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3.週末2
森についた。
「さあ、楽しみましょう!」
ずんずん歩く。
「そんなにさっさといかないでくださいよ。俺は安全面で気を配らなきゃいけないんですから。」
「わかったわよ。」
少し駆け足になっていたみたい。ケルートの忠告を参考に、少し遅くする。
「このくらい?」
「そのくらいなら問題ないです。」
「あ!」
「どうされました?なにか忘れ物で…」
途中…というか終わりで言葉を止めた。どうやら気づいたみたいだ。
さっきまでは優秀と思っていたけど、まだ鍛え足りないところはあるじゃないの。お父様に報告して、鍛えさせようかしら。
「忘れ物ってひどいわね」
「イメージがそんな感じだったんですよ。」
まあ!わたくしにそんなイメージがついているの!?
それは困ったわね…そんなに忘れ物をした記憶…あったわ。何回かなら…あったかもしれないわね。
「わたくしは狩りに行くときに必要なものを忘れたことはないわ。」
「いや、忘れ物は何回もしていましたよね。」
「ケルート、ちゃんと聞いてた?わたくしは必要なものを忘れたことはないとは言ったけど、忘れ物をしていないとは言っていないわよ。」
ふふん、賢いケルートでも騙されることはあるのね。
「はあ…そうですか…余裕そうですね。」
あら?急に話が変わったわ…って、
ーブルルッ。
「あ、そうだったわ。魔物がいたんだった。」
わたくしは確かそれに気づいて「あ!」と言ったはずよ。
えぇっと…なんて名前でしたっけ?
コンクール…コンクルー…あぁ!コンクルートだわ!
そういえば…ケルートと最後のほうが似ているわね。こんな偶然もあるのね。
コンクルートは…まあまあ強い部類に入る魔物よね? 一般には…冒険者10人くらいで倒すものでしたっけ?まあわたくしにとっては弱い部類よ。
あとは…、たしか火に弱かった気がするわ。
「…忘れてたんですか?」
「まさか。忘れるわけはないわ!ただ…ちょっと頭の隅に置いていただけよ。」
「それを忘れたと言います。」
そうとも言うかもしれないわね。
というか、そもそもはケルートが魔物に気づくのが遅くてわたくしの驚きに変なもので返してきたのが悪いと思うのよね。
よって、わたくしは何も悪くない。証明完了ね。もし報告されてもこれでお父様は説得できるわ。
「ケルート、下がりなさい。」
何も言わずに下がってくれた。あら?気が利くこと。
「火」
せいやぁ!
「よし、倒れたわね。簡単簡単。」
「流石です。お嬢様。」
悪い気はしないわね。最近ではこれが当たり前になっちゃってるもの。褒められるのは久しぶりかもしれないわ。
「雑魚だしもう少し入ってもいいかしら?」
「そうですね…大丈夫でしょう。ただ、ゆっくり歩いてくださいね。」
「了解。」
その後、昼食を食べて、また狩りに戻った。
「水」
やぁ!
「風」
せいやぁ!
あぁつまらない。どの魔物も一発で死んじゃうじゃないの。
「それはお嬢様だけですよ。」
「あら?声に出してたのかしら?」
「はい。けれど、お嬢様なら大抵表情で分かりますね。」
そんなにわかりやすいかしら?
らしくない公爵令嬢とは言え、気をつけるべきね。ポーカーフェイスポーカーフェイス。
「あぁ!」
こんなところに高価な薬草が!しかもたくさん!
なにこれ!夢かしら?
「痛っ」
頬をつねったら痛みを感じたわ。
ふむ、夢ではなさそうだわ。じゃあ持って帰りましょう。
「一人で何をやっているんですか…」
呆れられた気がするわ。けど何故でしょう?わたくしは薬草を摘もうとしているだけなのに。世の中は理不尽ね。
「お嬢様!」
「ん?」
まあ!これまた高級素材の宝庫ね。ドラゴンだわ。
わたくしは何と運がよいのでしょう!
「お嬢様、普通の人は、これを見たら絶望するのですよ。」
「何故?竜の中でも弱いほうじゃない。」
「竜自体を恐れるんですよ。」
「まあ、こんなに高級素材ばかりの生き物を恐れるの?悲しい人生ね。」
「俺にはお嬢様のほうが悲しい人生を送りそうに見えます。」
何故かしら?
今もこんなに満足いく人生を…ってさっき確か「つまらない」と思ったかもしれないわ。
それだったら確かに悲しい人生に入るかもしれないわね。
「これは、風属性よね。」
「ですね」
「ケルート、わたくしが攻撃は止めるのであなたが攻撃しなさい。できるわね?」
「__何故できる前提なんだ。反論の余地が欲しいよ…__出来ます…」
「そう、じゃあ頼んだわ。風!」
ふうむ、これはなかなか魔力と精神力を使うわね。
「早く!」
「分かってますよ!」
あら、分かっているなら結構。さっさとしてちょうだい。
そんなことが通じて…いないようね。仕方がないわ。
「解除。そして風」
ドラゴンの羽を落としちゃった。
「感謝します。」
もっと感謝しなさい。
「解除、そして風。」
もう一度ドラゴンの攻撃の妨害…いや、相殺にかかる。
やっとケルートが1撃を入れた。
「解除。ケルート、遅かったじゃないの。」
「仕方がないじゃないですか。竜ですよ!?」
「あら?わたくしは羽を簡単に落とせたのですが…」
「それはお嬢様がおかしいだけです。」
おかしい?それはまたひどい言い草ね。
「わたくしの何がおかしいのかしら?」
少し詰め寄ってみる。案の定、少し引いた。これは、怖がってくれている…ということよね。やってみたかいあって満足だわ。
「…。__まあいいや。どうせ言っても理解しないだろうし。__」
「何か?」
「なんでもないです。それより素材を取らないんですか?」
あぁ〜!忘れてた!
「教えてくれてありがとう!」
「__忘れてたんだ…__」
またケルートがなにか言っているわ。けれど、これは聞いても教えてくれないやつよね。学習したわ。
いそいそと素材採集に行く。
「大満足よ!」
「それは良かったです。では戻りましょう。ドラゴンのせいで結構長居してしまったので。」
「それはあなたの攻撃のタイミングが遅いからよね。わたくしに責任はないはずだけれど?」
「すみませんでした。遅くて。けど、2人で倒したのなら上出来なんですからね。」
「ふうん。そうなのね。」
帰りは特に問題は起こらなかった。
ドラゴンが弱い…これ以上に強い動物…何か作らなければならない…
お読みいただきありがとうございました!