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【14話】山頂決戦
続きです。一回前は読んだほうがわかりやすいと思います
グロくはないです
「油断するな!あと1時間で終了だ」
山頂付近で点呼する。8人、いる。相手は20人。攻撃してくる相手をなぎ倒す。能力剣に付与した能力は、もう、尽きそうだ。30分程度、そうしていた。こちらから先制攻撃はしない。
10人ほど倒した。残りは10人、こっちの陣営は5人。
--- ガサガサ ---
振り向いた先には、私立学園のエース格の人物、ザール・シルバーがいた。
「こっちは10人いる。決戦だな」
余裕の笑みには、あざけりが多く含まれていた。その瞳は、俺達の闘志に火をつけた。
「行くぞ」
誰かの一言で、切れた。それまで保たれていた平和の糸が。
入り乱れる乱闘。あちらこちらで斬りあい、飛ばし合い、投げ合う。
耳元をかする能力剣。付与された能力により、やけどを負う。本物の肉体ではない。が、不安だった。
その矢先、ジェニスが退場した。
いつも通りに戦いたい。しかし、今の俺にそんな余裕はなかった。仲間が倒れていく。仲間が消えていく。その仲間を、俺は、守れない。
能力不足。今まで何度も感じてきたそれに、今までで一番苦しめられた。
涙目になる。辛い、虚しい。戦っていて、初めて感じた感情。苦しさも、痛みも、感じてきた。普段の生活で感じる感情。それは、戦いとは無縁のはずだった。これが、本物の肉体だったら、色んな人が、この世から消えていた。ジェニスだって。俺が、消した人間もいたはずだ。
俺は、誰かを消したいわけじゃない。勝つために、存在するわけでもない。
虚しい。
「レオ!」
必死のルガの声で、一気に現実に引き戻された。ザールとその仲間を、一人で食い止めている。
「今行く!」
今は、今だ。今は、仲間を助けたい。
衝撃波を作り出す。一点集中。放出。レーザー光線のように一直線に流れ出る。剣を振る、振る、振る。必死で、必死に。
無言の戦い。いつの間にか、他の仲間は全員退場していた。俺達二人。二人だけ。
涙が伝う。一筋、一筋が、思いだった。
「泣くのか?意気地なしだな。やっぱり誰かにひざまずいているのがお似合いだな」
微笑をたたえてザールが言う。ルガの目が一気に燃え始める。無言のオーラが、怒りを表す。
「何」
二文字の言葉だが、それ以上にたくさんのことを表現していた。仲間への侮辱に対する怒り、侮辱でしか自分を守ることのできないザールへの哀れみとあざけり。
黄色い閃光。
ルガの攻撃。ひとつひとつが重い一撃。連打。
「やっと、本気か」
楽しそうに応戦するザールに腹が立つ。
無言で戦いへの準備をする。能力剣に最大の、最高の能力を付与する。
「行くぞ」
決意表明のように告げる。俺は最大限のスピードで風を切る。
「は?」
振り返る、ザールとその仲間。ザールめがけて振った。下ろす。下まで。
「パスッ」
かすった。しかし、外れた。ザールの顔に明らかな安堵が現れた。
刹那、強大な衝撃波が生まれた。衝撃波は波のようにゆらぎ、上へ、下へ、後ろへ、前へ、動く。ザールたちの体が浮かび上がる。
「とどめ、だ」
思い切り、振り下ろす。一撃。
生まれた衝撃波は、後方へ一気に何もかもを押し流す。
「覚えてろ、よ」
ベタな負け犬の決め台詞を吐いたザールたちは、退場していった。
「残り5分。残りは俺らだけ。行こう、山頂へ」
「おう」
俺達は走り出した。山頂へ。100mほどで山頂だ。大した距離じゃない。でも、戦いを終えた俺には、長く険しいものに思えた。
「ついた」
山頂だ。
この山よりも低い山々。生い茂る深い緑の木々。流れる澄んだ青い川。どこまでも続く空。
「ここにこれて、良かった。ルガに会えて、良かった」
今の素晴らしい仲間たちに出会えたことは、俺の人生を変えた。
「うん。そうだな」
ルガの返事がシンプルに嬉しかった。最高だ。
最高の仲間だ。
鳥が美しく歌う。
戦いは、終わった。