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光の果てで君を待つ
目を覚ました瞬間、世界は静寂に包まれていた。
空は白く、風は止まり、時間さえも凍っているようだった。
「ここは…どこだ?」
悠真は、17歳で命を落としたはずだった。
病室の窓から見た最後の夕焼けだけが、記憶に残っていた。
目の前に現れたのは、白い髪の少女。名をルミナという。
彼女はこの世界の“光の守人”。死者の魂を導く存在だった。
「あなたは、願った。“もう一度、誰かを守りたい”と。」
悠真は頷いた。
妹の涙、母の祈り、友の声——すべてを残して逝ったことが、心に刺さっていた。
ルミナは言った。
「この世界では、あなたの心が力になる。
誰かを思うたび、光が生まれる。」
悠真は旅に出た。
闇に沈んだ村、記憶を失った人々、希望を忘れた王国——
彼は、出会う者たちに光を分け与えていった。
そのたびに、彼の命は少しずつ削られていった。
だが、彼は笑っていた。生きていると感じていた。
最後の地で、ルミナが言った。
「あなたの光は、もう尽きようとしている。」
悠真は静かに微笑んだ。
「それでも、誰かの心に残るなら、それでいい。」
その瞬間、世界が輝いた。
空に星が戻り、風が歌い、時が動き出した。
悠真は光となり、空へ昇った。
そして現実の世界——
妹が窓を開けた瞬間、優しい風が頬を撫でた。
「…お兄ちゃん?」
その風には、確かに光が宿っていた。
それは、彼が異世界で灯した、命の証だった。