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脱ぼっち
私は小宮 美青(こみや みお)。中学2年生。友達は…一人もいない。
一人ぼっち…私の事だ。
確かに、友達にいつも囲まれてる人には憧れがある。
だけど、私は永遠になれないと思う。
私には、思いやりとか優しさとかがないから。
小学校の成績表にも
【美青さんは真面目ですが、思いやりが足りないようです。これからの学校生活で培っていきましょう。】
…と書いてあった。
それも、一理あるなと思って努力してみたこともあるけど…私には出来なかったんだよね…。
でも、中学では環境が違うんだ。
あと少ししかないけど、やってみるんだ。
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「小宮さん!ドリブルの練習してきたの?上手くなってきてるよ!」
「う…うん!土日に、公園で」
私は女子バスケ部に入っている。
運動は苦手だけど…背を伸ばしたくて。
見学のとき、先輩も優しかったから…。
「小宮ぁー!パス練あたしとやらん?」
飛鳥(あすか)先輩だ。
ハキハキしてて、カッコいいこのチームのキャプテン。
私の憧れ。
「はーい!」
実はもうすぐ私が入ってから初めての大会。
みんなの中に緊張感がある。
すごいなぁ…。
私はこれに人生かけてる訳ではないから夢中にはなれない。
他の部員の子は選手になりたいと思っている子ばかり。
その子たちからしたら、私の入った理由は…きっと嫌なものだろうな。
私は先輩とパス練しながら考える。
「よーし…今日は解散!」
「あー!」「終わったー」「一緒に帰ろ~」「いいよ!」
先輩の鶴の一声にみんなザワつく。
「もうすぐ大会だからなー。生活リズムと食事、気をつけてな!明日、メンバー発表するぞ!」
そっか…そろそろメンバー決めないとね。
メンバーによく選ばれるのは頑張ってる子、夢がプロ選手の子、才能がある子…私は選ばれないんだろうなぁ。
私には一喜一憂する理由はないけど。
「そーだ!小宮一緒に帰らない?ジュース奢るわ、先輩として」
「えっ…は、はい」
先輩に誘われたぁ…。
なんか嬉し。
私は荷物をまとめて小走りで先輩のもとへ走った。
「そーだ!やっぱハンバーガー食べに行かん…ってまぁ、晩飯あるよな。親に怒られる?」
「い、いえ!連絡してもいいですか?」
はわぁあ…先輩と一緒にご飯♪
こんな贅沢ないよっ!
「あ…もしもし?お母さん、今日先輩とご飯食べて帰って良い?」
『あ、そうなの?良かったー。今から作るところだったから…出来るだけ早く帰りなさいよ』
「セーフ!ありがと!」
「許可取りオッケーそ?」
「はい!お願いします!」
「お願いします…って奢るつもりじゃないよ!?…まぁ別に良いけどさ」
「あ、私が払いますよ!」
「後輩にそんなことさせられるかっ!」
飛鳥先輩…やっぱりカッコいい♪
近くで見ても遠くで見ても…。
「あ、そうそう。前から訊きたかったんだけど、小宮はどうしてバスケ部?」
「えっ…。」
ど、どうしよう。
答えられないよ、「背、伸ばしたいだけです」なんて。
「ど、どうして訊くんですか?」
あー…。
なんか嫌な訊き方になっちゃったな。
「まぁ…次の大会のメンバー選びの参考に?相性とか熱意とかあるっしょ」
…熱意。
「えっとー…背、伸ばしたくって」
私は嫌われるの覚悟で言った。
「おっ!同じじゃんあたしと」
嘘!?
私は改めて足から頭まで飛鳥先輩を見た。
手も足もスラっとしてて背も高くて…これがバスケで?
「まぁね!ま、3年続けてみなって」
良かった…。
私だけじゃないんだ。
「話しにくかったよねー。あたしよく怖いって言われるしさぁ…よぉし、今日は奢るからアップルパイでもフライドポテトでもなんでも言いなっ!」
「先輩ありがとうございまーすっ!」
「え、飛鳥いるじゃん。美青ちゃんも」
「え、ハンバーガー食べ行くん?」
「奢ってー」
私たちがゆっくり歩いていると後ろから同じくバスケ部の3年生が…。
「あんた達は奢らないからねー」
「え~」「そこをなんとか!」「お願いします飛鳥さん…いや、飛鳥様!」
「自腹で買いなっ」
「「「はーい」」」
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「小宮はどれにする?何でも言ってよ」
私は画面に映るメニューを一通り見た。
「私は…チーズバーガーとフライドポテトとアップルパイと苺シェイクで!」
「オッケー」
ちょっと…頼みすぎたかな?
私飛鳥先輩は他の先輩たちと別のテーブルで食べることにした。
飛鳥先輩は、チーズバーガー3個とテリヤキバーガー2個とコーラ2本という2日分の食料ぐらい頼んでいた。
「ちゃんと食えよー」
「いただきます」
「あのさ…小宮って同じクラスに友達いんの?」
す、鋭い。
「えっと…バスケ部いなくて、ぼっちで…」
「へぇ、やっぱあたしと一緒だなぁ」
え、また!?
「あたしもさ…さっき言ったみたいに怖い怖いって言われてさ。んで、一匹狼的になっちゃって」
この話をしたとき、珍しく先輩は少し寂しそうな顔をした。
「でもさっ、あたしみたいに変われるよ。小宮はまだ一年あるし、あたしくらい意地っ張りでもないしさ」
「……」
私は先輩の言葉にじーんと来てしまった。
「お?私、良いこと言ったね。涙目になってるー」
「…ありがとうございます。なんかほっとしました」
私は涙が一粒落ちたハンバーガーを頬張った。
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最近休み時間に、私の周りには2人から3人のクラスメイトが来るようになった。
挨拶をして、大変そうだったら話を聞いてあげて、一緒にお買い物に行っただけなのに。
これを、友達って言うのかな。
私、もう一人ぼっちじゃないんだ。
3日くらいかけて書きました。消えるの覚悟でPCの電源切ったら…復元できると知って感動!ファンレター待ってます😢