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天才ちゃん!6
放課後に、呼び出され、屋上に行った。
クラスメイトの陸快斗くんだ。
「あのー。」
「何?」
「金糸雀さん!好きです!付き合ってください。」
またこれか。高校入って、いや今年度になって何度目だろう。クラスメイトからというのは今年度初めてだけれど。
「ごめんね。無理かな。」
「どうして?」
「私は今のままが気に入っているの。最近ちょっとビミョーだけど。じゃあね。あと、私は今まで通り接するから。そこよろしく。」
なぜ付き合わないかって毎回聞かれる。
いつもこういうことにしているけど、これは本当だ。
私と付き合っているなんて、申し訳ない。けど、好意を捨てるっていうのもまた申し訳なくなる。
だったら、みんなに嫌われていようが、何の波風も立てないほうがいい。
それが私の出した結論だ。
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「…かっけぇ。」
扉に戻る金糸雀さんを見て、そう思った。
「あははっ振られちゃったかあ。まぁ、しょうがないよな。」
ここまできれいに振られれば、諦めはついた。
けど、より好きになってしまったかもしれない。
「あーあ。」
そう言って、また笑うのだった。
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最近、去年までに戻った気がする。
悠ちゃん、いろはちゃん、乃蒼ちゃん以外とあんまり喋れていない。
去年まではこれが普通だったけれど。
あとは、時々男子が話しかけてくるくらい。
私は正直どうでもいい。これが日常だったし。けど、3人とも気にしてくれる。
だから、それに応えたくなってしまう。
「これ、絶対嫉妬だよね?」
「うちもそうだと思うなぁ」
「私も!最近悠ちゃん告白増えてるもん!絶対そうだよ!」
「というか、女子でこんなのになるって、恋愛絡み以外にないよね。」
「そうやなぁ。」
「悠ちゃんはどうでもいいって態度だし、うちらが何とかしないと!」
「あのさ…聞こえてるよ?」
「あ、悠ちゃんごめん」
「いや、しずちゃん気にしなくていいよ。別に悪くはないんだし…。けど、これ、そんなに気にする必要ある?」
「「「ある!」」」
「あぁそう…けど本当に気にしないでいいよ?しずちゃんも知っているでしょ?去年までと一緒じゃん。」
「__いや…今回のは明らかな悪意で、今までと違うんだけど…__」
「なにか言った?」
「言ったけどなんでもない。」
「えぇー。何なのー?」
「なんでもない。」
もう。結局わからずじまいに終わった。
「金糸雀さん…相談があるんだけど、」
「何?あ、この内容なら|古宇利《こうり》ちゃんが詳しいよ。」
「でも、金糸雀さんがいいんだけど…」
「こら、金糸雀さんが困ってるだろ。やめてやれよ。」
「譲…?まあしょうがないか。」
嫌われている今となっては余計男子からの相談は受けないほうがいい。
私は、今まで以上にかかわらないようにしていた。
「あのさ、金糸雀ちゃん。」
見ると、古宇利ちゃんと、江東さんがいた。
久しぶりだ。
「どうした?」
「なんで私達に相談回してくるの?」
「なんで…って…だって相談するなら素人よりも詳しい人のほうが適切じゃん。」
「それはそうだけど、金糸雀ちゃんに相談したいと思ってみんな相談してくるものじゃないの?」
「私に相談?ないない。私、去年まで、普通に嫌われていたんだよ?そんな人に相談なんて本気でするわけがないよ。」
「__は?本気で言ってる__」
「__多分本気で言っている。今までのも意識せずにやっていたかもしれない。__」
「__そうかも知れないね。じゃあこっちの方で恩恵を預かるほうがいいかもしれないね。__」
「__だね。一旦、中立に行こうか。__」
「__そうだね。__」
「?」
「なんでもないよ。答えてくれてありがとう。」
「どういたしまして。えっと…これからも相談事回してもいいの?」
「いいよ。」
「よかったー。ありがとう。」
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「生意気だね。」
「ね。2人があっち側に行きそう。」
「人数的にはちょうどいいんだけどね。」
「金糸雀さんだから、こっちのほうが不利よ。」
「けど、ムカつくんだよなぁ。彼氏欲しいのにー。」
「みんな金糸雀さんに行くよね。私もこのままじゃ作れない。」
「私もムカつくけどさ。今受験期だよ?恋愛する余裕あるの?」
「「その時に作る!」」
「あ、そう。」
「まあ取り合えず、あんまりかかわらないようにしようね。」
「「うん」」
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「悠ちゃん!いい加減気にして!」
そう言うのはしずちゃん。
「なんで?今までと一緒だって。」
「違うし、それでも気にしないとだめ!」
うぅ…しずちゃんがこんなに言うなんて…心が痛む。
「じゃあどうしろと?」
「えぇ…んー。…悠ちゃんが…彼氏を作る…とか?」
「無理。」
「だよね…」