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昔のこと
俺
逢瀬羅くんの過去をご紹介‼️
むしあつい夏の頃、俺の親友は死んだ。
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俺とお前は大の問題児だった。非行を繰り返して怒られるが日常で、
クラスの奴らからは嫌われてたなぁ。
でも、そんなこと気にしなかった。だってお前がいるから。
お前となら、何でも出来ると思った。
<「なぁ、家出しない?」
「は?」>
急に、家出しようと言われた。あいつが何を思ったのかは知らない。
でも、俺は迷わず受け入れた。
全く嫌じゃなかった。むしろ、嬉しかった。
逢瀬羅「…いいよ」
▇▇「え、いいの?ラッキー」
正直、もうこんなつまらないとこからはさっさと逃げ出したかった。
俺の親は、毒親…って訳じゃないけど、俺に興味が無かった。
自分らの快楽のためにしたらしく、後からゴムつけてないなって、気づいたらしい。
それで俺が産まれたんだ。
望んでないのに産まれた俺は、少しの愛情も注がれずに育っていった。
勿論名前もつけられなかった。だから、名前は俺がつけた。
「いつか大切だと思える人に出逢って、愛情を注がれずに育った浅い心を、俺と、その誰かがいっぱい満たしてくれますように」って。
俺は父親似で、身長がぐんぐんと伸びていったなぁ。
生活費が俺の分も増えたから、「邪魔だ」って言われちゃって…、
だから、子供の頃はホームレスみたいな生活だったんだよな。
ま、今もそんな感じなんだけど。
こんな生活が永遠に続くくらいなら、死んだ方が早いんじゃないかとも思った。
下手に同情してくる奴らは嫌いだ。俺のこと「可哀想」としか思ってなくて、
実際助けを求めても少しも助けない。偽善者ばっかだ。
俺の気持ちなんか知りもしない癖に同情してくるんじゃねぇよ。
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俺は、家出の準備をして、あいつとよく遊ぶ公園に行った。
あいつはブランコで待っていた。
逢瀬羅「おまたせ」
▇▇「おう」
時刻はすでに22:00。
補導されないか不安だったが、意外と大丈夫だった。
逢瀬羅「なぁ、これからどうすんの?」
▇▇「んー、決めてないや!」
逢瀬羅「は?」
▇▇「まぁ気合いでなんとかなるっしょ」
こいつはいつもこうだな…。
▇▇「あ、いいとこみっけ!逢瀬羅!これよくね?」
逢瀬羅「ん、まぁ」
見つけたのは、秘密基地にピッタリの穴だった。
でも、中は葉っぱやら枝がごちゃごちゃしてて汚かった。
〜20分後〜
逢瀬羅「よし、これでいいかな」
▇▇「おぉ〜!綺麗になったじゃーん!逢瀬羅くん有能〜♡」
逢瀬羅「キモイからやめろ」
▇▇「えぇ〜」
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それから3日程経った。
▇▇「なぁ、今更なんだけどさ、なんで逢瀬羅は俺の誘いOKしてくれたの?」
逢瀬羅「んー、なんか家にいるの飽きちゃって。」
▇▇「へぇー。そういや、俺逢瀬羅の家族のこととか聞いたことないかも。」
逢瀬羅「…聞きたい?」
▇▇「え、うん。」
俺は▇▇に全てを話した。親のことも、名前を自分でつけたことも。
▇▇「へぇ〜…、」
こいつもどうせ同情してくるだけなんだろうな。
▇▇「名前を自分でつけれるとか、すげー!ロマン?ってやつだな!!」
逢瀬羅「…へ?」
▇▇「ん?俺なんか変なこと言っちったか…?」
…こいつは、あいつらとは違うんだな。
この時、俺は初めて恋をしたんだ。
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あれから何日、何ヶ月過ぎたかわからない。
毎日同じような日々を過ごした。でも、俺はそれが楽しくて、幸せで、たまらなかった。
でも、幸せが突然降ってくるのと同じで、絶望も突然降りかかってくるものだ。
俺とお前は、今日も、ただいつも通り喋ってたんだ。
本当に、いつも通りに。
横断歩道を渡る時、俺がはしゃいで周りを見ていなかったせいで、すぐ近くから信号無視したトラックが迫ってきてるなんて気づきもしなかった。
気づいたのは、▇▇が「逢瀬羅!」と、俺の名前を叫んでからだった。
あぁ、俺ここで死ぬんだな。って思った。でも、死ななかった。
死んだのは、▇▇だったから。
▇▇が俺を突き飛ばして、轢かれたんだ。
「▇っ…」
俺がそういった所で、目の前で轢かれていった。
ただ、キキーと鳴り響く音と、 あいつの、何かを悟ったような笑顔だけが、うっすら見えた。
それから5分くらい経ってから、俺は意識が戻った。
トラックはいなかった。…轢き逃げだ。
目の前では、死にかけの▇▇が俺に何かをつぶやいていた。
あぁ、多分悪口だ。当たり前だよな、こんなダメ人間だもん。
逢瀬羅「…」
▇▇「逢……瀬羅…、」
逢瀬羅「な、なに?大丈夫?」
▇▇「ううん…多分もう、死ぬかも…。というか…死ぬ…。」
逢瀬羅「…っ、ごめん、ごめん…俺のせいで……俺が走っていかなければ……、」
▇▇「謝らないで。…俺…お前がいなかったら、人生……楽しくなかったと思う…。」
…ッ…!!
