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天ノ子 壱
「圭、今夜は星が良く見えるから外に出てみたら?」
「うん。そうだね。」
条おじさんに言われ、こんなに大きくなくていいんじゃないかといつも思う扉を開け、庭に出た。庭は家と同じぐらい広く、庭もこんなに広くなくていいと思う。花壇に挟まれる幅の広い道には雑草が綺麗に抜かれていて全く見れない。昼と違って道も、家も暗い。そんな世界を照らす、何億ものの星が、俺は好きだった。上を見ると、いつもの何倍もの星が見え、満月が美しく、地球を眺めている。数々の星は全て、違う色、違う大きさ、違う場所に、未知の世界にある。天の川のような部分だけ、星は充満して夜空が輝いている。ポケットに入れていたスマホを取り出し、星にめがけてカシャっと音を鳴らした。
(やっぱり上手く映らないな。)
それほど肉眼でしか見られないほどの美しさなのだろう。スマホをさっきの場所に戻し、キョロキョロと辺りを見回し、座れるところを探しているとふと屋根に誰かが居るのに気が付いた。この屋敷は高いフェンスで囲まれているし、門もあるから入ることはできない。しかも屋根にいるなんてどうやって上ったのか。
(まさか、侵入者だったり?)
そう思ったが、そんな雰囲気ではなかった。風でさらりと流れるようにスカートのようなものが見える。暗くてあまり見えないため、屋敷の階段を使って最上階に来た。最上階の窓から、恐る恐る屋根に登る。やっと登ったと思い深呼吸すると、さっきの人がまだ屋根に座って、空を眺めていた。後ろ姿だが、何か神秘的なものを感じ、近づいてみることにした。あと1メートルの所で、長いマントを着た人は俺の方に振り返った。
「君は…この家の人?」
透き通るような、フルートのような綺麗な澄んだ声の《《女性》》は左手に大鎌を持っていた。白く深いフードで顔は見えない。やはり侵入者、いや暗殺者なのだろうか。そうなれば俺も危うい。早く逃げなければと戻ろうと足を動かすと、女性は言った。
「ごめんね。|大鎌《デスサイズ》怖いよね。でも大丈夫。貴方の…いや、人の魂は取らないから。」
そう言うと、大鎌をすっと消した。驚いた。下に落としたのだろうかと思ったけど、落ちた音はしなかった。
「私は、織斗。知っているだろうけど、死神です。」
口角を上げ、口を閉じながら笑みを浮かべた。怖い笑みじゃない、優しい笑みだ。俺は本当に大丈夫なのかと考えたが、何となく、大丈夫な気がした。死神と言っていたけれど、大鎌以外はそういう風に見えない。
「なんで人の魂を取らないんですか?」
「私、あんまり好きじゃないんですよね。魂を取ると、《《あの言葉》》を思い出してしまうから。」
あの言葉について気になったが、切ない感情が込み上げてきたので、何かあるんだろうなとだけ考える。すると、下から、メイドさんの声が聞こえた。
「圭様ー?主人がお呼びですよー。」
俺を探している声が聞こえると死神が一瞬でこっちに寄ってきて言う。
「貴方の家に泊まらせてくれないかしら!」
俺の手を握ってねだる死神はなんか死神らしくない、可愛い感じだ。っていうか…泊ま?泊まらせてって言ったか?死神が?そんなことがあるわけ…
「お願い!今逃げてるの。だから泊まらせてくれるだけでいいから。」
(は…?)
混乱していると、死神は俺を軽々と抱えて玄関の方へ向かった。
ウルウルアピールをしてくる死神に呆れて、結局泊まらせてやる事にした。冷たい視線で許可しても、死神は何も言わなかった。死神は、刺々しい目に慣れているようで。
これを描いているときに気づきました。なんか僕の作る作品のキャラクターは2文字の名前が多いな!