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9 夜の話
その夜。
「ルーフェリア様、ルーフェリア様!」
「……なによ」
アミュリがウキウキランランで話しかけてくる。
「今日護衛役! きまりましたよね?」
「……アーゼンだったわ」
「よかったですね!!! 結婚が間近ですよぉ!! 護衛役です! しかも十六歳の誕生日で任命されたのです! 魔族式の運命の隣ってやつですよ、これは!」
「そんな儀式聞いたことないわよ!」
「私が今つくりました!!」
「なんで創作をドヤ顔で言えるのよアンタは!!」
アミュリはふんふんと鼻息を荒くしながら、
勝手に話を進める。
「第一にですね、ルーフェリア様の護衛は命よりも優先して守る存在なのです!」
「まあ、それはそうだけど……」
「第二に!! ワイバーン一族の青年が、自分より強い相手を守ると誓うのは!! 伝統的に!! 非常に!! 希少!!!!」
「そんな昔話知らないわよ!?」
「私も知りません!!! でもシレっとそれっぽく言っておけば良いのです!!!」
「アミュリ、落ち着きなさい!!」
しかし落ち着く気配は一ミリもない。
アミュリは私の両手をがしっと掴んで、めちゃくちゃ真剣な顔で言う。
「ルーフェリア様。今日のアーゼン様……雰囲気、変わってました」
「え……そう?」
「ええ。あれは男の目でした!!」
(こっちが恥ずかしいわ!!)
私は絶句する。
「なんていうこと言うのよ」
「? わるいことですか?」
「……」
「で? ルーフェリア様。 護衛がアーゼン様って聞いたとき、どう思われました!?」
「え……?」
そうだ。
アミュリはその場を知らない。
父様の部屋で、私が素直にうれしいわ! と言ったのを。
だから純粋に知りたくて聞いているだけ。
「どう、って……」
言いよどむ私に、アミュリはさらに詰める。
「嫌だったのですか!? まさか!! え、もしかして予想外で心臓止まりました!? それともあ、やっぱりって感じでした!? はいどっち!? さあさあ!!」
「ちょっ……押さないでよ!!」
アミュリは興奮のあまり、上半身を前に倒す勢いだ。
「だって! アーゼン様ってばいつも落ち着いてるのに、ルーフェリア様のこととなると表情が柔らかくなるんですよ!? 絶対に特別扱いしてます!!」
「特別扱いなんてしてないわよ!」
(……たぶん。いや……どうなのかしら……?)
自分でもよく分からないから余計ややこしい。
アミュリはさらに身を乗り出す。
「で!!! ルーフェリア様はどう思われたのですか!? アーゼン様が護衛だと聞いて!!」
「べ、別に……普通よ! 普通!!」
「普通に嬉しかったってことですか!!?」
「なんでそうなるのよ!!?」
アミュリは目をキラキラ輝かせながら叫んだ。
「だって!!! ルーフェリア様、普通じゃない時の声、私ずっと聞いてきてますから!! 今のは絶対普通じゃなかったです!!」
「っ……!」
思い出す。
昼間の私。
『アーゼン! うれしいわ!』
……あれは、確かに普通じゃなかった。
でもアミュリは知らない。
「ルーフェリア様……?」
アミュリが覗きこむ。
「……図星、ですか?」
「ち、違うわよ!」
「違わないですよね?」
「違うって言ってるでしょ!!」
「ふふふ……?」
アミュリのにやけ顔が強すぎる。
(やだ……この顔、本当に苦手……! すべてお見通しみたいに見えるのよ……!)
「……アミュリ」
「はい?」
私は枕をそっと手に持ち、
「そろそろ黙りなさい!!!」
「きゃーー!!」
部屋に枕が舞った。
けれどアミュリの声は止まらない。
「でも嬉しかったんですよねぇぇ!! アーゼン様~~!! 聞かせてあげたい~~!!」
「やめて!!」
今日、いちばん疲れたのは儀でも護衛でもなく、間違いなくアミュリの相手だった。