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#08
ルドがカツサンドを飲み込むと、遠くで食堂のドアが開く音がした。振り返ると、そこにはタムジーが立っていた。いつも通り無表情だが、その視線はまっすぐにルドたちに向けられている。
「タムジー、もうご飯の時間か?」
ザンカが声をかけると、タムジーは静かに首を横に振った。
「掃除道具の点検だ。ルド、お前も来い」
タムジーの言葉に、ルドは慌てて残りのカツサンドを口に放り込む。
「おう、わーったよ!」
リヨウがルドの頬についたソースを拭うと、ルドはまた顔を赤くして俯いた。
「もう……!」
「ほら、早く行きなさい。遅れるわよ」
リヨウの言葉に背中を押され、ルドはタムジーの後を追う。
タムジーは無言で歩き続け、ルドも無言でその後を追う。静かな廊下に、二人の足音だけが響く。
「……なぁ、タムジー」
ルドが意を決して話しかける。
「ん」
タムジーは、振り向くことなく答えた。
「俺、いつか、あんたにも特別なもの作ってやるよ」
ルドの言葉に、タムジーの足が止まる。タムジーはゆっくりと振り返り、ルドをじっと見つめた。
「特別、か」
タムジーは静かに呟くと、ふっと口元に笑みを浮かべた。
「……期待してる」
その言葉に、ルドは驚き、そして嬉しくなった。特別じゃないかもしれない。でも、この温かな日常こそが、何よりも特別な宝物なのだ。
廊下を歩く二人の背中に、いつものように優しい光が降り注ぐ。この穏やかな時間が、いつまでも続くようにと、ルドは心の中で願うのだった。
🔚