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異世界から帰ってきたら、最強になったことに気づいてしまいました。 第一章『殺し合いゲーム』
NOVEL CAKEライト版から転載。
【一話『異世界から』】
海渡『もう何年もいれば、いつかは暇になる。』
海渡『元の世界に帰らせてくれ___』
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…ここはどこだ?起きたところは、知らな…いや、知っている場所だ。ここは、元の世界の俺の家だ。
帰ってこれたんだ、やっと。
俺は|草野海渡《くさのかいと》っていう。異世界に5年いた。目的は、異世界の悪い悪い魔王を倒すため。
とは言っても、本当は倒したくもなかった。薄暗い異世界で、とても手強い敵がいるのに、こんな庶民が魔王を倒したのも不思議だった。
異世界と元の世界では、時間の進み方がだいぶ違う。異世界では5年経っているのだが、元の世界では、5秒しか経っていないのだ。
全く、おかしいものだ。そういって、コップを手に取る。コップの中には、甘い甘いコーヒーが入っていた。コーヒーが大好きだ。
そんなことを言っていたら、部屋に誰かが入ってきた。
海渡『…優?優なのか?』
優『なにいきなり…』
妹の優だった。
久しぶりすぎて、少し涙が出た。
優『もうすぐ出かけるけど、準備した?』
そういえば、今日は家族で出かけるんだったな。
俺は準備を進めた。
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【第二話『怒り』】
俺の家族の構成は、母、父、妹、そして俺。俺は車に乗って、荷物などを乗せた。
少し家族で遠出をする。運転は父が行うことになった。
そして、家族全員が車に乗って、シートベルトをすると、車が動き出した。ついに、元の世界の素晴らしい景色が見られるんだな、そう思った。
父が母と喋りながら運転をしていた。窓から外を眺めていたら、妹の優が急に話しかけてきた。
優『お兄ちゃん、外ばっかり眺めて。お母さんたちも仲良く喋ってるじゃない、私たちも二人で喋らない?』
海渡『…ん、ああ、優が喋りたいならいいよ。』
久しぶりの優とのお喋り…、とてもわくわくした。
優『学校はどう?私はグッド!』
優は小学5年生。背は高い方だが、頭は悪い。俺は中学3年生だ。自分で言いたくもないが、頭は周りと比べていい方だとは思ってる。
海渡『俺も。』
そう返すと、優がまた質問してきた。
優『勉強どう?受験とか大丈夫?』
海渡『まあまあ。』
優『まあまあ…って、反応薄いわね…。』
異世界で人間とあまり喋ることがなかった俺は、妹に対してもあまり喋ることがなくなってしまった。それよりも、今は風景を楽しみたい、そう思ったのだろう。
でもそんな時だった。突然車の速度が急に上がった。この時はまだ、家族全員特に気にしてはいなかったが、スピードがどんどん上がっていった。
父の方を見ると、父がハンドルから手を離していた。母は「やめて!」と言っていたが、父にはその声が届かなかった。
やがて、母が助手席からハンドルを動かしていた。しかし、助手席からハンドルを動かすなんて、無茶だ。
…そして、何処かの木に車がぶつか___
海斗『|時間制止《タイム コンストレイント》』
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【第三話『強制沈黙』】
海渡『|時間制止《タイム コンストレイント》』
俺は時間を止めた。想像がつかないと思うが、俺にとっては普通としか思えない。だがしかし、いったい何が起こったんだ…?
父の顔を見る、少しにやついている顔に見えた。もしかして、父がわざとハンドルから手を離して…?病気だったらやばいとは思ったが、だったらもっと顔は死んでいるように見えるだろう。
母はとても必死そう、ハンドルも一生懸命に動かしていた、父の仲間ではなさそうだ。
妹はそもそも小五で殺意を抱くということはあまりなさそうだし、逆に家族が死んだら他に行く宛はあるのか?と思ってしまう。行く宛は近所の人とか、親戚の人とかになると思うのだが、子供ということもある、あまり考えられない。
…このまま時間制止を解除してしまうと、皆が死んでしまうな…。とりあえず家族を他のところに移動させないといけない。俺は家族を車から下ろし、安全な場所へと避難した。まだ父が犯人かはわかっていないから、父も安全な場所へと避難させた。
そして、俺は時間制止を解除した。
母『っあ…!…って、ここはどこ…?』
