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君とステージの向こう側へ
東京のとある小さなカフェで、春菜はいつも通りお気に入りの席に座り、スマホの画面を見つめていた。画面には、今一番熱い話題のアイドルグループ「シルバーウィングス」の最新ライブ映像が映し出されている。
春菜は、そのグループの中でも特に「神楽大翔(カグラ ダイショウ)」に夢中だった。彼のイケボ(イケメンボイス)での歌声は、まるで心の奥深くに届くようで、彼のパフォーマンスに引き込まれていった。
「神楽さんの声、ほんとに最高…」
彼の声に恋している自分に気づいた春菜は、ため息をつきながらも、毎日のように彼の歌や舞台の映像を見返していた。それが彼女の日常となっていた。
ある日、春菜がカフェで一人で過ごしていると、ふと気になるポスターが目に入った。それは「シルバーウィングス」のファンミーティングの案内だった。
「まさか、私が行けるなんて…こと…あるかな…?」
急に心臓が高鳴った。ファンミーティングには、アイドルたちと直接会うチャンスがある。緊張と興奮が入り混じった春菜は、思い切ってチケットを購入することに決めた。
今日はチケットの落選報告日。
春菜は緊張しながらメールを開いた。
「あ……当たってる…私が…ファンミーティング…に…」
春菜は、叫びたい気持ちを抑えて、眠りについた。
そして、ファンミーティング当日。
会場は熱気に包まれ、ファンたちの期待で溢れていた。春菜もその一員として、神楽大翔と間近で会えることに胸を高鳴らせながら、待機していた。
いよいよ、彼がステージに登場した瞬間、会場が一瞬で静まり返り、息を呑むような雰囲気が広がった。
「こんばんは、シルバーウィングスの神楽大翔です。」
大翔の声が、春菜の胸に直接響いた。彼の声は、画面越しでも魅力的だったけれど、実際に耳にすると、まるで彼の声が自分だけに向けられているような錯覚を覚えるほどだった。
その後、春菜はサイン会に参加することになり、順番が来るのをドキドキしながら待っていた。
そしてついに、春菜の番が回ってきた。神楽大翔が目の前に立った瞬間、春菜は一瞬息を呑んだ。
「こんにちは。今日は来てくれてありがとう。」
大翔が優しく微笑んで手を差し出した。その瞬間、春菜の心臓は鼓動を速め、顔が真っ赤になった。彼の顔は、舞台で見る以上に近くて、現実味がないほど美しい。
「は、はい!こちらこそ、ありがとうございます…大翔さん…!」
春菜は緊張して言葉がうまく出なかったが、大翔は気さくに笑いながら言った。
「君、緊張してるみたいだね。でも、こうして君に会えて嬉しいよ。」
その一言が、春菜の心に火をつけた。まさか、神楽大翔が自分にそんな言葉をかけてくれるなんて…信じられなかった。
サインをもらい、少しだけ話した後、春菜は心の中でずっと興奮していた。その後、帰路についたが、彼の顔と声が頭から離れなかった。
数週間後。
ある日、春菜のスマホに見覚えのある名前からメッセージが届く。
『こんにちは、春菜さん。突然ですが、少しお話ししたいことがあります。お時間あれば、DMください。神楽大翔』
春菜はそのメッセージを何度も確認した。信じられないことに、彼から直接連絡が来たのだ。
すぐに返信をした春菜。
『は、はい!時間あります!』
数分後、再びメッセージが届いた。
『実は、僕も君に少し気になっていることがあって…。もし良ければ、今度お茶でもどうかな?』
春菜は心臓が跳ね上がるのを感じた。神楽大翔が、私に…?お茶を…?まさか、それが現実になるなんて。
その後、二人は何度か会うことになり、徐々にお互いの距離が縮まっていった。大翔は舞台で見せる姿とは違って、非常に落ち着いていて、優しい性格だった。
春菜は、彼との時間を過ごす中で、アイドルとしての大翔だけでなく、普段の彼にも魅力を感じ、ますます惹かれていった。
そしてある日、大翔が真剣な表情で言った。
「春菜、実はずっと君に言いたかったことがあるんだ。僕は君ともっと近くで、普通の人として付き合いたいと思っている。」
その言葉を聞いた瞬間、春菜は胸がいっぱいになった。彼の気持ちが伝わったことが嬉しくて、涙がこぼれそうになった。
「私も、あなたともっと一緒にいたい…」
こうして、春菜と大翔は、アイドルとファンという関係を超えて、恋人として新たな一歩を踏み出すことになった。