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第九章 義兄として
「愛を知らな私には」第九章です。
今回は優斗くん視点で書きました。
読んでいただけると嬉しいです
「はあぁ……」
俺、幸川優斗は昼休み生徒会室で一人、ため息をついていた。
手元にはいくつもの資料。
(これ、今日1日で全部読めって鬼じゃんか……)
うちの家は代々小さな会社を運営している。
そして俺は幸川家の長男。当然、跡取りになることが生まれたときから決まっている。
父さんと母さんには完璧な社長になるため小さい頃から勉強はもちろん、礼儀や常識も叩き込まれてきた。
高校に入ってからは色々な資格を取るための勉強が増え、今のように大量の資料を読むように言われたり、小さな事務の仕事などをやるようになりとてもハードな日が続いている。
普段から人当たりのよい優等生になるように教えられ演じ続けていたら案の定やってきた生徒会のスカウト。
このハードな日々のなかで生徒会長なんてやりたくなかったけど、日頃の「優等生」キャラから受かってしまった生徒会選挙。
初めは頑張っていた資格の勉強も、優等生の演技も生徒会の仕事も最近は全部やめたいと思ってしまうことがある。
そんなことしたら今まで頑張ってきた分を水に流す子とになるので絶対にしないけど。
本当の俺は、優等生なんかじゃない。ただの面倒くさがりで人を騙して信用を得ている最低なやつなんだ。
そんなことを思いながら資料に目を通していると生徒会室の扉が開く音がする。
目を向けるとそこには真新しい制服に身を包んだ杏がたっていた。
とたんにいつもの「優等生」のスイッチを入れる。
「優斗さん、こんにちは!入ってもいいですか?」
「どうぞ。杏ちゃん、ここ探すの大変だったんじゃない?朝案内しとけばよかったね。」
きれいな言葉遣いで失礼のないようにそう言う。
一週間前突然できた義妹の杏。聞かされた当時は何も気に止めていなかった。
だが最近、どうも杏に振り回されてしまうことがある。
「それで、その子が友達になってくれて……」
ふわりと笑いながら話す杏。
杏のこの微笑みにどうしても心臓がうるさくなってしまう。
この現象に心当たりがないと言えば嘘になるがそれは「義兄」としてよろしくない。
あくまで杏は義妹。それ以上でもそれ以下でもない。
「それで……やっぱり、優斗さん元気ないですよね?」
話の途中でそう言う杏。
「全然、元気だよ。ちょっと読まなきゃいけない資料が多くて睡眠不足なだけだよ。」
苦笑いでそう返す。本当は結構きついけどそんなこと言ったら完璧じゃなくなってしまう。
いつも深くは干渉してこない杏はそうですかと返してくると思っていたら、
「睡眠不足は大丈夫じゃないですよ……!寝てください、まだ20分ありますから。」
そう言って俺を寝かせようとしてくる杏。
「大丈夫だって、社長になるんだから、このくらいなんてこと……」
「なんてことありますよ!社長になるということの前に優斗さんはまだ17歳の普通の高校生なんです。睡眠はしっかりとってください!」
いつになく強気に言ってくる杏。
「わかった、ちょっと寝るね。心配してくれてありがとう、杏ちゃん。」
「ゆっくり休んでくださいね!私は失礼しますから!」
俺が休むと言ったら嵐のように去っていった杏。
俺は素直に座っていたソファの上で横になる。
(17歳の普通の高校生か……)
普通なんて言われたことなかった。
普通なら、杏に「義兄」以上な感情を抱いてもいいのだろうか。
(というか、俺はもうとっくに……)
今まで認められなかったことなのになぜかすんなり認めることができた。
(俺、杏が好きだ。)
ここまでよんでくださり本当にありがとうございました。
今回は優斗くんにスポットライトを当てた回でした。
実は前から優斗くん視点のお話を書いてとリクエストをいただいていたのですが先に書くわけには行かず……今度書かせていただきます。
次回は定期テスト?!の回です。
次回も読んでいただけると嬉しいです。