妹『え、あ、あれ、さっきまで車にいたはず…』
母『そういえば、お父さん、どうしちゃったの!』
父は、驚いた様子だ。犯人は父だろう。
そして、父は喋り始めた。
父『お、お前ら、違和感に気づかないのか!?』
母『違和感…?ま、まあ確かに急に車から移動したのは変だけれど、あなたも変よ!』
母と父が大声で夫婦喧嘩をしている。俺は下を向いて、終わるのを待っていると、妹の優が話しかけてきた。
優『なんで、なんで、お兄ちゃんは冷静なの…?』
優は、俺を疑うような目で見た。
何故ここに来たか、犯人もわかった俺には、驚きもしない。驚く内容がない。確かに、父があんなことをしたことには驚いてるが、所詮は人だ。人は人を裏切ることは簡単。俺は、優の顔をじっとみつめた。そして優がまた話し出す。
優『お兄ちゃんは、平気なの…?』
優『お兄ちゃんは、なんでそんなに驚いてないの…!?』
…所詮は人だ。疑うことなんて、簡単なことだ。俺は無言のまま、そこら辺の石を蹴った。そして、妹へと話す。
海渡『…どう見ても、父がやってるようにしか思えなくないか?』
優『でも…一緒に生活してきた家族だよ!たった一人しかいない私たちのお父さんだよ!やるわけないじゃん…!』
海渡『じゃあ僕がやると思ったの?』
優『なわけない!でも、なんでそんなに冷静か聞きたくて…。』
構ってるだけで時間の無駄だが、キリがない。そろそろケリをつけないと、ずっと続く会話になってしまう。あの夫婦喧嘩みたいにね。
…仕方がない。少し無茶だが…
海渡『強制沈黙、お口を瞑って待ってて頂戴。』
優の口は、チャックのようになり、喋れなくなった。
まあ俺がOKというまではお口チャックだ。
優『ん〜!!ん、ん!!』
さて、そろそろ夫婦喧嘩も止めちゃうか…。五月蝿いからね。
あ〜あ、せっかくのお出かけが、誰かさんのせいで台無しだよ。
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【第四話『ゲーム』】
俺の母と父は、まだ喧嘩をしていた。言い争いは、さっきよりより激しくなっていた。
母『あなたがハンドルを離したせいでこうなったのよ!』
父『はあ?それよりここがどこかを探るべきだろうが!!』
相変わらず声が大きいおふたり。だが、放置しておくわけにもいかない。こうなったら、無理矢理でも止めないといけないのだ。
俺は二人に話しかけた。
海渡『二人とも、そこらへんにしといて。』
父『海渡、これは親が解決しないといけないことだ。子が口を挟むんじゃない。』
海渡『でも、解決できなさそうじゃん?』
父『まあ…そうだ…が…。』
俺は父の手を握った。そして徐々に握る強さを強くしていく。
海渡『いい加減、自白しt…』
『自白して』と言いかけたところで、俺の意識は途切れた。
意識が途切れる0.05秒前に、父の後ろにいた母が倒れていたような気がした。
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…ここはどこだ?起きた場所は、すでに知らない場所。唯一言えることは、まるで学校の体育館みたいなところに俺はいること、そして周りには、知らない人と知ってる人が沢山いること。
体育館だと思われるステージ上には、すでに沢山の死体が置いてあった。
周りの人はみんな怖がっていたり、叫んでいたり、いろいろだった。
そして、ステージにただ一人いたおじさんがマイクを使って話す。
おじさん『tst、tst、ok。』
おじさん『皆さん、何故呼ばれたかはわからないですよね??』
おじさん『そう、この体育館で、"殺し合いゲーム"というものをしてもらおうと思います。もちろん強制、やらない奴は、死体の山の中へと放り込まれます。』
急に静かになったが、とある男性がおじさんに向かって、『ふざけるな!』と叫んだ。そうすると、黙っていた他の人たちも訴え始めた。
おじさん『まあまあ皆さんお静かに。このゲームをクリアすると、願いを一つ必ず叶えることが可能です!』
みんなが騒ついた。
だが、こんな物騒なことは俺はしたくない。俺は魔法で止めようとしたが、あまり使うと『神』に怒られるな…
俺は使うのをやめた。
おじさん『さあてと、一番最後に生き残った人が勝ちだよ〜?では始めるよ!よぉ〜い?』
…魔法を使わないなんて、この状況できっこなさそうだ。
海渡『時間制止』
…おじさんの顔は、とても苦笑いだった。
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【第五話『困惑』】
さてと、時間制止して何をするか。まあみんなが危険な状態だったし、もっと魔法使っても良かったか?
