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【第拾壱話】影を呑む国王補佐
〜猫葉 side〜
`***八岐大蛇「ジャアァァァァアア!!!!」***`
猫葉「うにゃっ!?」
__サッ!__
**バァンッッ!!**
猫葉(此奴、やはり図体がでかいだけあって一撃が重い…喰らえば死ぬ…!!)
`***八岐大蛇「ジャアアァァアア!!!」***`
猫葉「にゃっ…!!」
***バァンッッッ!!!!***
猫葉「…んにゃあっ!そればっかりするな!!」
`***八岐大蛇「シュウウゥゥゥゥ……」***`
叫ぶわしを、大蛇はギロリと睨む。
その瞬間、空気が大きく歪んだ気がした。
……しかし、わしもその程度で怯むほど弱くはない。
`***八岐大蛇「………シャアァァァアア!!!!」***`
**ブォンッ!**
***バァンッッッ!!!***
大蛇が大きく尻尾を振り翳し、地面を割る。
その勢いで空に舞った大きな岩が、わしの頭上に落ちてくる。
猫葉「……っ!!」
*__フワッ‥‥__*
わしは変化で姿を消して岩を避ける。
その刹那、わしがさっきまでいたところに岩が落ちた。
***ドゴオォォォンッッッ………***
__モクモク……__
土煙が戦場を覆い、やがて晴れる。
猫葉「………ケホッ…煙たいのぉ……何するんじゃ!!」
`***八岐大蛇「……ジャアアアァァァア…」***`
鋭い8つの視線がわしに向けられる。
するとその時、真紅だった瞳が深紫に染まる。
そして突然、猛攻の手がピタリと止まる。
そこでわしは、気になっていた質問を口にした。
猫葉「…………はぁ、おぬし、先程からずっと手加減しておるじゃろう?」
`***八岐大蛇「……ジャアァァア…?」***`
猫葉「本気で殺したいのなら岩を落とすなど回りくどいことはしないはずじゃ。」
`***八岐大蛇「……………………」***`
猫葉「…というかおぬし、何故話さないんじゃ?話せぬわけではないじゃろう?」
「名乗れ。名乗りもせずに相手を攻撃するとは、無礼にも程があるぞ。」
しばらくの沈黙が二人の間を冷たく通り抜ける。
__*ヒュウウゥゥゥゥ……*__
__*ヒュウウウゥゥゥゥゥ………*__
`*八岐大蛇「…………わかったである……」*`
***ピカッッ!!***
大蛇の頭が重そうに口を開き、突然体が光り始めた。
明るさでうまく目が開けられない中で、大蛇の影が縮んでいくことだけがわかる。
やがて光が収まり、わしはゆっくりと大蛇に目を向けた。
するとそこには、一人の男が立っていた。
猫葉「んにゃ?やけに人間らしい大きさになったのぉ?」
__男 「…………え、えと……わ……吾輩は……」__
猫葉「にゃあ?声が小さくて聞こえぬぞ?」
男 「……っ!わっ、吾輩の名は**|篝巳《かがみ》**。国王陛下の宰相であり、忠臣である…!!」
猫葉「…カカシ?」
**篝巳「か、|案山子《かかし》ではない!篝巳である…!!」**
そう小さく叫ぶ篝巳を、わしは静かに観察する。
目を覆うほどのボサボサの髪。
吃っている口調。
前を向けず地面に向けられた視線。
昔から観察眼が鋭いわしにはすぐにわかった。
猫葉「………おぬし、コミュ障か?」
篝巳「しっ、失礼である!!!………でも否定は出来ないのである…」
__「わ、吾輩、人と言葉を交わすのは、ふ、不得意であるゆえ…」__
猫葉「それを人はコミュ障と言うんじゃ。」
篝巳「…そ、そんなことより、吾輩は名乗ったのである!君も名乗るべきである!」
猫葉「んにゃ〜、騒がしいやつじゃの〜……わしは猫又の猫葉じゃ!」
篝巳「……猫葉殿であるか。承知したである。」
そういうと篝巳は軽く頭を下げ、ゆっくりと持ち上げる。
その時に前髪の間から覗いた深紫の瞳が、わしに深く刺さる。
篝巳「…………さて……では本題に移るである。」
猫葉「……ま、そうなるじゃろうな。」
僅かに間が空き、篝巳は先程までの吃りを抑えながら話し始めた。
篝巳「……吾輩がここにいる理由は、君達をこの先へ行かせない為である。」
猫葉「なぜ?」
篝巳「……この先で、国王である冥嶽様とその弟君が闘っておられるからである。」
猫葉「にゃっ!?……灯和か?」
__篝巳「…………その通りである…」__
そう言って篝巳は何故か悲しそうに少し俯く。
そして僅かに震える手を軽く額に添え、小さくため息をつく。
少しの時間が過ぎ、篝巳は深く息を吸い、また顔を上げる。
