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焔凍不鉄-6
「……に、菓子谷、おい菓子谷!!」
「うおわぁ…!?図書室で叫ぶな迷惑だろ馬鹿!!」
菓子谷は勢いよく本から顔を上げた。
「なんだ?そんな集中するほど面白い本なのか?」
「いや全然。古文だし意味わかんね」
動揺を隠すように、頭を横に振って答える。
「集中してるとこ悪かったんだけどさ、ココアシガレット決めに行こうぜ」
「フハハハハハ…ミロ、フウキイインガゴミノヨウダ!!」
「バルス‼︎」
いつもの頭おかしげな会話に苦笑する。
しばらくしてから、菓子谷は口を開いた。
「……ごめん、オレちょっと国語危ないから今日は行けない。」
「やばい真面目君だ!!かっこいー!!」
ぞろぞろと図書室を出ていく友達を横目に、本に意識を戻した。
その瞬間、息が止まった。
(やっべ……昨日菓子谷先輩に教えてもらおうと思って持って帰った国語の教科書……忘れた)
バッグを覗き込んだ瀬野は息を止めた。
教えてもらおうとしてたにも関わらずそのことを完全に忘れてたのは置いといて、誰かに借りなければ成績が落ちる。
(帆乃パイセンは……性別違うからカップルって言われるだろ?和田原君はな…なんか申し訳ないしな…どうしよ、諦めるか?)
こういう時の脳の判断は早い。
「先生、教科書忘れたんで隣の見ます」
「…今日教科書にいろいろ書き込むよ」
「かっ…菓子谷先輩……古文教えて……」
「オレも古文苦手だから無理」
「ぐはっ…諦めるか……」
「頑張ってりゃそのうち分かるだろ、頑張れ」
「はーい、分かりましたー…」
帰路についても胸騒ぎは治らない。
瀬野はそんな菓子谷の狼狽えに気づく素振りも見せない、そもそも気づいていないのだろう。
瀬野が鈍感で良かった、菓子谷は心底からそう思った。
「先輩、今日は競争じゃなくて…グリコで階段上がりましょう!!」
わくわくと顔を輝かせる瀬野に安心と呆れの入ったような笑みを送る。
「お前さ、ふざけなきゃこの階段登れねーのかよ?」
「遊べるうちに遊んどくのが得でしょ?最初はグー、じゃんけんぽん!!……あ、負けた」
「じゃ、お先に。パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ……」
「ちょ、先輩、ピカソの本名はずるいですって!!」
一気に階段を駆け上る菓子谷に、瀬野は走って着いていく。
『おかえり』
いつも通り、神主兄弟は笑顔で出迎えた。
「たーっだいまー!」
「…ただいま。」
「ここオレの家じゃないって?知ってる。そうだ、今日さ新しいお茶買って来たんだよ…欲しい?」
神主兄がにやにやしながら言った。
「え!?そんなん…貰わない選択肢存在しない」
瀬野が明るく答える。
「菓子谷先輩は?」
しかし菓子谷は何も言わず、焦点の合わない目で宙を眺めている。
「…菓子谷先輩?」
「……!ごめん、考え事。」
何度も瞬きをするが、やはり思考が振り切れない。古文は何か、いや、確実に__
答えを求めて、神主兄弟を見た。が、首を傾げられるだけで何もヒントは得られない。
「もしかして…先輩…彼女…」
「は?」
【悲報】国語3の俺氏、リア友に垢教えた模様。「何やってんだ俺」だそうです。