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①王様役突き落とし事件
私は、公園を歩いていた。すると、少女がベンチに座ってノートに万年筆で何かを書き込んでいた。
(今万年筆を使う人、いるんだ…)
そう思いながら、スルーして散歩を続けた。
そして10分後、またベンチに着くと少女はいなくなっていた。1冊のノートを残して。
そのノートには、表紙に`読んでください ネガティヴ短編`と書かれていた。
「読んでいいんだ」
私はそうつぶやき、疲れた体をベンチに腰を下ろした。そして、ノートを1ページめくった。
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そのクラスは、本当に仲が悪かった。
授業中はおとなしい。しかし話し合いや行事は一致団結できず、運動会もビリだった。
大切なものや意見、価値観も人によって露骨に違う。
そのため、休み時間は大喧嘩が繰り広げられ、殴り合いも日常茶飯事である。
他のクラスのヤツらは「プロレスだープロレス」とわんさか集まってくる。
菜乃花は学級委員としてこの状況をなんとかできないか考えていた。
だから今回、菜乃花は学年合同のレクを企画した。
内容はみんな唯一、考えがまとまって一致団結できる王様ドッジ。
チームそれぞれ王様を一人決めて、その人が当たらないように、バレないように他の人が警護する。
「なるべく逃げ上手の奴が王様がいいよな」
「じゃ、こいつにするか」
珍しく、休み時間も作戦会議を男女関係なく仲良くするみんなに、菜乃花は安堵していた。
「菜乃花ちゃんのクラス、珍しくケンカしてないね」
他のクラスの友人に言われ、菜乃花はふふんと胸を張った。
「私たちのクラス、ついに団結ができるようになったんだよっ。学年レク、絶対負けないから!」
しかし、レク前日の下校中、隣にいたわがままなお金持ち・マリアが言った。
「私が王様になりたいですわ」
マリアはしばらくハワイ旅行で休んでいたため、作戦会議に参加していなかった。
今、王様として確定しているトモキはビックリして反論した。
「仕方ないだろ。決まったことなんだからつべこべ言うなよ。それに、お前いつも王様じゃねーか」
トモキは休み時間の王様ドッジで、いつも王様の座をマリアに取られていた。
「でも、学年レクですわよ?活躍すれば私は有名になりますわ」
「負けたら恥かくけど」
トモキはポソリとつぶやく。マリアの目が一気に恨みの色に変わった。
**「うるさいですわ!」**
その瞬間、トモキはマリアに押されたことによって車道に出た。
車道には、スピードを出した車が直進していた。**ダンッ**と、ぶつかった音が聞こえた。
トモキは搬送先の病院で息を引き取った。
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「バッドエンド〜…超ネガティヴだし」
でも、バッドエンド小説が大好きな私にとって読み応えがある一編だった。
「またこの物語、読みたい」
そう言って私はパタン、とノートを閉じ、ベンチにそれを置いて帰った。