篝巳「……わ、吾輩が受けた王命は、君達の足止め。殲滅ではないのである。」
「き、君がここで|退《ひ》いてくれれば、こ、これ以上、__被害、は、出ない…である……__」
少しずつ声に張りがなくなっていく篝巳に、わしは低く問う。
猫葉「つまり、灯和を見捨ててここから去れと言いたいんじゃな?」
篝巳「………その通りである。」
猫葉「……はぁ、わしらもナメられたもんじゃのぉ〜……」
篝巳「?」
意外な反応だったからか、篝巳は戸惑いの色を見せる。
そんな彼に、わしは我ながらに不適な笑みを向ける。
猫葉「…わしらが《《その程度の脅し》》で仲間を見捨てるとでも思っておったのか?」
篝巳「…………『退くつもりはない』、という意図と捉えてもよいであるか?」
猫葉「ああ、構わん。」
篝巳「…………そうであるか……しかし、これを見ても、であるか?」
*「……姿を表すのである、`|八咫《やた》ノ|骸喰《がいじき》`。」*
***ボワッッ!!!***
猫葉「っっ!!?」
突然出現した八咫ノ骸喰と呼ばれた複数の鬼火に、わしは思わず数歩後ろに下がる。
鬼火は生き物を燃やし尽くすかの如くごうごうと音を立てて燃え上がっている。
………それを見た瞬間、《《あの時》》の記憶が一瞬脳を掠めた。
__猫葉「…………火は…火だけは、い、嫌、じゃ……っ!!」__
篝巳「ね、ねね猫葉殿!?すっ、すまないである…!火は苦手であったか…っ!?」
猫葉「………!?」
篝巳の声で、初めて自分の口から声が漏れていたことに気づく。
呼吸は荒れ、身体が震え、額を汗が伝っていた。
わしは慌てて頭を横に振って記憶を振り解き、息を整える。
猫葉「………ふぅー……心配するな。」
篝巳「……猫葉殿、自身の身のためにも、ここから退くのである。」
八咫ノ骸喰は、気付けば青紫の炎を纏った蛇の頭のように姿を変えていた。
その数は8個。八岐大蛇の首の数と同じ。
猫葉「…断れば?」
篝巳「……吾輩が、今ここで《《窮余の策》》をとらなければいけなくなるである。」
猫葉「…つまりは『殺害』じゃな。」
篝巳「……|あの姿《八岐大蛇》は強いが、命を傷付けるため嫌いである。だからこちらで闘う。」
「…………《《あれでも、かなり抑えていた方》》なのであるぞ……?」
猫葉「………っ……」
篝巳「……吾輩は誰も傷付けたくはない。だから自ら王命を受けたのである。」
猫葉「………そうか。」
篝巳「__………仲間を救いたい気持ちは、痛いほどよくわかるである……__ただ、それは吾輩も同じ。」
**「……退け。これは吾輩の願いであり、最後の忠告である。」**
今までとは違う重圧感に、わしは初めて篝巳から確かな殺意を覚えた。
頭が『やめろ』『闘うな』と叫んでいる。
理由は単純。篝巳の先刻の脅しは、恐らく上辺だけではないから。
一人で闘いを挑めば、きっと無事では済まないだろう。
下手をすれば、《《命が危ない》》。
過去の経験がそう語っている。
……………ただ。
**猫葉「………にゃっはははは!!!」**
篝巳「!?…なっ、何がおかしいのである!!」
猫葉「わしは命令は聞かぬ主義でなぁ!従えそうにないにゃ!!!」
「篝巳、おぬしには悪いが、無理矢理にでも先に行かせてもらうぞっ!!!」
篝巳「………そうであるか………とても……残念である…が………」
**「………猫葉殿がその気なら、吾輩も本気でいくのである。」**
***ボワッッッ!!!***
その瞬間、後ろにあった八咫ノ骸喰が激しく燃え上がる。
開けられた顎の中は、深淵のように黒かった。
***篝巳「…八咫ノ骸喰、総てを喰らえ。肉も、魂も、覚悟さえも…」***
確かに、危険ではある。
頭が、身体が、そう叫んでいる。
しかし、危険だと叫んでいるのは、《《過去の経験》》。
《《今》》のわしは、もうあの時とは違う。
……もう、孤独ではない。
猫葉(……わしは、もう何者にも従わない。己の心に従い続けると、決めた。)
**「こい!この最っ強の猫葉様が!!お前の相手じゃっ!!!」**
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第拾壱話 〜完〜
篝巳
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〜補足〜
八咫ノ骸喰は、ガスターブラスターの、青紫の火を纏った蛇バージョンみたいなのを
想像してください。