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四季折々・推理小説部《第一編》#4
「推理部さん、依頼よ! 受けてちょうだい!」
始まりは、そんな挑戦状みたいな文言での依頼だった。
「はあ……。えーと、|橅木《かぶらぎ》さんよね? 依頼って?」
部室に訪れたのは、複数名の生徒たち。
「……|秋音《あきね》、秋音。誰? 紹介して」
くんっと|夏葉《なつは》に裾を引かれ、囁かれる。
「あぁ、そうよね。こちら__」
「料理部部長の橅木|詩音《しおん》よ。|暁月《あきづき》さんとは同じクラス」
秋音を遮るように、詩音がそう自己紹介をする。
「わたしは|五十瀬《いそせ》|楓《かえで》です。50に瀬で、イソセって読みます。一応、副部長やらせてもらってます」
「あ、|有明《ありあけ》|美風《みふ》と申します。1年で、えっと、|瞬木《またたき》くんとは同じクラスです」
「1年の|熊部《くまべ》|快人《かいと》っす。料理部唯一の男子メンです。ちなみに、こいつ__美風の幼馴染でもあります」
次いで、残りの3名も自己紹介を終える。
「あ、五十瀬さんだ! やっほ〜」
冬希が気安く手を振る。
楓も手を振り返した。緊張しているのか、若干カクカクしている。
違うクラスの、しかも異性であっても、分け隔てなく接せるのは冬希のいいところだ。
誰も口にはしないが。
一方、美風に名前を出された|春汰《しゅんた》は、ぎこちない会釈をした。
「五十瀬さんに有明さん、熊部くんね。依頼内容は何?」
秋音が笑いかけ、本題に切り込んだ。
代表して、詩音が語り出した__。
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数日前、いつものように部室に集まって、お菓子を作っていたわ。
琥珀糖って知っている? 宝石みたいな和菓子なんだけれど。
ふうん、知っているの……博識なのね、相変わらず。
いえ、嫉妬とかじゃないわ、ごめんなさいね、素でこういう口調なの。
それよりも、その琥珀糖を作ったのよ。
作ってから乾燥させる必要があるから、しばらく放置しておいたんだけれど。
今日、完成したの。
私と楓で、顧問の先生を呼びに行ったのよ。
先生、部活にはあんまり顔を出さないんだけれど、甘いものが好きだから、完成したらいつも声をかけに行くの。
それで、呼んで、戻ってきたら……。
確かにそこにあった琥珀糖が、なくなっていたのよ!
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「ええと、一応補足しておきますと、琥珀糖は全部なくなったってわけじゃなくて、なくなっていたのは3つです」
楓が控えめにそう言った。
「ふむ。なるほど、なるほど……」
芝居がかった仕草をした後に、秋音はキメ顔を作った。
「その依頼、受けるわ! この推理部、もとい推理小説部が解決して見せます!」
楽しげな部長に、春汰は揶揄うように粗い拍手を飛ばした。