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_世紀末_ 怒羅ヱ悶、廼毘太と荒れ果てる大地の星
20XX年…かつて青く、人類が栄えていた地球は核戦争によって荒れ果てた。
第5次世界大戦中にアメリカが放った大型核ミサイルによって人類の半数が土に還る。
生き延びた数少ない人々は文明が滅んだ、希望も未来も無い世界で何を思うか…。
「貴様! この俺様を愚弄すると言うのか!!」
今日、一人の男がまた処刑される。
「ひぃっ、ち…違うんです! 決して、そんなつもりじゃあ…!」
玉座に鎮座する大男…いや、この地を支配する帝王は怒り狂う。
「だったらどう言い訳するのだ! 言ってみるが良い!」
男は焦りながら、言いづらそうに口を開いた。
「先日の"帝王誕生ライブ"で、こ…国民の鼓膜が酷く損傷してしまいまして…。
なので、来週の"帝王誕生ライブ〜リターンズ〜"は延期にしてみてはいかがかと…。」
鼻息荒く帝王は男に怒鳴りつけた。
「延期だと!? ふざけたことを抜かすな!
そんなことをしたら、"帝王誕生ライブ〜ファイナル〜"が開催出来ないだろうが!!」
帝王は怒りのあまり、男にワイングラスを投げつける。
「も…申し訳ございません! ですが、このまま開催してしまいますと…
チケットが売れず、"帝王誕生ライブ〜ファイナル〜"のライブ開設費用が足りなくなってしま…。」
男が言い終わる前に、帝王は男の胸ぐらを掴んだ。
「グッ…帝王、様ぁ…。」
体は宙に浮き、男は呼吸が出来なくて悶え苦しむ。
「費用だと? そんなもの、国民から巻き上げれば良い。
それに帝王主催のライブに参加するのは国民の義務のはずだ。」
ギリギリと男の服を締め上げる。
「巻き…上げる、金は。もう、既に。ありません…。」
苦しそうに返事を返す男を地面へ叩きつける。
「ガァッ…。」
咳き込み、どうにかして酸素を体に取り込もうとする男。
そんな無様な姿を見下ろし、見下しながら帝王は告げた。
「お前の物は、俺の物。俺の物も、俺の物だ。」
吐き捨てるかの様に、さもそれが当たり前かの様に…。
帝王が言うことは、この世の理…。逆らえば、"死"が待っているのだ。
「|蛇威庵《ジャイアン》…様ぁ。」
男は最期の言葉を振り絞り…息絶えた。
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この緑が死滅した世界に一つ、平和的且つ近未来的な国家がある。
その名を、国民国家「|廼毘《のび》」
「廼毘」は、かつて日本があった土地から始まったとされる。
この国に生まれれば、その家族の末裔まで平和に暮らせると言われている。
僅か16歳にして国王の地位に君臨した、若き希望の星…「|燹廼毘太《のびのびた》」
荒れ果てた大地に生きる唯一の平和主義者とも言われるほどに慈悲深く、謙虚だ。
その国王の側近、特定意志薄弱児童監視指導員「ドラえもん」は摩訶不思議な道具で
国を豊かにした。彼が何処からやってきたのか、または国王が発明したのか…。
それは誰にも分からない。
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「この世界では、"穏便"という言葉は無いに等しい。それは世界が変わったから。
人々は未来を掴むために互いを蹴落とし合う…か。
ねえ、ドラえもん。それは本当に世界が変わったから起きたことなのかな。」
一国の王は、機械仕掛けの青い猫に問う。
「…廼毘太くんは、どう思う?」
その問いに対して、廼毘太は少し考えながら答えた。
「元々、そういう世界だったんじゃないかな。
未来を掴むための蹴落とし合いは、こんな世界じゃなくてもあったよ。」
青い猫は机の上に置いてあったどら焼きを頬張りながら話す。
「そうだね。廼毘太くんの言う通り、どんな環境であろうとも争いは起こり得る。
人間の争いを決して、世界や環境のせいにしてはいけない。」
「…だよね。」
王はお茶を啜り、ため息をついた。
「ところで、"タイムパラドックス"について何か分かったこととか…ある?」
青い猫は渋い顔をして答えた。
「それがね…さっぱりなんだよ。今、研究チームが頑張ってるんだけど…。
消えた未来の原因を探すのには莫大な時間がかかる上、理由も分からないってなると
手の施しようが無いというか…。ボクも本来の未来の歴史書で探ってはいるよ。」
王は少し残念そうな顔をしながら空っぽの湯呑みを置いた。
「そっか…。まあ、ドラえもんの歴史書があるだけ十分って考えた方が良いかな…。
大きな歴史改変が見つからないとすると、なんだろう…。」
うーん、と唸りながら考える二人。
「ボクの未来では第5次世界対戦なんてものは起きていないし、そもそもアメリカが
大型核ミサイルを所有していたなんてことも…。開発の記録だって無いし…。」
歴史書をペラペラとめくりながら再度、確認する。
「"何か"がきっかけで、こんなことに…。でもその"何か"がどこで起こったのか…。
タイムパトロールでも止められなかった、いや。気付かれなかった…。」
王は青い猫に問うた。
「ってことは、本当に些細なことだったのかな。」
その問いに青い猫は半分疑問形になりながら答える。
「それもあり得るんだけど…こんな世界大戦を引き起こす歴史改変が些細なことで
収まるのかも怪しいし…。些細なことってなったらその瞬間を探すのも難しい…。」
突然、部屋にあった古ぼけた小さな目覚まし時計がピピピと鳴る。
時計は深夜の2時を知らせている。
「廼毘太くん、もう寝たほうがいいよ。明日も会議があるんだろう?」
青い猫は床に就く様に言った。
「でも…。」
「大丈夫、こっちの件はボクが進めておくから。今日はもう休んだほうがいいよ。」
王は何か言いたげにしながらも、青い猫の言う通り寝室へ足を運んだ。
「…おやすみ、ドラえもん。」
「おやすみ、廼毘太くん。」
こうしてまた、何かが変わってしまった世界の一日が終わった。
多分続かないです。
途中、書いていてだりぃと思ってしまったので…。
後は想像にお任せします。気が向いたらまた書くかもですが…。