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ロボット
「いやぁ、もうホント何年やる必要があるんっすか先輩…」
夕暮れもとうに過ぎ、子供はぐっすり寝ているであろう深夜。
深夜の外で二体のロボットが熱心にゴミ拾いをしていた。
いや、熱心とは違うか。なぜなら、後輩であろう一台のロボットは文句を垂れながらゴミを拾っているのだから。
ウィーン、ガチャン、ウィーン、ガチャン…
機械の足を懸命に前に出し、コ゚ミを見つけると機械特有の不協和音を出しながら屈んでゴミを拾う。
それが二体のゴミ拾いロボットの仕事だ。
「そうだな…」
深さが感じられる言葉で返答しながら、先輩ロボットは少し微笑んだ。
「せめてゴミを拾うだけなら感情性能なんて付けないでほしいっすよ…」
「まあ、こう話せるんだからいいほうじゃないのか?」
「いやぁ、それはそうなんすけど…」
ゴミ拾いロボットたちはゴミを拾いながら道を進んでいった。
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しばらく経ったある日、いつものようにゴミ拾いをしていると、先輩のロボットがゴミを一つ取り落とした。
「先輩、気をつけてくださいよー!不具合っすかー?」
「あ、ああ…」
先輩ロボットは後輩ロボットに返答しながら、何故か機械の顔は微笑んでいた。
そこから先輩ロボットの取り落としは増えていき、後輩ロボットは平気なふりをしながら先輩ロボットのフォローをしていた。
しかし、ある日管理者という名札をつけた人間たちが先輩ロボットを回収しに来た。
「もうこのロボットは寿命だな。新しいのを買わなければ…」
そう言いながら先輩ロボットを一回置いて、人間は一回軽自動車の中へ戻った。
「せ、先輩!大丈夫っすか?」
「俺は…もう、取り替えられる…俺等ゴミ拾いロボットは所詮消耗品なんだ…ただ、これだけはお前に言いたいんだ…幾ら憎くたって、感情を嫌ってはいけない…俺らは感情があるからこの身体に存在しているんだ…それだけは、覚えとけよ…」
そう言うと、先輩ロボットはピクリとも動かなくなった。
「先輩…」
機械の体ではありえないはずの、涙が後輩ロボットに見えた気がした。
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後輩ロボットは先輩になり、新しいゴミ拾いロボットが来た。
「いやぁ、もうホント何年やる必要あるんっすか先輩…」
夕暮れもとうに過ぎ、子供はぐっすり寝ているであろう深夜。
「そうだな…」
深さが感じられる言葉で返答しながら、先輩ロボットは少し微笑んだ。