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episode7
MENSide
二時間目は魔法薬学の時間だった。
ぼんさんとドズさんが変にやる気出して、自前の醸造台出してきて笑った。
自分専用の持ってんのかよ。
材料も燃料も、ドズさんのリュックからポンポン出てきてきりがない。
せんせーが止めてくれなかったら、また面倒なことになってただろう。
「ほんっと、どこまでポーション大好きなんすか?」
「ん?僕はぼんさんの影響に決まってるじゃん。
ちっちゃい頃からずっっとつくってたからね。」
隣の席のドズさんは笑って答える。
せんせーに注意されたけれど、なるほど、と思ってしまった。
なら、ぼんさんは。そう思って奥のぼんさんに目を向けたけど、
瞳が真剣すぎて話しかけるのはやめた。
あんなぼんさん、俺、初めて見た。
「よし、じゃあ自由作成はそこまで!
できたポーションをみんなで見よう!」
せんせーの掛け声と一緒に俺達は立ち上がって周りの席を見た。
ドズさんの材料はきらめくスイカの薄切りにその他諸々。
治癒のポーションだ。
「強めの治癒のポーション。
副作用あるかもしれないけど、どんな怪我も一発だよ。」
「なるほど〜。」
流石はドズさん。
おんりーチャンの材料はマグマクリームとレッドストーンと火薬。
耐火のスプラッシュポーションか。
「あるとありがたい。」
「まぁ確かに?」
気持ちはわかる。
おらふくんの材料は金ニンジンと発酵蜘蛛の目。
透明化のポーションかぁ。
「ドッキリに使うんや〜。」
「あー、いいかも。」
相手心臓止まるだろうな〜とは思う。
「MENは〜?」
「俺は、、、」
俺の材料はブレイズパウダーとグロウストーンダスト。
王道で力のポーション。
「これで斧が一番効くだろ?」
「確かに………。」
納得してもらえてよかった。
そして、一番熱中していたぼんさん。
材料は……なんか色々合成してる。
紫色の煙が立って、ぼんさんの顔を悪役のように染めている。
「これ、なんすか?」
「ん?ドズさんと昨日考えた改良型負傷のポーション。
即効くから相手が自分を追い詰めだしたときにかけるといいよ。」
マジのやつ作ってきた。
ちょっとぼんさんに逆らうのやめようと思った瞬間である。
逆らったらとんでもないのぶっかけられそう………。
「ぼんさん、でもこれだと時間が短すぎませんか?
もう少し長くしたほうが逃げる時間も稼げるし……。」
「これ以上時間長くすると相手の命も危なくなっちゃうのよ。」
専門的な話をし始めた二人に、ドン引きしつつ、俺らはせんせーと一緒に一歩下がる。
ドズさんは一回実験してみます?と恐ろしいことを言い出した上、
ぼんさんもそれに賛成ときたから困ったもんだ。
「殺さずに歩けないくらいのダメージ与えられないもんかな。」
「難しいですよ、それは。
材料を㎎単位で調整していれるか、はたまた治癒と組み合わせてみるか。」
せんせーがそろそろ、と止めに入るも、二人は先生に気づきもしない。
終わった。2人共昔からこんな感じなんだよな〜……。
夢中になると止まらん。
「これ丸ごと一個入れてみて、大人魔獣でちょっと痛がってるかなくらい。」
「魔獣に使うならも増やしてもいいかもしれないです。
人とかに使うなら、あと……やっぱり㎎単位になっちゃうな。」
なるほど〜じゃないねーんだけど。
せんせー慌ててんだけど。おんりーそろそろ殴りかかりそうなんだけど。
「じゃあ後ちょっと増やしてみるわ。
あ、そういやドズさんの治癒ポーション、
副作用強く出ないように改良レシピ作っといたから見といて〜。」
「お。ありがとうございます!助かる〜っ!」
ようやく終わったと思ったら、
次はぼんさんが自分の醸造台でまた新しいポーション作りはじめた。
これじゃ寝不足にもなるはずだ。
ドズさんはこっちに気づいてぼんさんを止めようとしてるけど、ぼんさん、気づいてない。
「君たちは本当にポーションづくりが好きなんだねぇ。」
「あ、先生!ごめんなさい!」
「謝ることじゃないよ。好きっていいじゃん。」
先生の温かい言葉で、おんりーも斧をおろした。
ぼんさんは変わらずポーションづくり。
一生つくってんじゃねぇの、ってくらいつくってる。
「ドズさん、武術も好きでしたよね?」
「うん。今も好きだよ!ポーションづくりは授業の予習と、武術の怪我用。
応用的なのは全部ぼんさんに任せてるんだ。」
へぇ。ぼんさんってそんなにポーションづくり上手いのか。
たしかに俺も、ちっちゃい頃ドラゴン退治で怪我した時は、
ぼんさんが治癒のポーションくれたっけ。めっちゃすぐ治ったやつ。
「仲良しなんだねぇ。」
「はい!ぼんさん、ちっちゃい頃からポーションばっかつくってたから。
僕もちょっとやってみたくなって!」
先生の言葉に笑顔で答えるドズさんは、昔とちっとも変わっちゃいない。
そういうところがみんなに慕われるんだろうけど。
「それで|ポーションづくり大好きペア《今》に至ると。」
「ぼんさんほどじゃないから、僕は!!」
おんりーの言葉でどっと笑いが起きる。
その声で、ぼんさんも気づいてこっちを向いた。
「どずさ〜んっ!!できたよ、改良版。」
「お、後で実験しましょうか!」
「「「実験はいいっっっ!!!」」」