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11.
(私もお嬢様も動くことができない、どうすれば・・・・。)
「考えても無駄だ、『ポータル開通』」
(このまま、私たちは何もできないんですか・・・!)
「シャルム、諦めるな。『能力創造 力を引き出す程度の能力』」
『力を引き出す程度の能力』、それは隠された力を開放する能力。
**「これなら来れるでしょ!美和さん!!!!!!!」**
その瞬間、彼女は現れた。
灰色のような不思議な色の髪、何もかもを壊しそうな紅い瞳。
「我の登場だ、美咲。」
---
「・・・・お嬢様、この方は?」
シャルムの言動から、かすかな警戒が感じられる。
「あとで説明する、でもこれだけは言っておく。」
--- **「美和さんは味方だよ、きっと何があろうと。」** ---
「わかりました、信じますよ。」
「あの氷魔法の使い手をやればいいのだろう?」
「そうだよ、美和さん。隣にいる男子は絶対に傷つけないでね。」
「なかなか難しい要求をするな。まぁ、我に出来ないことはないが。」
彼女はそう言うと一瞬で距離を詰め、敵に蹴りをくらわせた。
《《**本当に?**》》
蹴りをくらったものは、正体を現し破片を散らす。
「氷・・・・?」
「安直だな、スピードは確かに一級品だが。」
彼女たちの背後から、敵と美音が現れる。
よく見ると、美音の口は手で塞がれており、美咲たちに伝えるのは難しい状況だった。
「あっちは氷で作った偽物だったと言うことか!?」
「そういうことだ、貴様は確かに強い。だが、上には上がいることを忘れるな。」
そう言って、ポータルの中に入り姿を消した2人。
「実力不足を痛感した。美咲、すまない。」
「私が戦闘不能になったのがいけなかったんだ。美和さんは悪くない。」
「・・・お嬢様、説明していただいてもいいですか? 美和さんのことについて。」
「そうだね、あれは私が5歳だったとき―――。」
---
〜その頃 美音は〜
「僕をここに連れてきて、何をするつもりですか。」
地面も空も見えない、不思議な光景が広がっている。
そんな空間に連れてこられた美音。
「貴様、名前は?」
「いいませんよ、美咲たちの敵だって言うなら。」
「言え、でないと貴様の命はない。」
「|美音《みなと》ですよ、美しい音と書いて美音です。」
「美音、お前は冷静で実力もある。そんなお前に提案だ。」
**「こちら側へ来ないか?」**
「・・・・・魔王側につけって言ってます?」
「そう言っている。」
「嫌に決まっているでしょう、僕の親は魔王に殺されたんですよ。」
「そうか。なら、こちらに来ると言うまで待つしかないな。」
彼が指を鳴らすと、美音が座っている椅子からロープが出現した。
あっという間にロープで縛られ、美音は動けなくなる。
「僕が、こんなものでそちらへ行くとでも?」
「思っていない。・・・・少し、この後の話をしよう。」
「この後ってなんですか、あなたは一体何を企んでいる。」
「お前たちは、魔王討伐を目標にしているのだろう?
それとは逆に、私たちは第3王女の討伐を目標にしている。
それはなぜか。
答えは簡単だ、魔王様に王女の首を捧げれば 金をもらえて地位も手に入る。
・・・お前は、もし魔王討伐した後どうするか決まっているのか?」
「―――決まっていないです。」
「もし討伐したとして、お前はどうする?
第3王女は自らが魔王になり、魔界を統率するだろう。
隣にいたメイドも、それをサポートする。
なら、お前は?
お前だけが、その後を保証されていないんだ。
なのに、王女たちは悠々とお前の家に住み着いている。
おかしいと思わないか?」
「・・・・・思わない。僕が天界に帰ればいいだけの話だ。」
「帰れるのか? 濡れ衣を着せられて天界から追放されたのに?」
「信じてくれる人の方が多かった。戻っても生活は保証される。」
「でも、お前の周りは気づいてるんじゃないか?」
「・・・・・・・・・何を。」
「お前が地上に降りた後、連続殺人をしたことだよ。」
「・・・それは過去の話だ。3年前の話を持ち出すな。」
「大切な妹のためだっけか? 兄妹愛ってやつか。」
「僕が何をしてもみんなは迎えてくれる。僕は信じてるから。」
「私たち魔王軍は、そんなやつらも受け入れる。たとえ殺人犯でも。」
「・・・・・・。」
「なぁ、人を殺してどんな気分だった? 怖かった? そんなことないよな。」
「・・・・やめろ。」
「お前も楽しんでたんだよ、人を殺すことに快感を覚えたんだよな?」
「違うって言ってるだろ!!!!」
彼は、珍しく声を荒げて叫んだ。
美咲たちに見せる、爽やかイケメン(笑)の欠片もない。
「僕はもう、殺人から手を引いたんだ。あれから一度も殺していない!!!!!」
そう叫んだ後、自分に言い聞かせるように呟く。
「__そうだよ、僕はもう殺してなんかない・・・・。もうやめたんだ。__」
「―――だから何だ? お前が人を殺したことに変わりはないよな?笑
お前は、それから逃げている。現に王女たちにそのことを伝えていない。」
「・・・・それは。」
「怖いんだろ? 王女たちに幻滅されるのが。
こっちにくれば、幻滅なんてされない。それが当たり前だからだ。
王女たちは、お前と違って苦労せずここまで生きてきた。
向こうが死ぬのが、当然じゃないか?」
「・・・・・。」
彼は動揺している。目が泳ぎ、手が震え、汗をかいている。
「・・・・美咲たちも苦労してきた。
能力がないせいで、ずっと苦労してきたって。忌み嫌われていたって。
それを知っているのは僕だ。お前らなんかにはわからない!!!!!」
「・・・・ここまで言ってもダメか。」
そう言うと、美音の方に少しずつ近づいて。
「あ゙ッ・・・・、やめッ・・・・・。」
体が酸素を欲している。何よりも、誰よりも。
「首から手を離してほしければ、こう言うんだ。」
「『王女たちを裏切って、魔王軍に行く』、そう言えばいい。それだけで楽になれる。」
パッ(手を離す)
「ほら、言うんだ。」
「絶対に、いいませんから・・・!」
首絞め、NGだったのに今では好きになってしまった。
まぁ、フィクションなら好きって言うのはある。うん。