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風の刃と世界の行方 第3話
自分の部屋に案内されてから数十分後、椿さんに呼ばれ着いていくと私の部屋より少し広く座卓と座椅子が置かれた部屋に案内された。座椅子にはもう既に千景が座っていて、向かい合って食べるような感じになっている。私が席に着くと、沢山の見たことないような料理が並べられていく。
「人間界ではあまり馴染みがないでしょうが、こちらの世界の郷土料理をメインにしました。お飲み物は麦茶でよろしかったですか?」
「はい」
「では、ごゆっくりどうぞ。食べ終わったらまたお呼びください」
椿さんは説明を終えると、司さんと一緒に出て行った。私は姿勢を直し、千景と向かい合う。
「そんなにかしこまらなくていいのに。じゃ、手を合わせて」
『いただきます』
私は箸を持ち、まずサラダを食べてみた。これは人間界のと使われている食材は同じっぽいけど、かかっているドレッシングが感じたことない風味だった。春巻きみたいなものをかじってみると、香ばしさと旨みが同時に来てこれも美味しかった。お米は普通のお米。スープも具沢山で野菜の旨みが溶けだしてて慣れないところに来て疲れた体に沁みた。
「あ、父さんと母さんへの挨拶のことなんだけどさ」
向かい合って黙々と食べていると、千景が口を開いた。
「明日の朝にご飯食べたらまず父さんのとこ行って、その後母さんのとこ行くって感じで。自己紹介とか軽くしてくれればいいから」
「おけ」
「………1人だと心配だから着いて行ってもいい?」
おお、急に可愛い顔するんだなコイツ。上目遣いは反則じゃないか?
「うーん、挨拶の時は私ひとりで行くけど、途中までは着いてきていいよ」
「ありがと」
そう言って千景は安心したように笑った。うん。可愛い。
『ご馳走様でした』
「片付けは使用人がまとめてやってくれるから置いといていいよ。疲れてるだろうし、風呂入って早く寝な?」
「うん、ありがと。あっ」
「ん?」
私はとあることを思い出し、千景の手を握った。
「これからよろしく!」
千景の顔が真っ赤になったの見て見ぬふりをして、お風呂を案内してくれるという椿さんに着いて行った。
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「おはようございます。響様。よく眠れましたか?」
「おはようございます。はい。めっちゃ寝れました」
お風呂は来客用みたいな感じのところがあって、1人用にしては広かった。もしかしたら1人用じゃ無いのかもしれないけど。シャンプーもコンディショナーもいい香りで、プリンセス気分だった。もちろんベッドもふかふかだし。
「朝ごはんの用意を昨日と同じお部屋で用意させていただきました。本日は主食を米にしていますが、パンが宜しければお申し付けください。ゆっくりでも大丈夫、と千景様からの伝言です」
「了解です」
「では失礼します。着替えはそちらに置いておきました。脱いだ服はこちらのカゴに入れて置いてくださいね」
そう言うと、椿さんは一礼して部屋を出ていった。
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『ごちそうさまでした』
今日の朝ごはんは、美味しい味噌汁とだし巻き玉子と焼き鮭だった。私が苦手な骨も全部取ってくれていて助かった。
「じゃあ、行こっか」
「うん」
千景のお父さん、国王は普通に仕事があるので挨拶に来るなら早めにしてくれとのことだった。なのでまず国王の元へ向かう。千景に着いて行き、階段を登ったり沢山の部屋の前を通り過ぎ特別豪華な部屋の前に着いた。
「こういう時は3回ノックして、向こうが入ってもいいとか言ったら一礼して入ってね」
「うん」
「とりあえず敬語忘れなければ大丈夫だと思う。俺はここで待ってるから、頑張って」
「ありがと。頑張る」
私は深呼吸して、扉を3回ノックした。