公開中
奇病患者が送る一ヶ月 九日目
…自分ってやけにシエルさん視点を使うよな…。
え?理由?それは単純だよ。
なんか扱いやs((黙れ
[シエル視点]
「…あれ、灰山さんは?」
医務室の扉を開けると、いつものうるさい声が聞こえず、つい聞いてしまう。
別に気になる訳じゃないんだけど、いないと逆に気持ち悪い。
「あぁ…、そこにいるっすよ。」
菱沼さんは慣れたように指を指す。
私は菱沼さんの指の先を見ると、
灰山さんの机の近くに布団が丸まったような何かがあった。
「何それ?」
「…あれっすよ。」
彼がそう言うと、丁度雷が鳴り響き、私も理解してしまう。
あぁ…なるほどね…。
「最近の乙女でも、雷怖いって子少ないけど。」
「そうっすよね…。」
私達が二人で会話していると、不意に灰山さんが布団から顔を出した。
「こ、こここここ怖くねぇし。さささささ寒いだけだし。」
分かりやすい嘘を吐いてる。全く…、大人げない。
「そーっすか、そーっすか。」
相変わらず、この人は慣れてるなぁ…。
私も急激にどうでもよくなって、お気に入りのカップにコーヒーを入れた。
菱沼さんは灰山さんをいじって遊んでる。
本当仲良いな、この人達…。
「灰山先生!…あったまっているんですか?」
急に綝さんが医務室の扉を乱暴に開け、
布団に丸まっている灰山さんにずんずんと近づいていった。
wow、積極的。
「おぉ…、綝か…。いや、うん、そんな感じ。」
「そうなんですね。じゃあ自分も!」
彼女はそう言うと、灰山さんの布団に入り、
しばらくしてから彼と同じように顔を出した。
絵面はまぁまぁ可愛らしい。
…あともう一人入ったら団子みたい。
「ハハハ、仲良しっすね。ジブンも入っていいっすか?」
ゑ、あなたが?
って言いそうになったが、必死にその言葉を飲み込む。
「嫌です。死んでもごめんです。」
「ヴッ………。」
私の代わりに綝さんから辛辣な言葉を言われ、菱沼さんがノックダウン。
そんなに傷つくなら最初から言わなければいいのに…。
「ちょ、綝⁉大丈夫か菱沼ぁ‼」
ゴロゴロゴロ…。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼‼」
雷の音にびっくりしたのか、灰山さんが大音量で悲鳴をあげる。
鼓膜破れたらどうすんのよ…。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ‼‼灰山先生ぇ⁉
大丈夫ですか、一体何にやられたんですかぁぁぁ⁉」
灰山さんの悲鳴に、それよりもまた甲高い声で悲鳴をあげる綝さん。
あぁ…なんてカオスな空間。まるで地獄絵図よ…。
ここにいる私が可哀想。
「ん?何これ。」
灰山さんが放棄した仕事をこなすために、自分のデスクに目を向けると、
一つのクリアファイルに気がつく。
すると、その声に気が付いたのか、さっきの出来事がまるで嘘だったかのように、
灰山さんがむくりと立ち上がって、
「あー、それは患者のカルテだよ。」
私のデスクに置いてあったクリアファイルを開いた。
確かに、そこには患者さんの素性が詳しく書かれている。
「へぇ…。」
思わず私も声を漏らして感心しちゃう。
あの灰山さんがそんなものを作ったなんて…、考えられない。
「はぁぁ…。にしても、今日は生憎の大雨だな…。」
私がカルテを熱心に読んでいると、ふと灰山さんが言った。
「今日、何か用事でもあったの?」
「うーん…、用事っていうか…。この薬が切れたんだよ。」
彼は自身のデスクの上に置いていた、オレンジ色の錠剤の入った小瓶を
チャラチャラと揺らして見せてくる。
「…何の薬?」
「別に大したことねぇよ。…ただの持病の薬。」
「持病ぉ?ふぅん…。あ、もしかして灰山さんも奇病とか?」
私がケラケラと笑いながら聞くと、
「そりゃあ四年もここにいるんだ。俺も奇病にぐらいかかるよ。」
彼の想像もしていなかった言葉に、思わず目を見開いてしまう。
「え、…そうなの?」
「言ってなかったっけ?てっきり菱沼が話してるって思ってた。」
灰山さんは、くだらない話をするように笑う。
「わ、笑い事じゃないでしょ…。」
「大丈夫だって。本当大したことないんだもん。」
本当にそうなんだろうか…。
そんな疑いを持ちながら、私は彼の顔ただジッと見つめる。
「そんな見んなよ…。お前も心配性だなぁ…。」
「だって、心配になるでしょう?
奇病なんて…。あなたに死んだりされちゃ、私達困るのよ…?」
「俺の奇病はそんなに重くないって。」
彼は最後の錠剤を飲み、私の言葉にひきつった笑顔を見せてきた。
何よその顔。せっかく心配してあげてるのに…。
「ちなみにどんな奇病?」
心配と好奇心で訊ねると、灰山さんは少し罰が悪そうな顔をする。
「んあー…、…。」
「あぁ、言いたくなかったら別に言わなくてもいいの。
好奇心で聞いただけだから…。」
「いや、大丈夫。簡単に言えば、『冷え性』だな!」
聞き間違えかと思って、数秒フリーズしてしまう。
え、今なんて言った?
「ひ、冷え性?」
「うん、冷え性。」
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
思わずため息が出ちゃう。本当、心配して損した。
いや、勝手に心配してたのは私なんだけど…。
「だから言ったろ?大したことねぇって。」
「あなたの事だから、嘘吐くと思ってたのよ…。」
「ひっでぇなぁ…。」
「冷え性って、本当に冷え性なの?」
「応。体がずっと冷たいし、しょっちゅう頭痛くてさ。
肩凝りも酷いし、耳鳴りもマジで止まんねぇんだよ。」
「ふぅん…。」
私はそう言い、どれぐらい体が冷たいのか気になったため、
彼の体に手を伸ばした。
「ッ‼」
触れようとした瞬間、私の手は彼の手によって強く追い払われてしまう。
あまりに想像していなかったから、
私の口から「へ?」という間抜けな声が漏れる。
「ご、ごめんッ‼大丈夫か?ちょっとびっくりして…。」
私の声で正気に戻ったのか、途端に彼は心底申し訳なさそうな顔で、
私の手を革手袋の上から優しく触れてくれた。
「大丈夫だけど…。」
「あぁー、もしかしたらまた雷落ちるかもしんないから、
地下室に行ってくるな。んじゃ!」
「あ!待って下さいぃ‼」
逃げるように灰山さんは医務室を出て、綝さんは彼を追う。
医務室には、私と、倒れている菱沼さんだけが取り残され、
シンという沈黙が流れる。
あの反応。どこかで見たことがあった。
まるであの子みたいな反応。
体に触れると、いけないみたいな反応。
そんなところも、まるで彼女のようだ。
私があの日抱いた異変は、間違っていなかったのだろうか…。
「…やっぱ雷、怖いんだ。」
誤字脱字、クオリティはご割愛‼
とりあえず10話まであげたいって思った!()
明日、やっと10話あげます!多分ねタブンネ‼((なんだこいつ
やっぱり書くのは難P。
ファンレくれたら嬉P。