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スピンオフ:『深淵の誓い ―カイ・ルシフェル外伝―』
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スピンオフ:『深淵の誓い ―カイ・ルシフェル外伝―』
第一章:裏切りの英雄
かつて、星喰いの災厄が灰界を覆う前、王国〈リュミエール〉には七人の英雄がいた。
その中でも、最も鋭き剣を振るった男――カイ・ルシフェルは、〈深淵の刃〉の使い手として知られていた。
「俺の剣は、影を断つ。だが、影は常に光の裏にある」
カイは、星剣を鍛えるために自らの記憶を捧げた。
その代償として、彼は過去を失い、感情を封じた“無影の剣士”となった。
だが、星喰いとの戦いの最中、彼はある選択を迫られる。
仲間を守るか、星剣を守るか――その選択が、彼を“裏切りの英雄”と呼ばせることになる。
「俺は、星剣を選んだ。だが……それが正しかったのかは、今もわからない」
第二章:深淵の守護者
星喰いとの最終戦の後、カイは〈深淵の谷〉に囚われる。
星剣〈深淵の刃〉を守るため、彼は“記憶を喰らう守護者”として存在を縛られた。
時折、彼の前に現れる旅人たちに、彼は問いを投げかける。
「お前は、何を守るために剣を振るう?」
その問いは、かつて自分が答えられなかったもの。
彼は、誰かが“憎しみ”ではなく“願い”で剣を振るうことを望んでいた。
そして、ノア・アルヴァスが現れた日――
カイは、初めて“希望を選ぶ者”に出会う。
「見事だ。お前は、星喰いに抗う資格を持つ者だ」
その言葉は、彼自身がかつて言えなかった“赦し”だった。
第三章:残響の祈り
〈虚星の残滓〉が目覚めた時、カイの残響は再び揺らいだ。
彼の記憶は歪められ、かつての“裏切り”が美化され、偽りの英雄譚として語られようとしていた。
「それは違う。俺は、間違えた。だが、だからこそ――誰かが正しく選ぶことを願った」
カイの残響は、エル・ヴァルティアの祈りに応え、〈継承の刃〉の鍛錬に力を貸す。
彼の記憶は、剣の中に宿り、未来の継承者へと託された。
「俺の過去は、誰かの未来の礎になればいい。それが、俺の贖罪だ」
そして、カイの魂は静かに星へと還っていった。
夜空に、一つの小さな星が生まれる。
それは、誰も知らない“深淵の星”――影を断ち、希望を見守る星。