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才能の筆、そして希望の起死回生
シリーズ化するかも!
今のところ1話完結
短編集的な
私、|野崎藍《のざき あおい》は、今は帰路に付いていた。
最近、生きてる心地がしない。
私は絵が好きだった。
コンクールにも出して、賞を取ったりとかもした。
みんなに褒められるたびに、嬉しくなったことは忘れない。
なのに___。
ピロンッ
LINEが来た。
『ねぇ、藍。私、賞取っちゃった!』
美嘉からだ。
|希道美嘉《きみち みか》というのは、周りから、絵が天才レベルと呼ばれてる、いま学校内で1番有名な子の事だ。
何故かというと___。
---
昼休みの事だった。
あまり絵に興味がなかった美嘉に、絵の話を持ち掛けた事が発端だった。
「ね、希道さん。」
「何、何?野崎さん。」
「ちょっと、絵をかいてみてよ。」
「え?」
「他の女子に、図工が得意って聞いてさ、今度開催する文化祭で、うちのクラスがやるお化け屋敷の看板のデザインを考えてほしいんだけど。」
「あ、うん。いいよ。」
彼女は快く引き受けてくれたのだ。だが、それが間違いだった。
次の日、私が学校に行くと、何故かクラスが騒がしかった。
聞き耳を立てると、こんな声が聞こえてきた。
「わっ!希道さん凄いね!」
「うますぎ。天才じゃん。」
気になって、教室に入り、美嘉に訊いた。
「希道さん、どうしたの?」
私がそう訊いたら、
「あっ!あのね、頼んでくれた看板のデザイン、考えて持ってきたよ!つい熱中しちゃって、でも楽しかった!ありがとう!」
なんて、お礼も含めて言ってきた。
「どれどれ…」
と、美嘉のデザインを見た。
美嘉のセンスがよくわかる一枚だった。
私よりもセンスがあるんじゃないかと思ったぐらいだ。
それから、私は絵を通して美嘉と仲良くなった。
色々参考になる!って言ってくれた時はうれしかったけど、日に日に、美嘉の|画力《才能》が上り詰めてくることで、不安と確信が近づいてきた。
なんで。なんで、私よりも努力してないやつが、私よりも上に...
そう思って、私は絵に一層力を入れた。
描いて、描いて、描いて...
もう、壊れてしまうぐらいに描き続けた。
---
そして、夏休み。
「夏休み、自由研究何にしよう。絵のコンクールもあるし。あ、作文でもいいかも!」
美嘉が云った。
私は正直、絵のコンクールには参加してほしくなかった。
最優秀賞を狙っているからだ。
最優秀賞枠は1人だけ。
おそらく自分よりうまくなっているかもしれない美嘉の画力には、勝てないと思ったからだ。
「...作文の方が、、、」
と、言いかけたところで。
私は気づいてしまったのかもしれない。
私…私には……
--- 才能が無かったのかもしれない。 ---
この世は大抵、才能があるものが上に行く世界だ。
アスリートでも、画家でも、作家でも。
才能が無くても上る人はいる。
でも、相当な努力が必要。
嗚呼、私は、努力が足りてなかったの?
この8年間の努力が、たった1年の才能で…
正直、私は、美嘉に出会っても、才能が無くても上る人の中に入っていたと思っていた。
今思えば、最優秀賞なんて、取ったこと、無かったな___。
私が応募して最優秀賞をとれないぐらいなら、いっそ________
「いや、やっぱり美嘉は絶対に絵のコンクールに応募した方がいい!」
|才能《希望》のある人に、任せた方が____。
「そう?じゃあ、そうしよっかな。私、絵が好きだし。」
彼女はまた、快く引き受けてくれた。
嗚呼、何で、こんな世界に…
なぜか、苦しいと思った。
あれ?諦めたはずなのに。なんで、体が拒否してるんだろう。
なら、最後に…
--- もう一度、筆を執ってみようかな。 ---
そう思えた。
---
帰路が、前とは違って、少し明るく見えた。
ドンッ
「わ!ごめんなさい!」
誰かとぶつかってしまった。
「あ、いえ…あの、大丈夫ですか?」
ぶつかったその子は、ベレー帽にキャンパス、
絵の具が付いた大きなショルダーバッグを掛けていた。
如何にも画家みたいな容姿の子だった。
嗚呼、この子には|才能《希望》があるんだなって思った。
そう思う自分には、もう…
「なら、キミに才能をあげるよ。」
不意に、その女の子が云った。
「な、何のこと?」
内心、少し期待してしまった自分が恥ずかしい。
「だから、キミに絵の才能をあげるって言ってんの。」
「え?本当に?」
私は訊き返した。
「本当だよ。努力がキミを見つけたんだ。」
「私を、見つけた…?」
「キミに、これをプレゼントするよ。」
そういうと、彼女は箱をくれた。
「これは、才能の筆。この筆を執るだけで、才能が一気に開花するんだよ!」
「そんなわけ…」
「いいから、これをあげる。」
--- 「キミの、才能が、認められるんだよ¿」 ---
私は、その言葉にハッとした。
やっと、8年間の、努力が、報われるんだ…
「ありがとうっ!」
彼女にお礼をしてから、私は箱に目をやった。
そして、また彼女の方を見ると…
「いない……?」
彼女は消えていた。
「これで、やっと…」
私は呟いた。
「あ、もうすぐ帰らなきゃヤバイ!」
辺りを見回すと、一面の空に、|星《希望》が輝いているように見えた。
---
「よかった…でもこれ、どうやって使えばいいの?」
箱を開けると、真夜中の夜色のような筆軸に、金箔がちりばめられている、おしゃれなデザインの筆だった。
正直、使うのはもったいない気がしたが、これは才能の筆だ。
使ってみようじゃないか。
もし、これでいい絵が描けたら、私は____
「認められるんだ。」
頭の中はそれでいっぱいだった。
ふと、筆の入っていた箱の横から、小さな紙きれが出てきた。
「なにこれ?えーと、
『貴方は、才能の為に、命を使ってきたと思います。それは神が見ており、私も知っています。
でも、誰も認めてはくれない。さぞ辛かったでしょう。でも、これで終わりです。何故なら、才能が、人生を変えるから…』って、何よこれ。」
少し疑問が残りつつも、私は、筆を執った。
---
私には、才能があるのかもしれない。
浮かれているつもりはないけど、本当に、自分でもいい絵が描けている気がする。
最近は絵を通して新しい友達もできたし、最高!
看板のデザインも、みんな褒めてくれた。
嬉しいな、、、
あ、電話がかかってきた。
え…最優秀賞を取った?!
そう。
私は、絵のコンクールで、最優秀賞を取った。
背中を押してくれた藍のおかげだ…
私は、藍にメールした。
『ねぇ、藍。私、賞取っちゃった!』
喜んでくれるといいな。
…きっと、私の中の才能が、《《人生を変えたんだ!》》
そして、綺麗な真夜中色の筆軸に金箔がふりかけられているお気に入りの筆を執り、
私は今日も、キャンパスを色彩で埋める______。
えっと、意味わかるよね?
日記に明日書いておくけどさ