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はじめの一歩、第一歩③
星
第五章:引き裂かれた真実「お母さんが、なんでその写真を朝から晩までポケットに入れていたか、本当に理由を知らないの?」るうと君の言葉が、夕暮れの静かな公園に響いた。私は小さく首を振ることしかできなかった。るうと君は静かに空を見上げ、ぽつりぽつりと話し始めた。「あの日、正人と加奈が大喧嘩をした日の夜……正人の家が火事になったんだ」「え……?」私の頭の中が真っ白になった。「正人の家だけじゃない。その火事は周りにも燃え移って、隣の加奈の家も、近くにあった他の二人の家も、全部焼けてしまったんだよ。みんな命は助かった。でも、家も思い出の品も、全部失くしてしまったんだ。みんなの親は、生活を立て直すために、すぐに遠くの街へ引っ越すことを決めた。あの日、みんなが『暇になった』って言って急にグループを抜けたのは、理子に心配をかけたくなくて、笑顔でのお別れが辛くて、嘘をついて去っていったんだよ」るうと君の言葉が、冷たい風のように私の心に染み込んでいく。「じゃあ……なんで写真に正人が写っていないの?」私が尋ねると、るうと君は優しく微笑んだ。「あの日、正人と加奈は本当に大喧嘩をしていただろ? 美穂のお母さんがカメラを向けた瞬間、正人は恥ずかしくなって、美穂のお母さんの背中に隠れちゃったんだ。だから写真には写っていない。でも、その直後に火事が起きた。正人の家族は、アルバムも全部燃えちゃったんだよ。だから理子のお母さんは、『正人のために、この写真をいつか手渡してあげたい。みんながまた笑顔で集まれますように』って、ずっとポケットに入れて、みんなの行方を探していたんだ」家が「売り土地」になっていたのは、あの日すべてが燃えてしまい、みんなが新しい未来へ進むために土地を手放した証拠だったのだ。最終章:はじめの一歩、第一歩「そうだったんだ……」私の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。みんなが私を嫌いになってバラバラになったわけじゃなかった。みんな、突然の悲劇の中で、必死に前を向こうとしていただけだったのだ。「理子、泣かないで」その時、後ろから優しい声がした。振り返ると、そこには大人になった美穂(みほ)ちゃんが立っていた。美穂ちゃんの目にも、涙がたまっていた。「お母さんから聞いたよ。理子のお母さんが、ずっと写真を持って正人たちの引っ越し先を探していたこと。……そして今日、ついに正人たちの連絡先が分かったの!」美穂ちゃんが差し出したスマホの画面には、大人になった正人や加奈、そして他のメンバーたちのグループチャットが映し出されていた。画面の向こうのみんなは、少し顔つきは変わっていたけれど、あの頃と同じ優しい笑顔の写真を送ってきてくれていた。「理子、みんな今でも、あの公園でやった『だるまさんが転んだ』が大好きだって言ってるよ。またみんなで集まろうって」美穂ちゃんの言葉に、私は何度も何度も頷いた。お母さんがずっとポケットに忍ばせていた一枚の写真が、十年の時を超えて、バラバラになった私たちの心をもう一度繋ぎ止めてくれたのだ。次の日の朝。私はリビングの写真棚に、あの少し折れ曲がった写真を綺麗に飾った。写真の中の七人は、今でもあの日のまま笑っている。写っていない正人も、私たちの心の中には確かにいる。「いってきます」私はお母さんに笑顔でそう言うと、強く一歩を踏み出した。それは、バラバラになった八人が、もう一度新しく出会い直すための、大切な「はじめの一歩」だった。(おわり)