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2.週末1
朝になった。
気分が良かったからか、ぐっすり眠れた。
あぁ〜気分がいいわ!今日の狩りは楽しくなりそう!
「お嬢様、今日は何をされるので?」
メイドが聞いてきた。
「久しぶりに狩りにいこうと考えているわ。護衛は…ケルートだけでいいわ。準備を伝えといてくださる?」
「かしこまりました。」
さあ、今のうちに着替えとくとしましょうか。
メイドの子ってわたくしが少人数で狩りに行くときに着る、平民に溶け込むためのちょっとみすぼらしめの服を嫌っているのよね。
安いし便利だと思うのだけれど。
公爵令嬢がこんなものを着てはいけないと思うにしろ、これは公爵令嬢であることを隠すために来ているわけで、至って問題は無いはずよ。
というか、これを着ないで少人数で狩りに行くほうが危険なのだけれど…
ふむ、どうやら見解に齟齬がありそうだわ。今度、じっくり話し合ってきてもいいかもしれないわね。
…あら?これって前にも考えたことがあるような…気の所為よね。わたくしが同じことを二度も考えることなど、そして一度思ったことを実行しないなどある訳がないわ。
深く考えるのはやめましょう。
朝食を食べに行くと、ユーリお兄様がいた。
「お兄様、昨日お父様がわたくしをパーティーに誘ってきたのですが、その理由がどちらのお兄様も予定が入っているということでしたの。ユーリお兄様は何の予定があるのですか?」
「クラン!?えーっと…何だったかな?何か重要なものが入っていたような気がするんだけど…」
怪しい…
思わずじとーっと見てしまった。
貴族にあるまじき行為なのは理解しているけど許してもらおう。これはあちらが悪いもの。不可抗力だわ。
「そうなんですねー」
棒読みで言ってみた。すると、
「え?__棒読みで今喋ったよね?怖い怖い。まさかバレて…いやさっきジト目で見られたぞ。うわぁぁぁぁ……………__」
どうしたのかしら?早口で何かをまくし立てているようだけど。
えっと…これは棒読みに反応したと考えてもいいのかしら?
うーん…分からないわ。
普通嘘を付くときって自然になるようにするわよね?
昨日のわたくしは自然になるように嘘を言って、父もそれを信じたから…うん、あれが本当の嘘のつき方よね。けれど…そうなると嘘かどうかがわからないわ。どうやって嘘と本当のことを見分ければいいのかしら?
あとで経験豊富そうなカナンに聞いてみましょう。
…今からわたくしは狩りに行くのよね。その間にカナンに聞くことを忘れ…ないわよね!さっきのは気の所為にしたんだから!大丈夫に決まっているわ!
つつがなく食事を終え、狩りに行くことにした。
「ケルート、準備は大丈夫?」
「問題ないです。」
「では行きましょう。」
せっかくの少人数なのだからと馬車を使った。もちろん家紋がついていないやつよ。じゃないと平民が着ているような服を着る意味がないもの。
「それにしてもお嬢様、二人で狩りとは大丈夫なのですか?」
「あら?ケルートはまだわたくしの実力を理解していないのかしら?」
言っておくけど、わたくしの魔術は強いのよ。公爵の血筋のお陰でしょうけど。
「そこは理解しています。しかし…__いや…こっちの理由はお嬢様には理解できないだろう__あの森はまあまあ強い魔物が多いのです。」
「知っているわよ?」
「そこに二人で入るとなると、逆に目立つのではないでしょうか?」
なるほど。そういう考え方もあるのね。
「今までは何も言わなかったのはどうして?」
「どうしてって…お嬢様、お嬢様が2人で狩りに行くのは今回が初めてです。」
あらら?そうだったかしら…
記憶を辿ってみる。
「そういえばそうだった気もするわ!そんなことまで覚えているなんてケルートは優秀ね。」
学園では優秀なわたくしより細かく覚えているなんて…平民出身も侮れないわ。さすが公爵家の護衛に選ばれるだけあって、学も武も優秀なのね!
「護衛任務の内容はあとで当主様に報告しなければならないので。」
なるほど。確かに報告する立場ともなれば覚えるわね。
「…。え?報告?いつもしているの??」
「そうですよ。…よく今まで気付かないで生活できましたね。」
うわーん!耳が痛いわ…
そうなのね。みんなきっともっと早く気づいているのでしょうね。
悲しい事実を知ってしまったわ。
しばらく立ち直れないかも…。
ちょうどその時森についた。
「ありがとうございました。」
えっと…帰りは…どうしましょう?
「ケルート、帰りは馬車?徒歩?どちらがいい?」
「…。俺の立場も考えてくださいよ。」
どういうこと?
「わからないんですね。まあ俺はどっちでもいいですよ。」
棘があるように聞こえるのは気のせいかしら?
「そう。じゃあ、夕方の1時間前くらいからここで待っててもらいましょう。」
「かしこまりました。」
御者に人が返事をしてくれた。
あら?直接言ったわけではなかったのに、そういうことにされたわ。
本当に私の周りにいる人々は皆優秀ね!
まさか森につくまでに1話行くとは…今までとは段違いに書きやすいです!
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