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少しだけ。第二話
今日、習い事の帰りに、街の小さなショッピングセンターに行った。田舎じゃないけど、そのショッピングセンターは規模が大きいわけではなかった。ただ、冬休みなだけあって近所の小中学生でにぎわっている。歩羽は、クラスの問題児男子に遭遇しないかビクビクしながら買い物を済ませた。英語のラジオの教材を買っただけだが。
ショッピングセンターを出て、横断歩道を渡る。
「桜木〜!!!」
ショッピングセンターの方から声が聞こえた。
(誰だろう。この声、聞いたことないような…。)
歩羽は恐る恐る横断歩道の近くに戻った。そこで、歩羽は3人の男子を目にした。1人は誰かわかった。トワだった。そのまますぐにまた隠れた。でも気まずいので、再び近づいた。すると、思いもしなかったことを聞かれた。
「なぁお前、林島のこと好きなん?」
歩羽は何も答えずに聞き返した。
「林島と後2人誰?見えないんだけど。」
「俺は田口で、こっちは森。」
2人とも知らない奴だった。
(どうして私のことを知っているの…?)
そう思いつつも、歩羽はトワに手を振った。
トワは、腰あたりで小さく素早く手を振った。
あの冬季講習の日のように、また手を振ってくれた。
それだけなのに、歩羽は嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
ーー1年前ーー
「あの…、桜木さん、このノート配っておいて。」
数人の女子がノートを押し付けてくる。
「あ、う、うん…。わかった…。」
歩羽はノートに書いてある名前を全部確認していった。
(ほらやっぱり。なんでトワの渡してくるのよ。)
仕方なく歩羽はトワの席へノートを渡しに行った。
「はいこれ。」
できるだけ笑顔で接してみる。
「…。」
受け取ってはくれるが、何も言ってくれなかった。
教室の隅では。
「ねぇねぇ…、絶対歩羽ちゃん、林島のこと好きだよね〜。」
「キモ〜い。あんなにつきまとってる。」
コソコソ女子たちが話している。
「おい桜木ぃ。お前、そんな林島のこと好きなんだぁ?」
変態男子も聞いてくる。歩羽は睨み付けただけで何も言い返さなかった。
それが、今年になってからは普通に人として接してくれるようになったのだ。
夏休み前だって、
「ねぇ…なんで今年は結構喋ってくれるの?」
歩羽が変な質問をかけたら、
「…だって性格マシになったじゃん。」
と言ってくれた。歩羽は好きでいることを隠せなかった、恋愛が下手くそすぎる女の子だった。いろんな人から言われていた。
もちろん今も下手だけど、好きな人への接し方もだいぶ気をつけた。
(…また会えたらいいな。今度は2人だけがいいな。)