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【第弍話】襲撃
【前回のあらすじ】
いつも通り、灯和たちと幸せな日々を送る沙雪。
その日も、なんの変哲もない一日を送っていた。
その一方、影では謎の人物が灯和たちの命を狙っているようで…!?
〜沙雪 side〜
今日の天気はどこか変に思えた。
昼過ぎまでは晴天だったのに、夜になった途端急に雲が出てきた。
雨が降り出しそうなほどの厚くて黒い雲が空を覆っている。
あんなにゆったりしていた動物たちも、どこかへ隠れてしまっている。
……そして、その現象は動物たちにだけ起こっているわけではなかった。
灯和「……………(ソワソワ)」
沙雪「……?」
先ほどから、灯和の様子がずっとおかしい。
ボーッとしてたり落ち着きがなかったり……
何かを隠してるのは一目瞭然だった。
沙雪「…灯和、どうかした?」
灯和「あっえっ、いっいや?なななんでもないよ!?」
沙雪「……動揺しすぎでしょ…本当に?」
灯和「う、うんっ!!(汗)」
そんなわかりやすい嘘に、私は顔をしかめる。
どうやら私以外も、それに気づいているようだった。
天舞「なーお前さっきからなんか変だぞ?」
猫葉「そーじゃそーじゃ!」
竜翔「灯和って隠し事するの下手だよねー…どうしたの?」
火影「何かあったのなら言ってみろ。」
灯和「えぇ…!?なんでそんなに気になるのさ……?」
火影「灯和があれだけ動揺すれば気にもなるだろ。」
天舞「そうだぞー。大人しく言えよ。」
みんなに詰められて、灯和は体を縮める。
暫くの沈黙の後、灯和は小さなため息をついた。
__灯和「………わかったよ……」__
竜翔「で、何のせいでそんなに落ち着かなかったの?」
灯和「…………ずっと…胸騒ぎがするんだ……」
沙雪「?胸騒ぎ…?」
みんなが首を傾げる中、灯和が怯えたように俯く。
火影「理由はわかるのか?」
灯和「ううん、それがわからないんだ……でもずっと悪寒がするんだ……」
天舞「どんな感じなんだー?」
灯和「こう…後ろから睨まれてるような……狙われてるような感じがして………」
__「………すごく…怖い……」__
そう小さくいうと、灯和は自分の肩をさすった。
よく見ると、少し涙目になっている。
……よほど長い時間、一人で怯えていたのだろう。
それに気づいたのか、火影さんと竜翔が軽く灯和に寄る。
竜翔「………うーん……なんでだろう…」
猫葉「…変じゃのぉ〜。それだとまるで
***ゾワッ***
**猫葉「!!ジャーーー!!!!」**
**火影「っっっ!!!!」**
灯和「ひっ!?」
竜翔「うわぁ!?何何!!?」
突然の大声に私たちは飛び上がった。
横では、火影さんと猫葉が同じ方向を見つめている。
*猫葉「ヴーーーー………」*
沙雪「え!?どっ、どうしたの!!?」
__火影「………殺気だ……」__
火影さんがポツリと呟いた言葉に、みんなが凍りつく。
猫葉は毛を逆立てて、どこかに向かって唸り続けている。
竜翔「え……?さ、殺気って…?」
火影「……これは恐らく動物の本能的な勘だが…強い恨みと殺意を感じた…」
「………灯和と猫葉が感じたのも…私と同じものだろう……」
天舞「はぁ!?じゃあそれは誰が向けてきてんだよ!!?」
火影「……わからん。ただ…とんでもなく強い殺気だ。」
猫葉「………!おい、どうしたんじゃ灯和?」
その言葉に、私はハッと灯和の方に向き直す。
灯和は、外を見つめた状態で固まっていた。
天舞「どうしたんだ?」
灯和「………ねぇ、今揺れなかった…?」
竜翔「……揺れたね。小さいけど地響きしてた。」
沙雪「う、うそ…全然わから
__ズウゥゥゥゥン………__
沙雪「………っ!!」
天舞「……確かに揺れたな。」
火影「ああ。」
竜翔「…なんなの……!?」
猫葉「…………」
灯和「……………」
息が詰まるような沈黙が私たちを包み込んだ。
そこには、ただ風が吹く音が響いていた。
__ヒューー……__
__ヒューーーー…………__
バキッッ
***ドゴオォォォォォン!!!!!***
沙雪「っっ!!!??」
爆音と共に足場がなくなる。
下を見ると、地面が大きく割れていた。
そしてその隙間から、黒い触手のようなものが無数に伸びてくる。
*シュルルルルッッ!!!*
その触手は私たちに向かって素早く伸びてきた。
沙雪「……っ!!?」
**灯和「!!沙雪ちゃん、竜翔、掴んでっ!!!」**
沙雪「!?はっはいっ!!」
私は咄嗟に灯和の手を掴む。
その瞬間、私と灯和と竜翔が触手に掴まれる。
***ギュウウウ!!!***
灯和「っ!!」
沙雪「ひっ…!!」
竜翔「!!火影!天舞!猫葉!!」
竜翔の声に私は後ろを振り向く。
それとほぼ同時に、私の横から触手が素早く伸びる。
そしてそれぞれが触手に掴まれていた。
天舞「あぁ!?なんじゃこりゃ!!?」
猫葉「ニャー!!?なんなんじゃあ!!?」
火影「………っ!!」
沙雪(何が起こってるの…!!?)
***ズズズズ……***
触手は少しずつ地面の割れ目へ吸い込まれていく。
自分たちの周りがだんだんと闇で覆われていく。
私はパニックで話すことすら忘れる。
灯和「………沙雪ちゃん……」
沙雪「!」
その優しい声で私たちは横を向く。
そこでは、灯和がこちらを横目で見ていた。
灯和「……絶対に離れないでね……何があっても僕が守るから。」
その声は、恐怖からか震えていた。
しかし、目には覚悟が強く浮き出ていた。
私はその目を見て、どこか安心する。
沙雪「……わかった…!」
私たちは顔を見合わせ、頷く。
そして、そのまま闇の中へと引き摺り込まれていった。
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第弍話 〜完〜