公開中
あの夜、エレベーターに乗った話。
なんか書きたくなりました。
え、星屑さんの自主企画?いかなきゃ!
僕は今、エレベーターに乗っている。
赤い服のおばさんと、白い服の女の子と一緒に乗っている。
---
学校のいじめっ子たちに命令され、嫌々ながらも「幽霊がいる」と噂のマンションのエレベーターに乗ってみたわけだが…
「…ヤ……コ……イ…」
マジでいた。この赤い服のおばさん、一階まで降りてきたエレベーターに乗っていたのに、降りずに乗り続けている。ぶつぶつと小さな声で囁き続けていてぶっちゃけ気持ち悪い。
そして、白い服の女の子はというと…
「ねぇあんたどこ小?ああ向野小か、この周りそこぐらいしかないもんねぇ。あとさあとさ、ここのエレベーター狭くない?こんなとこに詰められたらやってらんないよねー!」
うるさい。おかっぱの髪を揺らしながらめっちゃ喋りかけてきて正直うざい。あと僕は沖田小学校出身である。
「うるさい…」
「えー?まあまあそんなとこ言わずに、もうちょっとだけ付き合ってよ!」
「…」
なんでこうなったんだろう。自然と僕の目が遠くを見つめる。
「ねぇ、どこ見てるの!」
「どこも見てないよ...」
「........イ......ッ...」
「あ、あのぉ」
「!!??....ボ.....ヒィ....」
だめだ、こりゃ。
話しかけたとたん、おばさんは弾かれたように座り込んでしまった。
「ねぇ、そんなおばさんはいいから私とおしゃべりしよーよー!」
「えー....」
少女はおばさんなんて意に介さぬように喋り続ける。
その時、おばさんが顔をあげた。
血まみれの顔...などではなく、涙に濡れた顔。それは余りにも人間らしいもので...
恐怖に満ちた瞳は、まっすぐこちらを見ていた。
まるで、幽霊を見ているような瞳だった。
僕は幽霊ではないとすると、おばさんが怖がっているのは...
「ねぇ、何を見てるのってば」
この、女の子。
明るい声が逆に僕の体をその場に縫い止めた。
息が、できない。
ポーン...キュウカイデゴザイマス
無機質な声に、金縛りが一瞬で解ける。
よろめいた僕を押し退けるように、おばさんが前に飛び出した。
その横顔は、やはり恐怖で歪んでいる。
その顔に僕の体が自然に動く。開ききったエレベーターの外へ手を伸ばして...
ゴン、と。
壁にぶつかった。
「っ!?...なんで、なんでっ」
足掻くように見えない壁を叩いてもびくともしない。そんな僕を嘲笑うかのように、声が響いた。
「ねぇ、なにしてるの?」
おばさんの目には、《《あり得ないものを見るような》》色が一杯に広がっていた。
僕の後ろにいるのは、いったい《《ナニ》》?
ポーン...シタヘマイリマス
最後とばかりにいっぱいに伸ばした手を、エレベーターの扉が無慈悲に遮る。
.....ああ、いじめっ子たちに怒られちゃうな。
最期に考えたのは、そんなどうでもいいようなことだけだった。
---
男の子は、私の目の前でしゃがみこんでしまった。
こちらを睨み付けているものの、顔には隠しようがない悲壮感がにじみ出ていた。
まるで、すべてが終わったとでも言うような顔。
おかしなことを思ってしまった。そもそも《《私たち》》は始まってなんかいないというのに。
もっと言えば、私たちはすでに《《終わっている》》というのに。
もしかしたら彼は気づいていないのかもしれない。
自分が、もう死んでいることに。
ちょっと前、このマンションの最上階から男の子が落ちて亡くなった。
警察は事故と処理したが、この子がいじめられていたことは結局バレることはなかった。
この子は、自殺したのだ。
日に日に希薄になっていく「自分」を目の当たりにして。
殴られても笑っている自分が怖くて。
肝試しなんかに尻込みしてしまう自分が嫌で。
この子はずっと肝試しを繰り返していた。
エレベーターで最上階までのぼって、飛び降りて、のぼって、落ちて、昇って、堕ちて…
この子は、どれだけの苦しみを抱えて生きてきたんだろう。
「…何、見てるんだよ」
「ん?どうしよっかなーってね」
「どうせ殺すんだろ?せめて一息にやってくれ。」
男の子は投げやりにつぶやくと目をつぶった。どうにも達観しすぎていて可愛げがない。《《四十年》》も生きてたら当然だろうが…
まあ、そんなことは気にしない。私のように《《三百年も》》生きてたらほとんどのことがどうでも良くなるからね。
「だーっ、もう!殺すならはやく殺せって言ってんだろ!なに焦らしてんだよ!」
「…いや、別に殺さないよ?だって…」
死んでるし。
その言葉で男の子の顔がどんなふうになるか考えただけで笑いが込み上げてくる。
愉悦に浸りながら、私はまっすぐにその子を見て告げた。
「だって、あんた死んでるでしょ?ねぇ、太郎くん?」
---
むかぁーしむかし、あるところに、はなこさんというおんなのこがいました。
はなこさんはとってもかわいかったので、おとこのこからこくはくされてばっかでした。
あるひ、それなりにかわいいおんなのこがうらやましがって、そのかおちょうだいといいました。もちろん、はなこさんはあげません。
おんなのこはおこって、はなこさんをといれにとじこめてしまいました。
だれもさがしにこない。だれもたすけてくれない。はなこさんは、ひとりでしにました。
それから、がっこうがすなになるくらいのじかんがながれても、はなこさんはひとりのままでした。
はなこさんは、おともだちをさがしました。
たろうくんというおとこのこをつれてきて、といれにいっしょにすみました。たわいないはなしをして、ときどきけんかもしました。でも、とてもたのしそうでした。
ふたりは、がっこうのみんなから「といれのはなこさん」と「といれのたろうくん」とよばれましたとさ。
めでたし、めでたし。
なっっっっっがかったぁ
ちなみにこれ、一部の人には話しましたけど1000文字ほどが一回消えてます。泣きました。
でも、それでトイレの花子さんと繋げることを思いつけたので、結果的にはよかったんでしょう!
たぶん!
最後の子はこれからもちょくちょくでてきます。フェンリルの短編=謎のナレーション とお考えください。