チャイムと同時に私は教室を飛び出した。もう放課後だ。
図書館に滑り込む。すると,優しげに図書館司書さんが微笑んでくれた。ぺらっと紙を捲る音があちこちから聞こえた。自分の周りはいつもと変わらくて、意気込んでいた自分が少し恥ずかしい。
何冊かの分厚い本を抱えて椅子に座る。一冊目を開くと,本独特の紙の匂いが広がった。文字をひとつずつ追いかけていくと,時を忘れそうだ。
こんなのもあるのかと驚かされる,きりん座にへびつかい座。どの向きにしても動物には見えない,いるか座やとかげ座。夢中になってしまう。
早速ノートを開いてメモをする。パソコン座やマシュマロ座なんてどうかな。
考えていると,空はもう夕暮れに染まっていた。あわててノートを手提げにしまい,学校の階段を降りる。昨日気まずかった家。お母さんに会いたいから帰る家。そこに向かって,私は校門から駆け出した。
こんにちは。
暗いのか暗くないのか?よくわからない作品ですみません。ヤナギさん,ここから続編お願いします!
また,わたしの小説頻度下がると思います。←どうでもいい情報
塾とか,ネットの交流とか,色々疲れてきたので。←どうでもいい情報2
気が向いたとき私の小説にふらっと来ていただければ嬉しいです。