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魔女に婚姻を申し込む
懐かしい故郷に帰ってきた。水の流れは穏やかで、空気も澄み切って星が綺麗に見える。
「エノ」
それに、ディートリヒも一緒。魔法使いだった頃のように、夜空の下を歩けるのがとても嬉しい。
「どうかしたの?」
「伝えたいことがあるんだ」
周囲を伺う瞳は、今も鋭く冷たいものだった。
「少し海に出ない?」
あぁ、と彼は小さく頷く。箒を小舟に変えて乗り込むと、彼はまっすぐに漕ぎ始めた。
「悪いな、手間をかけさせて。あまり人に聞かれたくなくて」
漕ぐ手を止め、錨を下ろす。隣に座った彼の横顔は真っ赤だった。
「エノ。最期の時まで、騎士としてお前を守らせてほしい」