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私のことを救ったあの人を④
星
【1. 逃亡】「……無理です」桜の口からこぼれ落ちたのは、拒絶の言葉だった。その一言が、朝日の胸に深く突き刺さる。フラれたショックと、無理をさせてしまった気まずさで、朝日の頭は真っ白になった。「ご、ごめん……!」朝日はそれ以上病室にいられなくなり、桜の顔を見ることもできずに、弾かれたように部屋を飛び出して逃げ出してしまった。「あ、先輩……! 待って……!」病み上がりの体で、桜は必死にベッドから這い出し、裸足のまま朝日の後ろ姿を追いかけた。【2. 7時の再会】それから、どれだけの時間が経っただろうか。街の時計台が、夜の7時を告げる鐘を鳴らした。冷たい夜風が吹き抜ける街角で、桜はついに、肩を落として歩く朝日の背中を見つけた。「先輩……! はぁ、はぁ……っ」息を切らせながら、桜は朝日の服の裾をぎゅっと掴む。「先輩……。断ったのには、理由があって……っ」そこまで言うのが限界だった。三日間の昏睡から目覚めたばかりの身体は、とっくに限界を超えていた。桜の意識は再び深い闇へと落ち、その場に崩れ落ちた。【3. 朝日の涙】バサッ、という鈍い音に気づき、朝日はハッと後ろを振り返った。そこに倒れていたのは、ボロボロになりながら自分を追いかけてきた桜の姿だった。朝日は震える手で桜を抱き起こし、ボロボロと涙をこぼし始めた。「ごめん……。ごめん、桜! 俺のせいで、また無理させてごめん! 起きてくれよ……、さくら!?」パニックになりながら桜の身体を支えたその時、桜の制服のポケットから、小さな紙切れがハラリと地面に落ちた。朝日は涙を拭い、その紙を拾い上げて目を見開いた。そこには、桜の拙いけれど丁寧な字で、こう書かれていた。『大人になったら、先輩と名探偵になる。そして――』【4. 気づきと、暗い空】その文字を見た瞬間、朝日の脳裏に、ある一つの答えが浮かび上がった。中学生の今のまま付き合ったら、いつか別れが来てしまうかもしれない。でも、大人になってから付き合えば、その先にある未来へ真っ直ぐに進める。「桜が断ったのって……。大人になってから、俺と付き合いたかったから……? そしたら、ずっと一緒に……結婚できるから……っ?」桜の、不器用すぎるほど一途で純粋な決意を知り、朝日の胸に愛おしさと申し訳なさが一気に押し寄せた。「うわぁぁぁん……っ! ごめん、桜、ありがとう……!」静まり返った夜の街で、朝日は桜を強く抱きしめ、声を上げて泣き続けた。そんな二人を、すべてを包み込むような暗い夜空が、静かに、優しく見守っていた――。