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二
再会は、夜だった。
連絡先は消したはずなのに、知らない番号からの着信。
出なければよかった。
でも、出てしまった。
「……久しぶりだな」
声を聞いた瞬間、「終りなんだ」と思った。
彼は、もう安全な場所にいなかった。
仕事も、立場も、全部、崩れていた。
「会えない?」
その一言に、理由はいらなかった。
再会した彼は、以前より正直だった。
笑わないし、誤魔化しもしない。
「俺は、もう戻れない」
そう言って、私を見た。
逃げ道を塞ぐ目だった。
でも、引き返すように言う目じゃなかった。
私たちは、あの頃と同じことをした。
夜に会って、朝には別れる。
お互いに募った欲を発散し体を重ねる。
違ったのは、もう“二人の関係”すら、
約束にならなかったこと。
「一緒にいたら、ダメになる」
私が言うと、彼は笑った。
「もうなってるだろ」
正しかった。
でも、認めたくなかった。
破滅は、派手じゃなかった。
少しずつ、選択肢が減る。
関係が切れる。
昼の世界から、静かに追い出される。
それでも、彼は離さなかった。
私も、離れなかった。
ある夜、私は聞いた。
「後悔してます?」
彼は、少し考えてから言った。
「後悔できる余地を、残したくないんだ」
それが、最上級の愛の言葉だった。
最後の夜、
私たちは逃げなかった。
逃げる理由も、逃げる先も、
もう持っていなかった。
不誠実な人間同士が、
誠実になろうとした結果。
それは、救いじゃなかった。
でも、嘘でもなかった。
翌朝、
世界は何事もなかったように動いていた。
動いていないのは、
私たちだけだった。
それでいい、と
初めて思った。
これは、
誰の人生でもない。
選び続けた、
私たちの破滅だ。