俺は、おじさんの目の前に行った。…随分と怖い笑顔、殺し合いゲームと言っていたな。一体ゲームをやってどうするのか…
そして俺は、時間制止を解除した。
おじさん『どん!!』
始まった、地獄のゲームが。
でも、みんな体は誰も動いていなかった。おじさんも、驚いた様子。
おじさん『え、み、みんな?こ、みんな殺しちゃえば、自分だけ生き残れるんだよ?』
だが、そんなことをおじさんが言っても、みんなは一言も喋らない。ここにいる全員が、ステージにいるおじさんを睨む。汗をかく。みんな緊張感がとても高まっているだろう。相手は、武器を持っているかもしれないから。
でも、俺はそんなことでは、もうびくともしなくなった。人間という生き物が、僕を置いてけぼりにする。いや、僕が人間を置いてけぼりにしているのだ。
異世界とこの世界は全くの別物だ。異世界では、人間を恨むモンスターが沢山いる、モンスターは僕を襲う。最初は勿論、雑魚だけで瀕死状態にとなるが、今は違う。雑魚は雑魚だ。びくともしない。
そして、異世界で唯一の話し相手となった『神』が、魔王を倒した時にこう言った。
神『あなたが本当に人間だったのか、ついそう思っちゃうわ。』
神と俺は呼んでいるが、正しくは女神だ。人間はこんな強さには普通ならない。魔法なんてただの誰かの妄想にしかならない。
この世界は異世界よりはものすごく平和。戦争とか紛争とかっていうが、それよりは異世界の方が物騒で、毎日が戦争みたいなものだった。
静かにしていたら、ステージにいたおじさんがステージから降りた。
おじさん『…いいだろう、殺したくないんだな、分かっていた。』
おじさんは、ニヤっとし、ポケットから銃と見られるものを取り出した。
おじさん『これを見ろ!!撃たれたくないならさっさと誰でもいいから殺せ!!』
みんなが騒ついた。だが、みんなは騒ついただけで動かなかった。下手に動くと殺されると思ったのだろうか。
おじさん『誰から撃とうかなぁ??』
だが、俺はこう言ってしまった。
海渡『適当に撃ったら?』
あ、敵を挑発させちゃった。
おじさんは俺の方を見て、こういった。
おじさん『なんだとクソガキがあああああ!!』
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【第六話『人間』】
おじさん『なんだとクソガキがあああああ!!』
厄介なことになった、まあこんなに怒らせちゃったのは、全部俺のせいなんだが…
おじさん『まずはお前からだ!!』
【バン!!】
『きゃああ!』
どこからか叫び声がした。そして、銃声もした。
だが、銃弾は消えていた。
おじさん『…!?…外した…!』
【バン!!】
またおじさんは銃を撃った。…しかし、銃弾はまた消えていた。
おじさん『なっ…弾はどこへ…!』
海渡『弾?…ほら、僕の手のひらにあるでしょ?』
おじさん『っあ!?』
銃弾は、俺の、俺の手のひらにあった。さっきまで、ずっと弾をキャッチしていたのだ。
こういうの、アニメとかでよくあるものじゃないか?
そして、俺はおじさんに近づいた。
海渡『はぁ、そろそろ諦めな。』
おじさん『な、なんだと…!?』
俺は先程キャッチした弾を床に落とし、おじさんを睨んだ。
何度も言うが、所詮は人間だ。異世界で魔王を倒した人間が、普通の人間なんて雑魚と思ってしまうほど弱く思えてしまう。
おじさんは床に倒れ、目を瞑って、そのまま「ああああああ」と叫んだ。
お母さん『…海渡…!?』
げ、お母さん。
お母さん…とお父さんが、驚いた様子で俺を見る。そんなに…俺を見ないでよ。こういうことができるようになったって、成長したって感じで見てほしかった。
まあ、魔法なんて人間じゃ、ただの妄想からできたことだと認識してしまうから、魔法を使ったんだなんて言ったら、笑われる。
笑われることは恥ずかしいことではないが、本当のことなのに笑われるって、裏切られた気持ちになるからさ。
俺は、お母さんとお父さんのそばに行くと、お母さんは抱きしめた。
お母さん『すごいわ海渡…!悪人を倒せちゃうなんて!』
お父さん『銃の球を手でキャッチなんて…なんて素晴らしいんだ…!!』
…ん??
俺は耳を疑った。あれ、俺、今褒められてない??
混乱していると、妹が視界に入った。そういえば、強制沈黙解除してないや。
俺は妹にかけた強制沈黙を解除すると、妹が早速こちらに来た。
優『おめでとう、マジックの天才。』
天才って言われて、なんだか嬉しくなった。
てか、なんで魔法を信じたんだ?あんなこと普通じゃないのに…
馬鹿な家族でよかったよ…
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帰ってきた後、お母さんはお父さんに何故ハンドルを離したか聞いてみた。俺と妹も聞いてみた。
そしたら、お父さんの手が動かなかったそう。
でも顔がにやってしてたのも不思議だが…
今は動いているが、多分お父さんの手が麻痺したのだろう。面倒になると嫌だし、家族を失いたくないという気持ちはみんな一緒だったので、そう片付けといた。
殺し合いゲーム、というか、殺し合いゲームというものしてなかったけどな…
まあ、こういうことをする奴が、この世界にいるということか…
異世界だったら毎日殺し合いゲームみたいなもんだから、変わりなかったけどね
俺は夜ご飯を食べていると、お父さんがテレビをつけた。
『今週は、毎日雨が降る予想で、水曜日は関東を中心にゲリラ豪雨になるそうです___』
…今日は日曜日か。水曜日…、そういえば、友達との遊ぶ約束が入っていた。
大丈夫かな、まあ、なんとかなるか。
俺はご飯を食べた。
第一章完
読んでいただきありがとうございます…!
現在、NOVEL CAKEライト版にて、『異世界から帰ってきたら、最強になったことに気づいてしまいました。』が連載中です!
よろしくお願いします…!