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世界の動揺と新たな秩序
リュカが七属性の魔法を“拒絶”し、融合させたその瞬間——世界は震えた。 セントラルホールの天井に浮かんでいた魔法紋は、灰色の輪へと変化し、空に刻まれた。
その光景は、瞬く間に世界中へと広がった。 魔法国家の民衆は、空に浮かぶ“無属性の輪”を見上げ、言葉を失った。 それは、神話にも記されていない、新たな魔法の象徴だった。
──魔法の秩序が、崩れ始めていた。
炎の国・ヴァルカナでは、軍部が動揺し、魔導師たちが力の不安定化を訴えた。
水の国・リュミエールでは、治癒魔法が一部機能しなくなり、病院が混乱した。
風の国・ゼフィロスでは、転移陣が誤作動を起こし、空間魔法の事故が続発。
土の国・グラナードでは、大地の魔力が沈静化し、鉱山が崩落した。
光の国・セレフィアでは、神官たちの祈りが届かず、結界が弱体化。
闇の国・ノクティスでは、幻影魔法が暴走し、精神障害者が急増した。
各国の魔法体系が、リュカの“無”によって揺らぎ始めていたのだ。
セントラルホールでは、六国の代表たちが再び集まり、緊急会議を開いた。 だが、今回はリュカが“円卓の一席”に座っていた。
「君の力が、世界の魔法を不安定にしている」
バルグレイが言う。
「それは、魔法が“支配”に依存していた証拠だ」
リュカは静かに返す。
「ならば、どうする? 魔法を捨てるか? 技術に頼るか?」
シェイドが問う。
「魔法を“選択”する時代にする。誰もが、自分の意思で魔法を使うか否かを決められる世界へ」
その言葉に、会議は沈黙した。
ミレナが口を開く。
「それには、新たな魔法体系が必要です。無属性を中心とした、共存の魔法」
セラが頷く。
「それを築くには、各国の協力が不可欠。リュカを中心に、魔法再編の枠組みを作るべきです」
ヴァルゼンは、しばらく黙っていた。 そして、言った。
「ならば、我々は“魔法再編評議会”を設立する。リュカを議長とし、七国の代表が参加する」
こうして、世界は新たな秩序へと動き始めた。 魔法は、支配の道具ではなく、選択の力へと変わる。
だが、その動きに反発する者もいた。 各国の旧魔導派、魔法至上主義者たちが、地下で集まり始めていた。
「無属性など、魔法の冒涜だ」
「魔法は神の力。人間が選ぶものではない」
そして、彼らは一つの名を掲げる。
──“純魔連盟”。
魔法再編に抗う者たちの反乱が、静かに始まろうとしていた。 リュカはまだ知らなかった。 自らが築こうとする世界が、再び戦火に包まれる可能性を孕んでいることを。
イェイ