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聖域侵犯・脱獄王の逆襲(続き)
嬢/姫宮
「……楓、さっきの続き。……いいか?」
杉元の掠れた声が耳元を掠める。
彼の大きな手が楓の腰を引き寄せ、指先が熱を帯びて肌をなぞり始めた、その時。
「あ――っ! 見ーつけたぞ杉元ォォ!!」
バッシャアアン!と、チセの入り口から雪の塊が飛び込んできた。
そこには、全身カチコチに凍りつき、眉毛まで真っ白になった白石が、執念の形相で立っていた。
「てめぇ……! 俺を雪だるまにして放置しやがって! おかげでエライ目にあったじゃねぇか! ……って、またやってんのかお前らッ!!」
杉元の動きがピタリと止まる。
楓の肩に顔を埋めたまま、彼は数秒間、沈黙した。……その背中から、昨夜の比ではない、噴火寸前の火山のような殺気が立ち昇る。
「……白石」
「ヒッ、その地獄の底から響くような声やめろよ! 怖ぇんだよ!」
「お前、今……。俺がどんな気持ちで、どれだけ我慢して、ようやくここまで漕ぎ着けたか……分かってんのか?」
ゆっくりと立ち上がった杉元の顔は、半分影に覆われ、瞳だけが爛々と輝いている。
まさに、戦場で鬼神と化した「不死身の杉元」そのもの。
「あ、いや、俺はただ、お前のマキリを借りようと思って……。ほら、服が凍っちゃって……」
「マキリなら今、お前のケツに刺してやるよ。」
「ギャアアア!! 楓ちゃん助けてぇ!! 杉元が本気(ガチ)だ! 殺される、今度こそアイヌの神(カムイ)の元へ送られる!!」
杉元は凄まじい踏み込みで白石の襟首を掴むと、そのままチセの壁を突き破らんばかりの勢いで、彼を外へと引きずり出していった。
「杉元さん、待って! 殺しちゃダメですって!」
楓の制止も虚しく、外からは「待て! タイム! タイムだって杉元ォ!」という白石の悲鳴と、**「うるせぇ、今すぐ網走まで投げてやる!」**という杉元の咆哮が、冬の空に虚しく響き渡るのだった。