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第6話 真実
「紫音?」
誰かが、わたしの名を呼ぶ。
わたしが知っている中で、「わーし」のような特徴的な呼び方をする人は、1人しか知らない。
「紫音が1番わかってるはずやで?」
四葉と絶妙に違う、関西弁じゃない訛りの喋り方。間違いなく、《《あいつ》》だ。わたししか知らない。
「…あんた、*****?」
「御名答。やけどその言葉はあかんな。わーしの本名がバレてしまうわ、伏せさせてもらうわ」
*****。
|ここ《短編カフェ》じゃない、あいつの本当の名前だ。
「…そっか、わかった。このゲームは、あんたがやりたいと思っていたこと。だって、あんたはゲーム禁止の家庭に生まれたから。あんたはデスゲームも好きだったね。わたしたちは、あんたの好みに合わせて踊らされていただけだったんだ。すべて|台本《シナリオ》通り、だってこれはあんたが書いた物語でしょ?わたしがこのことを見抜くのも、すべて」
「ふふふ、ご丁寧に説明していただいて、ありがとうね。さ、あんたはどうやって脱出する?わーしを殺すでもしたら、この物語も、いや、あんたたちの人生が終了するよ」
「…どうしたらいい?」
いや、愚問か。どうしたらいい、なんて。
「ここで好きなようにわたしたちの小説を書いて、日記を書いて、読む。それがここでの本望でしょ?」
「さすが、わーしの代理やな」
「こんな綺麗事、あんたが言うとは思わなかったけどね」
そう*****が言うと、いつの間にか消えた。
引き返す。ようやく出られる。いつもの世界に、戻る。
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広がっていたのは、日常だった。薄暗くて、灰色のタイルばりじゃないところだった。
「…やっぱり、ゲームだけに尽きるな」
そう呟く。あいつがいるから、わたしは今、生きている。