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2-5 仲直り
家へ帰り、スマホを開くと、企業から連絡が来ていることに気づいた。
『ごめん。一回ちゃんと話したい』と。
もう夜も遅いし、明日返そうか、とも考えたが、こんな状態で既読スルーは色々と誤解を招くだろう、と連絡を返すことにした。
『遅くにごめん。いつ空いてる?』
送信すると、すぐ既読が付き、連絡が返ってきた。
『私はいつでも。紗絢は?いつ大丈夫そ?』
『じやまあ、明日でも大丈夫?』
『うん。私の家でも良い?』
『うん、ありがとう』
『わかった。じゃあ、明日。おやすみ』
『おやすみ』
バイトが終わり、桔梗の家へと向かう。今日、桔梗はシフトが入っていなかったから一人で。
チャイムを押すとピンポーン、間延びした音が廊下に響く。しばらくするとガチャリとドアノブがまわった。
「…おっす」
「おっす?」
桔梗から発されたまさかの言葉に驚き思わずを繰り返す。
「だってなんて言えばいいのか分かんなかったんだもん」
「普通でいいんだよ、普通で」
「普通で良い、か。わかった」
部屋に入ると、昨日まで週に何回も来ていたいつもと変わらないものがそこにあった。
「なんか食べる?」
「いいの?」
お腹は空いているが、いつも作ってもらって申し訳なく、食べたいなんて言っていいのだろうか、少しの気まずさもあるせいかいつも以上に考え込んでしまいだった三文字しか言えなかった。
普通で良い、と言ったものも、自分も普通にできていなかったことに気がつく。
「私も食べるとこだったし。ちょっと待ってて」
そう言うと、彼女は手際よく、切り始めた。
トントン、ジュージューと心地よい音が鳴り響く。
「ごめん」
そう言わずにはいられなかった。
慌てて振り返ろうとする桔梗に、料理のBGMでいいから、と伝え、私は再びその背中に言葉をぶつける。
「今まであんなに良くしてくれてたのに。同情されて今までの恩を全部なかったことにした。身勝手だよね。ホント、ごめんなさい」
涙が出そうになった。そういうところにも身勝手さを感じて嫌になる。
桔梗が話すまで待ったほうがいいのか、おい謝罪をすればいいのか悩んでいると、ご飯が出来上がったようで丼を二つ持ってきてくれた。どうやら今日はビビンバ丼らしい。
向かい側に座った桔梗が一つ深呼吸し、口を開いた。
「ううん、私が悪かったの。紗絢そういうの好きじゃないってわかってたはずなのに」
「いや、そもそも私が普通に隼人の家ピンポン出来れば、桔梗に気、使わせなくて済んだことだし」
「…まぁ、それはそうだね」
「そこは否定してよ」
へへ、と桔梗は笑った。つられて私も。
やはり私と桔梗は気が合うらしい。改めてそう思った。
日曜日に書ききったぞ!偉すぎ。