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《出逢い》
さぁ作ってしまいました、新シリーズ。
今回は初の長編。
『』は英語だと思ってください。
岩本side
P.M.1:00__スーパーにて。
アメリカ合衆国のフロリダ州。
海沿いの都市、マイアミ。
照「ラッキー、ラスイチじゃん。ホワイトチョコにしよっと」
仕事のご褒美ってことで、板のホワイトチョコを手に取ろうと伸ばすと。
隣からすらっとした手が伸びてきて、俺の手とその手が触れた。
照「あっ……Sorry, you can have it……って、…あ、」
謝りながら顔を上げると、隣にいたのは日本人っぽい顔立ちの男性だった。
その男性は、俺と触れた手を穴が開くほど見つめていて、青ざめた顔で固まってる。
照「…あのー、すみません………Hey,」
「はぁっ、…っふぅ、、はぁ、ふぅ、は、ふ、…」
息がどんどん荒くなっていったかと思えば、突然ダッシュで逃げていってしまった。
照「…あっ、」
行ってしまった。
商品棚が数え切れないほどあり、慌てて追いかけようとしたがすでにいなくなっていた。
照「…なんだったんだろ」
とりあえずホワイトチョコはちゃんとカゴに入れて、買い物の続きを楽しんだ。
---
帰り道。
人が多いの苦手だから、なるべく人がいない路地の方へと向かうと、何やら騒ぐ声がした。
『お前、いいからその袋俺にくれよ!!』
『だめです!これ、俺が買ったものなんで…!』
『いいだろそれぐらい!』
『だめです!』
向かうと、チャラそうな男が一人と……さっきスーパーで手が触れた男性。
チャラそうな奴がさっきの男性の肩を掴むと、男性は目を見開き、息が荒くなっていく。
『はぁはぁ……はなせっ、!』
『離さねーよ』
『やだ…!』
流石に無視できなくて、チャラそうな奴の肩を掴み、男性と無理やり引き剥がす。
『おい、辞めろよ。嫌がってるだろ』
『はぁ?なんだよ、口出しすんじゃねーよ』
『…あのさ、人がお金稼いで買ったものをお前は脅して手に入れようとしてるわけ?流石に卑怯じゃない?』
『…っ、』
『ほら、今なら見逃してやるから帰れ』
『チッ、』
軽く舌打ちしてくるりと去っていった男。
俺はため息を吐き、男性の方を向くと、男性は立ったまま体を震わせている。
おぉ、やばいじゃん。
そう思った矢先、
「目黒〜!」
と声が。
その先には、この男性めがけて手を振り、走ってくる、黒いエプロン姿の男性が。
…男ばっかじゃねーか。
「はっ、…あ、だて、さ、」
エプロン姿の男性は、息を荒くする男性に駆け寄ると、目線を合わせて一緒に深呼吸を始める。
この状況にどうすればいいかわからず、ただ佇むと、エプロン姿の男性は俺を睨み上げた。
「Hey, what did you do to him?」
照「Wait! I didn’t do anything to him……ていうか日本のお方ですよね、」
「え?…あぁ、てっきり|現地《ここ》の人かと……」
照「いえいえ、別に…この髪色ですし」
俺は今、金髪と茶髪の中間の色に髪を染めている。
ここの人に間違われても無理はない。
「で?何したんです?」
「ぇ、…あ、……だてさ、」
「目黒はいいよ、ちょっと静かにしてて」
照「だから何もしてないですって!……ただ、ちょっと声かけただけで」
助けた、なんて偉そうなことは言いたくなくて、表現を変えたが、逆にだめだったらしい。
「…とりあえずウチのカフェ来てください」
照「…はい」
仕方ない。
この後特に予定ないし、ついてくか…
俺は服をぱんっと払うと、エプロン姿の男性と、まだ少し震えている男性の後ろについていった。
---
しばらく歩くと、白く塗られた木製の建物が見えてきた。
店の前にあるメニュー黒板には、『Aqua Marine』と書いてある。
「中へお入りください」
照「…失礼します」
カランコロン、と軽快な音を立てる鈴付きのドアを開けば、木を中心としたおしゃれな内装が見えた。
いくつかのテーブルと椅子のセットに、カウンター席。
カウンター席からはキッチンがよく見える。
「とりあえず、カウンター席へお掛けください」
照「はい」
「紅茶とコーヒー、どちらがお好みですか?」
照「コーヒーで」
「目黒、コーヒー持ってきて」
目黒、とさっきから何度も呼ばれている男性はこくりと頷くと、さっとキッチンへ行ってしまった。
「で。何があったんですか?」
照「あー、…えーっと、……」
説明しづらいというか。
さっきの男性が、変な奴に絡まれていたことを勝手に言ってしまっていいのかがわからない。
「…コーヒーです」
すると、ソーサーの上に乗ったコーヒー入りのカップがことんと置かれた。
そこから、コーヒーとは思えないフルーティーな香りが漂う。
「ありがとう、目黒。…もしよければなんだけど、何があったか話してくれる?」
「……はい。…さっき、おつかいの帰り道に、変な人に絡まれて。買ったもの全部くれとか言うから必死に断ったんだけど、それでもしつこくて。そしたら、この人が助けてくれて…」
「…そうなの?」
「はい」
「そっか……疑ってしまってすみません。ウチの目黒を助けていただきありがとうございました」
照「へっ⁉︎…あ、いや……別に…」
「ほら、目黒も」
「…ありがとうございました」
「お名前お伺いしてもよろしいですか?」
照「岩本照です」
「ありがとうございます、岩本さん。…僕は宮舘涼太で、この店の店主です。こちらが目黒蓮で、ウチの店の従業員でもあって、ショコラティエもしてます」
照「…ショコラティエ?………チョコ作る人ですよね?」
涼太「はい。…ね、目黒」
蓮「あ、…んーと、はい、」
涼太「よければチョコ食べてきます?」
照「いやいやいや、…そんな、」
涼太「いえいえ。ほんの気持ちですよ」
照「…えー、…じゃあ、お言葉に甘えて」
涼太「目黒、用意してあげて」
蓮「うんっ」
目黒は頷くと、ちょこちょことキッチンに入っていった。
その後ろ姿が、同じ男なはずなのになんだか可愛く思えた。