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第二話 桜は強いよ
新キャラ
二ノ宮亮(にのみや りょう)
十二歳
桜の幼なじみ。運動神経がいい。頭の回転が鈍い。
母「桜、起きてる?体調大丈夫?」
桜「お母さん。私、風邪引いたかも……。」
母「本当に大丈夫?お母さん仕事休もうか?」
桜「だから、大丈夫だってば。お母さんは仕事行ってきて!」
桜が微笑むと、お母さんは不安げな表情を浮かべながらも家を出て行った。
お母さんが家を出て行くと、桜は二階にある自分の部屋へ戻り、ベッドに横になった。
自分の額に手を乗せる。
少し熱っぽいな……。
体がだるい……。
きっと、久しぶりの学校ではしゃぎすぎたせいだ。
がんが進行しているんじゃないと良いな……。
桜はそう思いながら、ゆっくりと瞼を閉じた。
ピンポーン
桜「ふへっ!?」
インターホンがなり、桜は慌てて飛び起きる。
時刻は四時。
やばっ……六時間も寝ちゃった……。
外に出ると、幼なじみの二ノ宮亮が立っていた。
亮「さ~くら!久しぶり!」
桜「亮だ。どうしたの?」
亮「感動の再会なのに……。まぁいいや。学校から宿題届けに来たぞ!」
桜「げっ……!」
桜は不満げな顔をして、渋々受け取る。
亮「それと……。」
桜「?」
亮は後ろに隠してた物を取り出す。
それは、花束だった。白菊の。
亮「退院おめでとう!桜!」
桜「……嬉しいんだけどね、白菊はちょっと……。」
亮「なんで?」
桜「まぁいいや。」
あながち間違いでもないのだから。
亮は歯を見せて、二カッと笑う。
亮「桜が元気そうで良かった。」
その言葉がちくりと桜の胸に刺さった。
桜「……。」
亮「桜……?」
桜「私ね……。」
亮「……?」
桜「後、一年しか生きられないんだ。」
亮「……。」
二人は沈黙する。
桜「ごめ……。」
亮「桜は!」
桜の謝罪は亮の大きな声にかき消された。
亮「桜は強いよ。」
桜「……。」
亮「がんになって、後、一年しか生きられなくても、諦めず生きようとしてる!俺にそのことを伝えてくれた!だから、桜は強いよ!」
桜「……。」
違うの、亮……。
私、自由に生きたら、死んでもいいって、思ってるの。
もう、諦めちゃってるんだ。
ごめんね。亮みたいに強くなくて……。ごめんね……。
《亮視点》
桜の家の前に来て、亮はドキドキしていた。
震える指先でインターホンを押す。
ピンポーン
亮「さ~くら!久しぶり!」
桜「亮だ。どうしたの?」
亮「感動の再会なのに……。まぁいいや。学校から宿題届けに来たぞ!」
桜「げっ……!」
不満げな顔で宿題を受け取る桜。
いつも通りで、亮は安心していた。
亮「それと……。」
桜「?」
亮は後ろから花束を取り出した。
亮「退院おめでとう!桜!」
桜「……嬉しいんだけどね、白菊はちょっと……。」
亮「なんで?」
桜「まぁいいや。」
桜が受け取ってくれて良かった。でも……。
亮は言葉を飲み込む。
亮「桜が元気そうで良かった。」
桜「……。」
亮「桜……?」
桜「私ね……。」
亮「……?」
桜「後、一年しか生きられないんだ。」
亮「……。」
知っていた。
桜があの花束を受け取った時から。
桜はもう、
死んでもいいって、思ってるんだ。
桜「ごめ……。」
亮「桜は!」
亮はひときわ大きな声を出す。
亮「桜は強いよ。」
桜「……。」
亮「がんになって、後、一年しか生きられなくても、諦めず生きようとしてる!俺にそのことを伝えてくれた!だから、桜は強いよ!」
桜「……。」
桜は沈黙する。
違う。違うんだ。
これはただの俺の願望なんだ。
桜がどう生きたって桜の勝手だ。
だから、これは俺の願望なんだ。
桜には、大好きな人には、もっと、ずっと、生きていて欲しい。死なないで欲しい。
亮「弱いな、俺は……。」
閉められたら扉の前で、亮はぽつりと呟いた。
その頬に、涙が一筋、零れ落ちた。
しばらく、家の前を行ったり来たりしていると、桜が窓から顔を出した。
不安げな表情だ。
亮は飛びっきりの笑顔で大声で叫ぶ。
亮「桜!明日は、学校来いよ!!」
桜「うん!!」
桜が笑顔になり、亮はほっとする。
弱いな。俺は昔から弱い。桜は強い。俺よりもずっと……。それでも。
俺は後一年、精一杯、桜を笑顔にする。桜を悲しませなんかしない。
亮「これも、俺の願望なのかもな……。」
お待たせ……いや、誰も待っていないだろうけど!初ファンレターというものをいただき、作った二話目です。分かりやすいな自分よ……。まぁ、直に三話も書くかもです。