公開中
第3章:共に歩む者 第4章:希望の灯火
第3章が短いから第4章とセット
第3章:共に歩む者
カナは、ユウと同じように生き延びていた。彼女は父親と一緒に旅をしていたが、今日、目の前でその父を失った。倒れていた男は彼女の父だった。
「……あの人が撃ってきたの。父を……助けようとして、でも、私……」
言葉を詰まらせるカナの手から、銃が滑り落ちた。ユウはそれをそっと拾い、弾倉を確認しながら言った。
「もう大丈夫。……ここから離れよう。死体を漁るやつらが来るかもしれない」
カナはこくりと頷いた。その目に残る涙は、乾いた世界の中で唯一の水滴のように思えた。
第4章:希望の灯
数日後。
ユウとカナは、郊外の集落跡にたどり着いた。そこはかつてコミュニティがあった痕跡が残っていたが、今は誰もいない。木の柵は破れ、家々は風に吹かれて軋んでいる。
「ここ、前に見たことあるかも」
カナがぽつりと言った。
「地図があれば、場所がわかるかもしれない。父がよく地図を見てたから……」
ユウは廃屋の中を探し、埃まみれの書斎で奇跡的に残っていた紙の地図を見つけた。カナはそれを見て、小さくつぶやいた。
「この“北の谷”って場所……確か、物資の備蓄があるって話を父がしてた」
「北の谷……」
ユウの脳裏に、一枚の紙切れがよぎる。かつて妹ミナが書いた落書き。そこにも同じ名前があった。
“お兄ちゃんへ。北の谷ってとこに行くね。もしも会えなかったら、ごめん”
あれは、ミナがさらわれたと思っていた直後、隠された場所で見つけたメモだった。
ユウは立ち上がった。
「行こう、カナ。そこに……俺の妹がいるかもしれない」