逢瀬羅「お、俺もだよ、俺も、お前がいなかったら人生楽しくなかったし、人生辞めてたと思う…。」
▇▇「…そう、か…。じゃ、俺、ヒーロー…だな…へへ、…」
こんな純粋無垢なやつ、初めてみた。生死の境目にいるというのに、無邪気にニコニコと笑っていて。
…もしかしたら、こいつはずっと無理に笑ってたのかもしれない。…
誰も、傷つけたくないから…。
▇▇「なぁ、逢瀬羅。俺の、……最後の約束…聞いてくれるか…?」
逢瀬羅「っ…え、?」
▇▇「お願いだ。もう……喋る体力も無くなってきた…。」
逢瀬羅「…わかった。」
**▇▇「………逢瀬羅、来世でも、親友でいてな…。」**
**……!!**
それからの記憶はあんま覚えてない。
記憶があるのは、俺が家に戻って、親にひっぱたかれてからだった。
俺の肩を揺さぶりながら、「ずっと何してたの!!」って。
俺にも愛が注がれてたんだ、って、すごく嬉しかった。ぼろぼろ泣いた。
でも、そんな感情は、一瞬にして消え去った。
「お前がいなくなってから、ずっとずっと学校から電話が鳴り止まなくて、
すごくうるさかったんだよ!!!!」 …
この一言で涙が止まった。俺には、やっぱり愛情もなかったんだなって。
たくさん怒られ、叩かれ、蹴られた。
気づいた時には、親を殺していた。
自分で通報したけど、俺は捕まりたくなくて、「帰ってきたら、死んでた。」くらいしか
言えなかった。
そして、俺は少年院に入った。本当にあそこは頭がおかしくなりそうだった。
人の優しさにあまり触れたことがない俺は、変な優しさの裏に罠があるんじゃないかと思って、
ずっと震えていたんだ。
みんながガヤガヤ騒いでいる中、俺は部屋の隅でぽつんと1人。
こんなとこからは早く逃げ出したいと思い、みんなが寝た夜に、逃げ出したんだ。
荷物も持たずに、行き先もないというのに。ただ、あいつのパーカーとネクタイを握って走った。
ただ走って、走って、走り続けた。
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辿り着いたのは、ある墓地だった。
沢山の墓があったが、唯一気になったのは
「▇▇之墓」と書かれた墓があったことだ。
俺は膝から崩れ落ちた。
なんで、なんでなんだ。
なんで神様は幸せな顔をした奴らだけを殺していくんだ。
俺は墓に抱きついた。
「…俺のせいだ、ごめん。こんなダメ人間を叱ってくれ。もう一度、もう一度……。」
あの夜はずーーーっと泣いてた。目がパンパンに腫れるくらいに。
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それから2年くらい経ったのかな。俺は中3になった。
あいつの墓の前で、ずっと喋っていた。
「お前のパーカーとネクタイ俺が着てみたんだけどさ、意外と似合うよな?
へへ…なんか、お前とお揃いみたい。」
そんなくだらない話をしていた。もう喋りはしない、あいつの墓に永遠と。
話してるうちに涙が溢れてきた。泣きながら話した。
なぁ、▇▇。お願いだから、あの日のことは嘘の出来事だと言ってくれよ。
いつも通り過ごせたならさ、また、幸せに2人で過ごせたのに。
俺を1人にしないでよ。
全部全部、嘘だったんだよ。俺が見た夢だよ。
だからさ、もう一度、俺の傍に来てよ。