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2話 思い出というにはオカシイもの
ゆずれもん
「私にとってあの裏路地は思い出のような場所なんです」
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スノーウィーは街外れの小さな家に生まれた、何も与えられなかった。親からの愛情も、兄弟との談笑も。何も。小さな部屋に閉じ込められたまま。外からは楽しそうに笑う声が聞こえる。スノーウィーに名前が無かったのは部屋の中にいたからだった。
彼女にも、たった1つだけ与えられたものがあった、それは『本』だった。
誰かが1ヶ月に一度ほど新たな本を持ってきた。
スノーウィーにとって外の世界を知る唯一のもの。
そこに書いてあることが彼女のすべてだった。
部屋に閉じ込められて、十数年が経った頃。
ふと冷たさを感じた。
今まで心の暖かさが無かったことはわかっていたが、また違う冷たさ
部屋の扉のドアノブに手を伸ばす
これまでなら開かないはずだった
だが違う、鍵がかかっていなかった
そこからスノーウィーは逃げ出した
そしてあの裏路地にたどり着いた
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「ざっとこんな感じです」
カップを置きながらいう
「いやいや、なんでそんなにけろっとしてるの?」
半分泣いているような顔のオペラ
「何か思ったとしても意味なんて無かったからだとおもいます」
「そっか、じゃあこれからどうしたい?」
「どう、したいかってどういうことですか?」
「僕についてくるか、孤児院に行くかの2択かな、それが一番安全だしね」
「ついて行ってもお邪魔にならないならついていきたいです」
「りょーかい、じゃあ一緒に行こうか」
「どこにですか?」
「学校」
にやりとオペラは笑った。
ポカンとしてしまうスノーウィー
「え、オペラさんって先生だったんですか?変な格好してるのに?」
「待って待って、変な格好だと思ってたの笑」
「だってオペラさんの服って道化師と呼ばれるものの服装ですよね」
「よく知ってるね、こんな格好でも一応先生やらしてもらってます」
「意味の分からない学校だったりしません?」
「しないしない、今から行くよ」
「どうやってですか?」
「歩いて!」
驚くスノーウィー、本当に歩きなのだろうか
「ごめん、ずっと面白い反応してくれるからからかっただけだよ、馬車で行こうか」
席を立つ2人、扉から出る直前スノーウィーは名残惜しそうに店内を見渡す。
「このお店気に入った?」
「とっても、また来たいです、学校に行っても来ることができますか?」
「きっとできるよ」
「それじゃあ、外に馬車を呼んであるから行こう!」
「はい!」