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5.クランは実力を計られる
「それで、ここはクランに決めてもらいたいんだけど、今回は公式な勝負をする? それとも私闘にする?」
悩ましく……ないわね。答えは決まっているわ。
「もちろん、公式な勝負に決まっているわ。だけど、本当にいいの? あなたの方にはデメリットしかないと思うのだけれど……」
「なあに、クラン。まさかあなた、Sランクの私に勝てると思っているの?」
「あなたの実力が分からないし、Sランク自体の実力も分からないんだもの。そう考えるのは当たり前じゃないかしら?」
「へえ、ある程度の自信があるようね」
「もちろんよ」
のらりくらり、って難しいのね……
「じゃあ早速申し込みに行きましょう!」
「分かったわ」
よし、今回は流されずにすんだわ。
「あれは6年のネイラじゃねえのか?」
「嘘だろ? あのSランクの?」
「ああ、あの事件のあとから全然戦っていないという話だが……」
「らしいな。……隣にいるのは誰なんだ?」
「誰だろうな? 見たことがねえや」
「ただ、少なくとも戦うことは確実のようだな。これは何が何でも見ねえと! こんどは一体何をやらかすんだろうな!」
「そうだな! 移動しようぜ!」
申し込みに二人で行ったはいいものの、ほとんどをネイラ先輩がやってくれたわ。
それに、ネイラ先輩が噂されているようだわ。そんなに珍しいのかしら? けれど、それにしては不穏な気配も感じるわ。
「これの次の次の試合になりますがよろしいでしょうか?」
「「はい」」
まだ戦いが残っているみたいね。覗いてみましょう。
「今は何ランクと何ランクが戦っているの?」
「今は……BランクとAランクね。勝っている方がAランクよ」
へえ、あれがBランクとAランクなのね。……勝てそうな気がするわ。となると、Sランクとは一体どれくらいなのでしょうね。
試合は、案の定Aランクの方の勝で終わった。
「さて、移動するわよ」
「分かったわ」
話を聞くに、自分たちの試合の一試合前になったら、スムーズに進行させるため、別の部屋に集まってもらうんだそう。
そこで、次の試合が終わるのを、待つ。
「出番です」
とうとうその時が来たみたい。
わたくしは、剣をもって中に入る。
彼女は……盾を持っているっみたいね。魔術がきっと得意なのでしょう。
「ただいまより、Sランク、ネイラ・テルー 対 D ランク、クラン・ヒマリア、の戦いを始めます。……いざ、尋常に用意、始め!!」
ネイラ先輩を見ると様子をうかがっているようだわ。なるほどね。そそれならわたくしから行きましょう。
「水針よ、貫け」
馬車で暇だった時に改良した魔術。水槍より威力が高くなっている。ただし貫ける部分もたいして大きくないから、様子見に適しているのよね。
「火よ、蒸発させよ!」
よし、火力の勝負ね。じゃあわたくしは大量の火をぶつけましょう。
「水よ、消火せよ ……水針よ、貫け」
「火よ、蒸発させよ!」
うーん、これでは進まないわね。
「土弾よ、衝突せよ」
「水と氷よ、盾となれ! ……え?」
驚いてくれたのね、ナイスリアクションよ。この土弾は土を凝縮させているから、簡単には水を含んだりしないし、障壁は簡単に壊せるわ。
ただ、そのあとのネイラ先輩の反応はさすがだわ。冷静に盾で防いでいる。
……その盾を壊すつもりだったのだけれど……勢いが少し衰えてしまったのかしら?
「水よ、飛んで行け 水よ、飛んで行け」
「ん? どういうことかしら、クラン。 ……火よ、蒸発させよ」
「さあ、発動を間違えてしまったんじゃないでしょうか?」
ネイラ先輩の疑問は、わたくしが二回、呪文を唱えたことに対するものね。ふふふ、相手に教えるわけが無いじゃない。
「まあいいか、そろそろ私も行くわね。土よ、飛んで行け!」
「土よ、防げ!」
十本の土の槍が飛んできたわ。だけど、これはなんとか防いだ。……その瞬間、土が壊れたけれど。
「あらあら、大言壮語したわりに弱い防御ね。そのままだと負けるわよ」
挑発してきたわ。あのね……
「それが初心者であるわたくしへの力なのかしら? 力加減も出来ないの?」
そんなことされたらわたくしも挑発を返さずにはいられないじゃない!
そんなことを思って、ネイラ先輩を見たら……いつの間にか、水をかぶっていらしたわ。
「……いえ、ちゃんとあなたの実力にそった力加減をしているわよ?」
「それをあきらかに超えているでしょう」
ネイラ先輩、あなた、わたくしが先ほど放っていた水を受けて、怒っていないかしら?
本当にネイラ先輩に怒られたら、わたくしは魔術では負けるかもしれないわ。だけれどね……
「バレちゃった? けれどそうじゃないと勝てないじゃない。仕方ないのよ。ごめんね、クラン。悪く思わないで頂戴」
やっぱり本気を出してきていたのね。
だったら……
バサッ!
飛んできた土の槍を剣で払う。
「剣を持ってきていたからまさかとは思っていたけれど、あなた、剣も使えるの?」
「そうよ」
さすがに、剣の腕までわたくしに勝てるなんてこと、無いわよね?
わたくしには強みが二つあるんだから、それを活かさなくて一体どうするのよ!
「さて、本戦といきましょうか」
「そうね」
ネイラ先輩も乗っかってきたわね。
それならもう遠慮はいらないわ。
「火よ、焼き尽くせ!」
火が飛んできたわ。
わたくしはそれを剣で払って、ネイラ先輩に近づく。
「水よ、貫け!」
あら、そこは氷で来ないのね。まあ必要な魔力は多いし、大規模なものには向かないものね。
わたくしは、水をよけ、危ないものは剣で切り、ネイラ先輩に近づく。
「土よ、壁へ!」
「土槍よ、壊せ!」
一本、二本、三本、四本、五本、六本、七本、八本、九本、十本、十一本、十二本……
——パリーン!
十二本も使ってしまったわ。もっと鍛錬しようかしら?
そしてわたくしは遠回りをしてネイラ先輩の後ろに近づき、剣の平たい部分でネイラ先輩を昏倒させる。
予想通り、後ろから来られるのはネイラ先輩も想定していなかったようで、勝つことが出来たわ。
「勝者、D ランク、クラン・ヒマリア!」
そういえば、騒がしかった観客席がいつの間にか静かになっているわ。
始めの方は、
「ネイラ様ーー! 頑張ってくださーい!」
「あの噂が嘘だって証明させてみてくださーい!」
「あくどい事すんなよー」
なんて歓声がたくさん聞こえてきていたのにね。