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第七章 鏡と妖精
僕がひとりで文字の勉強をしていると、でんわ?が鳴った。
僕はじゅわき?を取って、「もしもし~?」と言ってみた。ディアドさんが、いつもそうしているから。
『……も、もしもし?……あ、あの!霊術師さんが……依頼を募集している、って聞いたんですけど……』
「……依頼ですか?えっと、募集?は、して、ます、けど……」
『本当ですか!?じゃ、じゃあ、依頼、したいんです、けど……良いです、か?』
……どうしよう?今、ここには僕しかいない。ルーヴィッドは学校、ディアドさんはアミリスと別の任務に行っている。
……僕は、人間のことが分からなくなっていた。表と裏、その二つが見えるようで、怖かった。
ディアドさん無しでも、僕だけでも、任務は……出来るんじゃないかな?だって、依頼は断れない。断ることが出来ない。
「……分かりました。どんな依頼ですか?」
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机の上にあった紙に鉛筆で『いらいをうけました、いつかえるかはわかりません』って書いて、アジトを出た。
僕は、ひとりで依頼を受けるつもりだ。
依頼は、『古い鏡の奥に、何かが見える。不気味だから、なんとかしてほしい』っていうものだった。
さっそく例の鏡を見せてもらった。所々にひび割れがあって、隅の方が大きく欠けている以外は、まあまあ普通の鏡。
鏡に触ってみた、
……つもりだった。
鏡の奥に手が引き込まれていく。抜こうとしても抜けない。
あっという間に、僕は鏡の中に入ってしまった。
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鏡の中。……の割には、けっこう広いなぁ。
鏡に引き込まれて入ったけど、物も人も建物もない。ただただ、灰色の世界が広がっている。
チャリン。チャリン。
鈴みたいな音が響いた。
ふふっ……。
笑うような声が聞こえた。
「……誰!?誰かいるの!?」
誰、って、言われたら……
「答えてあげなきゃ、ね!私は聖なる|妖精《フェアリー》、リィアよ!」
目の前に、小さな羽が生えた人が……えっと、妖精がいた。
「こんなところに入れるなんて、あなた、ただ者じゃないわね!何の用よ?」
「わ、えっと……い、依頼があって……それで、鏡の奥に何かが見えるって依頼で、僕は、その依頼を解決しに来たんです」
「依頼ぃ?まさか私のことかしら?アッハハ!!無駄よ、無駄。私を外に出せるもんなら出して見なさい!」
そ、外?外……。簡単じゃない?
僕はリィアを掴んで、入って来たところに引っ張っていった。
「な……何、して、くれてんのよ……」
「外に出すんでしょ?つまり、|ここ《鏡》の外に出せばよくない?」
「や……やめて!!外に出たくないのぉ……!」
「???ほんとに何言ってるの?外に出してみろって言ったのはリィアだよ?」
「だから……出たくないんだって!!」
手の中の感触が溶けるように無くなった。
僕の手から抜け出したリィアの身体は、金色だったものがみるみるうちに真っ黒に染まる。半透明の羽が黒を纏った。
「私を外に出すなら……あなたを、消す」
赤くなったリィアの瞳が、僕を映した。
まさかの前後編になりました。
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