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ええ?
幽霊なんて信じない。
「ねえねえ|宮堂《みやどう》さん!」
自分が体験したことしか信じない主義ってわけではないけれど。
「みーやどーうさーん!」
でもだって、そんな非現実なもの、あるわけないじゃない。
私は__
「メイクサムノイズ、宮堂〜〜〜!!」
「うるっさいなあ! 黙りぇよ!」
いきなり叫んだから噛んじゃった。
死ぬ……。
そっと彼女__|八代《やしろ》|妙《たえ》の様子を窺う。
聴力が全然ないらしい八代さんは(たぶん、だから声がデカい)気がつかなかったみたいで、きょとんとしていた。
私の羞恥を返せ。
「ごほん……。で、えっと、なんだっけ?」
「一緒に肝試ししようよって話だよ!」
ああ、そうでした。
私は数日前からこの妙な女に、肝試しをしようと迫られているのでした。
「だから、言ってるでしょ。行かないって」
「そこをどうか! 宮堂さんしかいないんだよ!」
「私はテスト勉強で忙しいんだよ。今回の数学の範囲、苦手なところなんだから」
「数学、教えてあげるから!」
「う…………」
八代さんはこう見えて勉強はできる。私なんかよりよっぽど。
「……はあ。しょうがないな」
「やったー! じゃ、じゃあ、明後日の朝二時に、廃ビル集合ね!」
「あ、朝二時? 早くない?」
「いかにも出そうな時間じゃん! はい決定〜」
「えー……」
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そんなこんなで、朝二時。
「キッツ、クソ眠……」
「あ! おはよー宮堂さん! 目ぇ死んでんじゃん、おもろ!」
「誰のせいだと……?」
眠いせいかな、心なしか八代さんがいつもよりうるさいな。
「ちょっと黙って……頭キーンってなる」
「あはは、そっか、ごめんね。やっとこの時間に宮堂さんと会えたから、ちょっとテンション上がっちゃった」
「何の話……?」
「ん? あぁ、まだ知らないんだったね。あのね、実はあたし__」
目を擦って、彼女の方を見ると。
「お化け、なんだよね」
知らない生き物がいた。
歪んだ目、ひん曲がった口、重力を無視した髪に、大きな羽根。
非現実的で、でも、夢で片付けるにはやけにリアルで。
「……え?」
ええ?