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「罰を与える人々」
あるところに、とっても無邪気な男の子がいました。
「ママ!みてみてどんぐり!」
『拾ってきたの?とっても綺麗でかわいいわね』
「えへへ」
それはそれは、天使のように純粋でした。
「ママ…何してるの?」
『…ママはね、わるーい人に罰を与えてるの』
「ばつ?」
『そうよ。悪いことしたら、叱らないといけないの』
「そっか…」
「…ねえママ、ぼくもそれやってみたい」
『…わかったわ。でももう少しだけ待ってね』
「もう少しってどのくらい?」
『そうね…あなたはまだ五歳だから、十歳になるまでね』
「全然少しじゃないじゃん!なんでそんなに待たなきゃいけないの?」
『体力がないといけないからね。訓練なら今からでもできるわよ』
「ほんと!?じゃあそれやる!」
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「お母さん、今日もいっぱい『罰』を与えてきたよ」
『おかえり。えらいわねえ』
「もうそろそろクリスマスだし、これができるのもあとちょっとだね」
『そうね。クリスマスは殺しはしちゃいけないから、道具の手入れをしましょう』
「僕、新しい道具が欲しいな。ナイフも錆びてきちゃったし」
『買いに行きましょうか』
「うん!」
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【次のニュースです】
【今日、あの無差別殺人の容疑者が捕まりました】
【容疑者は----容疑者とその母_ _容疑者で、親子で殺人をしていたそうです】
【_ _容疑者は離婚しており、夫は現在消息不明です】
【次のニュースです_】
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彼がこうなってしまったのは、どうしてでしょうか。
母親の教育が悪かったのでしょうか。
…それとも。
誰も、殺人を「悪いこと」だと教えてくれなかったから、でしょうか。
どっちにしても、彼は「純粋」で「無邪気」だったのです。
彼にとって、母親が「世界」を教えてくれるもの。
母親の言うことが、絶対だったのです。
この物語はフィクションです。
実際の人物、団体には関係ありません。
880文字