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フロブレム・ガールズ 8話(ナナ編)
〈十数年前〉
ナナ「あはははっ!あはははっ!わーい!ねぇねぇ、おかあさんもいっしょにあそぼ!」
母「はいはい。後でね。」
「いいわねぇ、春野さん|家《ち》のお子さんはお元気で。うちの子なんて大人しくて公園に連れてっても砂場の隅でずっと砂遊びしてるだけですから………」
母「いや……ホント、ナナは元気だけが取り柄ですからね……家でもバタバタ走り回るし……成長したら、少しは落ち着くかしら……」
「子供は遊ぶのが一番ですからね!ナナちゃんはきっと元気に育ちますよ。」
母「そうだと………良いですけど……」
〈5年後〉
「ヒソヒソ」
「ほんっとアイツムカつく!学芸会の主役、絶対美晴がぴったりだってみんな思って推薦してんのに立候補しやがって……!!」
「前から思ってたけど春野さんって空気読めないのかなぁ?空気読めない奴は木の役とかでもやってろっつーのw」
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「ねぇ、春野さんって男子にモテようと必死にアピってるらしいよー。」
「確かに!体育で運動できますアピールすごいし、授業中も手挙げて勉強できますアピールすごいしね〜」
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「春野さんとは関わらないようにしよう。」
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―――私のせいでみんな迷惑しちゃったんだ………
今まで、自分に正直にして、何も考えないで生きていたけど…………
私が空気読んで黙ってみんなの顔色伺ったら、みんな困らないのかな。
忖度は嫌いだ。自分に嘘だってつきたくない。
でも、私が我慢することで、みんなが迷惑しないなら―――――――
〈さらに5年後〉
「ねぇ、春野さーん!ごめん!今日の掃除当番変わってくれないかな?ほら、私用事ができちゃって……」
ナナ「……うん!いいよ。全然。私暇だし。」
「ありがと〜!助かる~!」
ナナ(―――本当は今日、図書館行きたかったんだけど。まあいいや。今度で。)
私は、あの日から自分に仮面をつけた。
不満があっても笑うようにした。
泣きたくなっても笑うようにした。
私の幸せよりみんなの幸せの方が大事。
もう、あの頃の私みたいにはなりたくない。
――だけど、“あの本”のお陰で、私は、私の人生を取り戻すことができたのだ。