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小説「聖夜の奇跡」 No.6
登場人物
・カイ
・アヤ
・???(男子高校生)
アヤは人として強かった。
だから最後まで泣くつもりはないのを、カイは知っている。
それについて何かを言おうとは思わなかった。
でもアレは、あの言葉だけは許せない。
「バカ!」
カイは声をあげる。
「《《さよなら》》じゃないだろ。《《また会おう》》な、アヤ」
驚いたアヤは、少しの間顔を伏せた。
そして地面にポタポタと《《それ》》が落ちる。
「……うん!」
--- またね ---
---
会場に響き渡る、ドラムロールの音。
あと数秒もすれば新人小説家発掘コンテストで大賞を受賞した作品が発表される。
見事入賞した数人の若き小説家たちが、その時を待っていた。
ある者は息を呑み、ある者は神に願う。
そして、ある男子高校生は幼馴染と経験した奇跡を思い出している。
(きっと大丈夫。天国から応援してくれよ、|彩《アヤ》)
ドラムロールの音が、シンバルと共に止まる。
発表者の息を吸う音をマイクが拾った。
「聖夜の奇跡」
声と共にスクリーンに映し出された綺麗な表紙。
著者の氏名などが続いたが、男子高校生の耳には入ってこなかった。
何度か壇上に来るように言われ、周りに引きずられる。
会場中の視線が集まり、スポットライトが嫌というほど熱い。
No.7の2022/09/19/12:00に投稿予定です